東京ジャズ2010 2日目

2010年9月5日




昔のバンドでキーボード担当だったおカナ坊こと佳奈子が、「東京ジャズ2010」の二日目、ラリー・カールトン&松本孝弘が出演する昼間のチケットを一枚、隠匿しているという情報を入手した。
すでに全日分がsold outのプラチナチケットである。
入手したのが情報だけでは仕方ない。
どうしてもチケットを入手したい!

「ぼくね、ラリー大好きなんだよ」
「わし、当日は予定空いてるんですけど」
「オレ、どうしても観たいんだもんね」
「譲らんかいっ!」
譲ってもろた。
\(^o^)/

さらに新たな情報を入手、なんと佳奈子は、ロバータ・フラックが出演する夜のチケットも隠匿していることが判明した。

「わしは一日中、空いてると言ったじゃろうが」
「オラオラ、それもよこしなさい」
かくして、一日通しのチケットをめでたく入手したのであった。
これを世間では「カツアゲ」というらしいが、とんかつ屋さんなら、毎日やっていることではないか。
(代金はちゃんと渡した)

当日、深夜勤明けで帰宅したが、仮眠を取れば起きる自信がない。
そこでそのまま出掛けた。
会場の東京国際フォーラムに到着したのは、9時50分だった。

ビッグネームばかりが並ぶ。
惜しいのは、前日のロン・カーターだ。
ベースマンの私としては、ロンの円熟した演奏を聴いてみたかった。
マイルスから離れてからのロンが好きだ。
親日家で、今まで何度も来日している彼なので、また聴くチャンスもあるだろうと、潔くあきらめた。
って、もう昨日終わってるし…。

ホール内に入る。
途中、外をのぞくと、ショップの朝礼の真っ最中だった。
今日の売り上げ目標などを告げて、後は、
「いらっしゃーい、あんがと」
などと、お辞儀のおさらいなどを敢行しているのであろうか。

本日の昼夜のスケジュール。
外では、綾戸のおばはんが出演する予定になっている。
こちらも観たいが、時間が重なって不可能のようだ。

二階席に落ち着く。
このホールAは、チューリップのファイナル以来だ。
ちょっと、いろいろと考えてしまう。

しょっぱなの、クリス・ミン・ドーキーは、恥ずかしながら知らなかった。
でもベーシスト。
思わず、そのテクに引き込まれた。
ジャズとはいいながら、ジャンルは昔でいうところのフュージョンやクロスオーバーだ。
でもそんな「くくり」はいつの間にか意味のないことになって、ただ楽しめばいい。


続いてN響とマーカス・ミラー。
まずN響の演奏が始まった。
と思ったら、すぐに終わり、ティンパニーやシンバルのお兄さん、トライアングルのお姉さんたちが静々と退場。
顔見せだったのね。
遅れてマーカス登場。
ラリー&松本だけではなく、実はこちらにも大きな期待を持っているのだ。
マーカス・ミラーといえば、ラリー・グラハムと並ぶ、いわばチョッパー奏法の元祖的存在。
衝撃的な奏法だった。
そのショックや感動は、今も忘れられない。
懸命に練習した。
だが、当時のわしらのバンドで、チョッパー奏法を採り入れる曲は皆無だった。
オクターブで、少しだけ真似をする程度で終わった。

一曲目から、いきなりチョッパー炸裂。
後はN響とのコンビネーションで、どんどん盛り上がっていく。
オケとのコラボはアレンジが難しいものだが、誰の編曲なのか、素晴しいコンビネーションで最高のステージだった。
感動の連続で、うるっと来てしまった。
鬼の目にも涙なのだ。


途中でロバータ・フラックが登場して、一曲、披露した。
昼だけ観に来た人には、嬉しいディレクションだろう。


次はメイシオ・パーカー。
この人は名前だけしか知らなかった。
ジェームス・ブラウンのバックの、ブラスセクションだった人、その程度の認識。
ジャンルにはこだわらないけど、ジャズでもなくR&Bでもなく、かといってブルースでもなくディスコサウンドでもなく、いわゆるブラス中心の典型的なソウルミュージック。
こちらは徹夜で来ているものだから、今回、一番音量が大きかったにもかかわらず、少しだけウトウトしてしまった。
済まぬ。


いよいよラリーおじさん&松本くん登場。
スローやミディアムなテンポで、予想通りカッコ良く進む。
選曲はラリーの世界で、いみじくも松本くんが言っていた、「畑違いですが」に納得。
それでもラリーは松本くんを立てて、自分はあまり出過ぎないように決めているように思えた。
スローやミディアムだからこそ、ツインリードの魅力が分かる。
息もピッタリ。
ラリーのセミアコで、松本くんのギターとまったく同じ音質を出すのはスゴイことだ。
我が家のセミアコを復活させたい。
とにかく期待していた通り、いや、それ以上の演奏で、またうるっとしてしまった。
願わくば、セッションにこだわらず、お互いの個性がもっと発揮できるよう、一曲ずつでいいから、好き放題に弾いてもらいたかった。
でも最高。
B'zの松本くんも、もちろんいいけれど、ラリーとプレイするも松本くんも、またカッコよくて最高!
どうしてこんなに良い音が出せるのかと、羨望と感動の波が体中を駆け巡る。
佳奈子に観せてあげたかった…。
来れば良かったのにね。(^^ゞ

アンコールの二曲で、ついに、目から鼻水がつつーっと流れ落ちた。
(ーー;)

いずれにせよ、来月にはBSハイビジョンとBS2で放送するそうだから、そちらにも期待しよう。

話は前後するが、マーカス・ミラーのステージが終わった時点で、長い休憩時間があった。
半券を見せれば再入場できるらしいので、食事するために、迷わずに外に出た。

軽のワンボックスが連なり、人気のあるジャンクフードには長い行列が出来ている。
気がつけば、最近はいつの間にかあちこちでキッチンカーが増殖している。

食べ物を得るために並ぶのは恥ずかしいこと、と婆ちゃんの教えがある。
よってパス。

屋外ステージを覗いてみた。
こちらは、わしが昔からイメージしている「Jazz」だった。

会場に戻ると、マーカス・ミラーが、自分のグッズを買った人にサインをしていた。
こちらも長い行列で、食べ物ではないから最後尾に付こうかと思ったが、長すぎる行列に断念した。
じわじわと人をかき分けて進み、ぎりぎりまで接近して一枚だけ撮れた。
マーカスのサイン入りCDが欲しかったぞ。

二階ホールのカウンターでフランクフルトとサンドウィッチを購入、アイスコーヒーで流し込み、腹ごしらえを済ませた。
遅い昼食だった。

ホールの片隅に、NHK-FMの放送ブースがあった。
近づくと、わしの大好きな住吉アナの名前を見つけた。
名前だけで、彼女のお姿は見当たらない。
今日の放送は、もう終わったのか。
残念。

さて、昼の部が終わり、夜の部のチケットを持っていても、一度退出しなければならない。
何やら写メを撮っている有象さん無象さんたち多数。
見れば柱を撮っているではないか。
わしはその有象無象さんを撮ってみた。

「もし象さんと街中で遭遇したら、相手は小回りが利かないから、必ず横や後ろに回り込んで逃げるんだよ」
これは婆ちゃんの遺言であり、家訓でもある。

横に回り込んだら、色違いだけど、コッチにも同じものがあるじゃん。
ピンクはお嫌いですか。

外に出ると、昼の部から流れた人で大混雑。
綾戸のおばはんのステージはとっくに終わっていて、外国のおじさんがサックスを吹いていた。
おばはんを観られず、ちょっと残念。
翌日はホールでのスケジュールなので、プレステージだったのだろう。
テネシー・ワルツで、恒例のようになった、
「ここで、溜めまんねん」
とか言っていたのだろうか。
いや、これは清水ミチコの影響か…。

夜の部を待つ。
座ったままで楽ちんと思ってはいけない。
お尻が痛い。
座り続けるのも大変なのだ。
色々と姿勢を微妙にずらしながら、それでもS席で観るステージを楽しんだ。


最初に登場した二人組は、わし、正直いって知らなかった。
でもピアノとボーカルが心地よく、曲も良かったせいか、また少しコックリさんをしてしまった。
済まぬ。


夜の部では、断トツでロバータ・フラックが知名度No1だろう。
一曲目は、お馴染の「やさしく歌って」だった。
炉端おばさん目当ての観客も多く、かなり盛り上がった。
右隣の中年スーツのおじさんは、わしと同じように一人でやって来て、みんながおとなしく拝聴している曲も、単独で手拍子を取っていた。
かなりのファンなのだろう。
その証拠に、他のアーティストのステージではコックリさんをしていた。


確かに炉端おばさんのステージは良かった。
ところがトリをつとめるのは、アル・ジャロウ。
そんなことはないじゃろう、と思っていてもアル・ジャロウなのだ。
ステージを観れば、この人がトリになったのも納得。
グラミー賞を獲ったスゴイ人、という、知識ともいえない記憶だけしかなかった。
だが、炉端おばさんだってグラミー賞を受賞しているけれど、盛り上がり方が違う。
風貌は、人の良さそうなおじいちゃん。
そのおじいちゃんがスキャットを巧みに操り、グイグイと観客を自分の世界に引きずり込んでいくのだ。
一日を通して、スタンダップで楽しむ観客も、初めて出現した。
左隣の席の、あまり若くないお姉さんが、気合いの入った拍手を頻繁にするものだから、こちらも釣られて拍手してしまう。
掌が真っ赤になってしもうた。
(ーー;)

時間が押して、最後には帰る人もちらほらいるが、実はわしもその中の一人であって、出口へ向かったのだが、帰るにはあまりにも惜しく、出口扉の前でアンコールに魅了されて、そのまま会場を出られなかった。
アルおじいちゃんは、思わぬ収穫だった。
今度、CDを買おう。

出演者のCDや関連グッズを販売していたが、佳奈子にお土産を買って帰ってあげたい。
ところが、公式パンフは面白くないし、「東京ジャズ」のTシャツもあったけれど、彼女の好みが分からない。
ラリー&松本のCDだって、確実に持ってるだろうし…。
ま、どうでもいいや。
ということで、残暑きびしい折、扇子を購入した。
とにかく、佳奈子からカツアゲしたチケットのお陰で、一日を存分に楽しむことが出来たのだ。
最近たまっていたストレスらしきものも雲散霧消した気がする。


扇子は、涼しくなる前に渡せるだろうか。
機会があれば、ラリー&松本の感動も佳奈子に伝えよう。

佳き日なり。






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