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家主様へお手紙を出した その2

あまり使われていなさそうな住宅はなぜ生まれるのか

 あまり使われていなさそうな住宅の所有者あてのお手紙を7月に作成して投函して以来、全くリアクションがありませんでした。そもそもお手紙が郵便ポストにそのまま残っているというのもあります。限りなく使われていなさそうな住宅をそのまま放置していれば当然、劣化は進行します。吉祥寺周辺ですので住宅や土地を売って黒字にする見込みは高いと思います。仮に住宅はもう老朽化しているので解体して土地を売ると考えるとすると、更地だと固定資産税が上がるので確実に土地の売却先を見込んでから解体するという可能性もあり得ます。しかし、これも吉祥寺周辺という一棟立地であり、不動産事業者が住宅や土地の売却の営業をしつこくアプローチし続けていることは想像つきます。

経済的な理由以外であまり使わない/放置という選択になっている

 それでも限りなく使われていないまま住宅が放置されている理由としては、相続絡みで身動きがとれなくなっているということが予想されます。元々の所有者が亡くなりその後、所有権移転登記がされず兄弟姉妹がいる子どもたち複数人による共有になり、住宅を売却したい人、残したい人、無関心な人など意見がバラバラで意志統一させる手間がとてもかかります。さっさと売るなり貸すなりすればお金になるのに、それをしないで今後使う見込みの薄い住宅を放置することは、経済的な側面のみから見ると不合理な行動です。それでも放置しているということは、経済的な理由以外であまり使わない又は放置という選択に落ち着いていると言えます。

住宅の片付けや掃除、簡単な修繕というサービスのニーズ

 売るにせよ貸すにせよ、放置された住宅の片付けや掃除や最低限必要になってきます。売る場合でも査定してもらうために片付けや掃除は必要ですし、貸す場合だと「DIY型賃貸借」という新しい賃貸契約形態も出てきていますが最低限の修繕は必要だったります。そもそも個人住宅だし売るとか貸すっていう発想がない、しかし今後のことを考えると確かに早いうちの対応は必要、しかし放置していても固定資産税を払い続けるくらいの経済的負担なのですぐになんとかしないといけないわけじゃないとすると、住宅の片付けや掃除、簡単な修繕といったサービスのニーズは結構あるんじゃないかと思います。

イングランドではあまり使われていない住宅の課税強化を実施

 移民の流入もあり住宅不足が大きな課題となっているイギリスのイングランドでは、2年以上占有されておらず家具もほとんどない住宅に対して地方自治体税(カウンシル・タックス)を重課する税制が採用されています。

英国議会下院図書館資料「空き家(イングランド)」(2017年)および政府の自治体向けガイドラインによれば、2013年4月1日から、自治体は長期の空き家に対し、地方自治体税(カウンシル・タックス)を重課することができるようになった。
人口減少社会における不動産税制のあり方――コンパクトシティと不動産税制

 日本では2015年度税制改正により、勧告がされた特定空き家の敷地は住宅用地特例の対象から除外されるようになりました。しかし、そもそもこの制度の導入趣旨は利用されなくなった建物が周辺に危険や不衛生、景観悪化などを及ぼすことを防止するという観点です。イングランドのように放置住宅を市場に戻す、流通促進するという観点ではありません。
 イングランドのように住宅不足という喫緊の課題があるならまだしも、日本の場合はむしろ住宅過剰ですので、イングランドと同様の課題意識であまり使われていない住宅への課税強化をすることは難しいです。地域に不足しているモノやサービスを提供する場所として、老若男女の生活課題を解決する場所として活用するという観点から放置住宅への課税強化が出来ないものかと思います。

読み手の立場を想像してお手紙を修正

 今回は家主あてお手紙を再度出してきました。合計で10軒ほどです。もっと読み手の立場を想像しようと思い、いくつか改善しました。

・空き家再活用の実例の画像を入れてリアリティを持たせた
・封筒に入れると封筒を切る手間が発生するのでA4の紙1枚だけにした
・カラーにした
・パッと目に止まるように大見出しをつけた
・貸してください、と直接的に書かなかった
・子どもや若者、子育て世代など未来の世代のための活用ということを目的として明確化した(地域・社会貢献性を強調)

 数あるチラシや郵便物の中に埋もれないために、デザイン性というかレイアウトも気をつけてお手紙を修正しました。正解はないので試行錯誤を繰り返します。

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