さようなら原発1000万人アクション

2011年9月19日

仕事を中抜けして千駄ヶ谷駅ホームに降り立つと、人、人、人…。

なかなか進まず、そのうちに次の総武線が盛大に警笛を鳴らしながら東行き、西行き両方向から到着し、改札へたどり着くまで10分。

やれやれ、これでは、会場に向かうまでもが思いやられます。
ホクホクなのはJRだけでしょう。

会場周辺では、さまざまな団体やグループがビラを配りカンパや署名を求めて、行く手を阻みます。

手書きのプラカードを持ったおじさんの向こうに見えるのは、核マル派の横断幕。

隠れて見えませんが、野田さんお辞めなさいね、とか、日米関係云々の相変わらずの主張。

消費増税派の野田さんに関しては含むところもありますが、とにかくここでは関わらないのが身のためです。

ヒョロっとした頼りなさそうな青年がビラ撒きの真っ最中で、当然、どこかから公安に写真を撮られているのでしょう。

それでも、これは貰って置いた方が良いかな、と思うビラもあって、それがこの一枚。

人間は簡単に驕る生き物だけど、驕りの中にあっても、他の生き物の命を思うのは大切なこと。

ぜひ出掛けてみましょう。

会場に到着。

幟旗はさまざまで、核マルも含め、今回の集会は呉越同舟、同床異夢なのだと、この時に知りました。

集会の趣旨にちゃっかり便乗した感のある団体も来ているようです。

反原発は、すでにイデオロギーではなくなったと思っていましたが、どうも私の認識は甘いようです。

じわじわとステージ近くまでにじり寄ると、主催者がアナウンスで、前から順に座るようにとのこと。

それが分かっていたら、小さなマットくらいは持参したのですが、やむを得ません。
フォーマルな格好で来なかったことに安堵すべきなのでしょう。

ジーンズで来てよかった。

オープニングまで、しばしプログラムを見ます。

いよいよ開幕です。

まずは呼びかけ人の先陣を切って鎌田慧さんが登場。

写したのがケータイなので、姿は定かではありません。

もっと前へ行きたかったのですが、ステージ周辺は福島の避難民の方々が占めているとのこと。
この距離が精一杯だったのです。

すでに4万人が集まっているとの報告がありました。
(後に6万人まで増えたそうな)

続いて大江健三郎さん。

ノーベル賞を受賞した人をナマで見るのは初めてです。

何だかこちらの方が緊張して、せっかくのお話も聞き逃してしまいそうになります。

でも最後に、
「市民のデモしかないのであります」
と締めくくって終わりになりました。

さあ、困りました。
仕事を抜けて来ているので、デモまではちょっと…。

頭上では何機ものヘリが旋回(多い時は4機)し、それがずっと続きます。


その後、プログラムとは若干の前後はありますが、内橋克人さん、落合恵子さん、澤地久枝さん、ミュンヘン大学教授で森林生態学の教鞭を執るフーベルト・ヴァイガーさん、俳優の山本太郎さん、そして最後にハイロアクションの武藤類子さんの順で進みました。

落合さんの、
「放射性廃棄物の処理能力も持たない人間が、原発を持つことの罪深さ」
に深く共感し、

武藤さんの、
「私たちは何気なく差し込むコンセントの向こう側を想像しなければなりません。原発はその向こうにあるのです」
に、今さらながらですが、日々の暮らしを安穏と送って来た自分を反省します。

それは、脱原発への、私のメタモルフォーゼの可否を問われていることでもあるのです。

もちろん答えは「否」です。
本当に必要なのは、「必要悪」と安易に捉えていた反省と自戒に他なりません。



さて、今回の集会を知ったのは、友人から届いた一通のメールでした。

「友人から来たメールです。一応お送りします。迷惑なら捨ててください」
とありました。

押し付けがましくないのは大人としての節度の表れであり、だからこそ何年も仲良くさせて頂いているのです。

このようなメールは他の人からもよく届きますが、ほとんどが何かしらの思想の元に、「何それの集会に出よう」とか、「○○党は素晴しい、私は指示しています」とかの、いわゆるイデオロギーの押し売りです。

その独善や「布教活動」には、心の底から辟易します。

だからこそ、
「迷惑なら捨ててください」
の気遣いの一行に、こちらも、
「ちょっとサイトを見てみようかな」
となるわけです。
その内容は以下のものでした。


経済産業活動の為には原発電力は不可欠、と主張する人々は、我が子や可愛い孫達が放射線被曝しても変わらずそう言えるか?

出産世代、次世代の人々の未来を奪ってどう責任を取れるか?

帰りたくても帰れない故郷、若者たちの未来を奪う原発大事故を眼前に、「原発は必要悪です」とそれでもあなたは言うのか?

”専門家”と称する利害集団が、これまで散々私達を騙してきた。

もうその「専門家に任せておけ」論には、騙されません。


内橋克人・大江健三郎・落合恵子・鎌田慧・坂本龍一・澤地久枝・瀬戸内寂聴・辻井喬・鶴見俊輔さんたちの呼びかけで、「さようなら原発1000万人アクション」が始まりました。


ここで真っ先に気付いたのは「政党や政治家の名前がない」ということ。

これは是々非々のスタンスを心掛けている私にとって、とても重要なファクターなのです。

特に鶴見俊輔氏は別格で、私のメルクマールと位置付けている人でもあり、ならば行ってみようかなと思いました。

ところが今回の集会では氏の名前は見当たらず、ちょっとがっかりしたのも事実です。

それでも、すでに子供たちの内部被ばくは始まっており、一生つきまとう健康不安も捨て置けないし、前日のETV特集でも「置き去りにされた慎重論。前編」を観たばかりで、ならばここで自分のメルクマールを行動に転化しなければと参加を決めたわけです。

もちろん誰にも声を掛けず強要せずのスタンスは崩さず、私一人の意思と行動です。

ETV特集では、冒頭から、福島第一の建設に当たって、もともと海抜35メートルあった大地を、コストダウンのために10メートルまでに削り、そのために、実は最初の一歩から躓いていたこと、丸投げでアメリカの某原発会社に発注製造を委託し、引き渡された時点では、日本側の原発に対する知識は皆無だったことを報じていました。

これは原発推進論者で、自ら原子力委員会の委員長に納まった正力松太郎の執念でもあり、やがて国策化されたこの政策が現在も続いているのは誰もが知るところです。

朝毎読の三紙では、慣性の法則通り、読売だけが突出して原発擁護の論陣を張っているのも、これまた周知のこと。

記者のすべてが右へならえとは考えにくいことですが、そんな記者はどこか地方の支局に飛ばされ、定年まで冷や飯を食うのでしょう。

原発人災事故の連鎖は、一刻も早く止めなければいけません。

一応、ググッたら、賛同者として以下の人たちの名前が出てきました。

赤川次郎、赤瀬川原平、池澤夏樹、井出孫六、大谷昭宏、加賀乙彦、姜尚中、クニ河内、玄侑宗久、小中陽太郎、小室等、佐高信、沢田研二、中山千夏、羽仁進、早坂暁、ピーター・バラカン、久田恵、矢崎泰久、山田洋次、湯浅誠、湯川れい子、吉武輝子、和田誠。

実際のところは不明ですが、それらしくもあり、信用しても良さそうな顔ぶれではあります。

参加者は老若男女さまざまで、みなさんアスファルトの上に直に座っています。

集会もそろそろ佳境に入り、お揃いの黄色いTシャツを着た福島の人たちがデモの先頭になるべく、移動を開始します。

あまりにステージの近くにいたものですから、ここから移動するにも、
「10分は掛かると思いますから、そのままお待ちください」
のアナウンスを恨めしく聞くだけです。

やっと前が少しずつ動き出して、何とか会場の外へ出ました。

ところが、どうもデモのBコースの列に飲み込まれてしまったようで、帰ろうにもこの時点では無理です。

仕方なく牛歩のごとく、ただ前の人について行くだけです。

列から脱出しようにも、本官たちが「車が横を通りますから、列からはみ出ないでください」と言うし、進もうと思っても、所どころでこうしてテレビは赤ちゃんを抱いた若いお母さんにインタビューしてるし、帰りたいのに帰れないので困ります。

会場を出る前に、シュプレヒコールの練習はあったものの、パレード(今回はデモとは呼ばないらしい)している前後の人たちは静かなものです。

このゆっくりさ加減と、普段は歩けない車道を進む何とも奇妙な感覚に、やはり尋常ならざる大集会なのだと我に返ります。

1キロ近く歩いたでしょうか。
何とか脱出したものの、方向感覚がなくなり、太陽の影から方角の見当をつけて千駄ヶ谷駅まで戻ったのでした。
(原宿駅の方が近かった…)

「不運に負けたら不幸になるだけ、希望を持って生きますよ。私たちのような年配者はもうどうなっても構わないけど、原発のせいで命を脅かされ続ける子供たちには、絶対に安心して暮らせる環境が必要です」

パレードの途中で少しだけお話した、福島から来た避難民の方のつぶやきがいつまでも耳に残り、「団塊の世代はまだまだ健在だ」と再認識します。

夜になって、今回の集会をメールで知らせてくれた、やはり団塊の世代の友人に、「行って来ました」の連絡を入れ、19日が終わりました。

太陽はあと50億年の寿命があるといいます。
その太陽があって、地球が公転と自転を繰り返す限り、偏西風は絶えることなく吹き、内部ではマグマが滾り、光は地上に降りそそぎ、海流は大海原を回り、エネルギーは無尽蔵にあるのです。

そんな代替自然エネルギーの開発こそ、既得権益にどっぷりと浸かって汚れた人々を一掃して、クリーンになる唯一の手段だと思うのです。

だから、まずはそれらを阻む政治家や電力会社、そして付和雷同の輩たちを除染しつつ、もちろん土地の除染も進めながら、安心して暮らせる社会を構築しなければいけないと思うのです。

それでも原発が欲しい人たちは、アンドロメダ銀河のどこかの惑星にでも集団移住して、そこで存分に原発を造り、新たに文明や繁栄を築いて我が世の春を謳歌しつつ喜んでいればよろしい。


※ 警察発表によると、参加者は2万7千人とのこと。

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