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設計事務所つれづれ~お金の設計~

こんにちは。株式会社DesignLab.Merzです。

建築設計事務所は「デザインだけを行う」とか「図面ばかり書いている」と思っている方がほとんどです。実はそうじゃない。

確かに図面を描くことは多いのですが、それよりも考えることがあります。それは「お金の設計」

いわゆる資金計画です。今回は「お金の話」を描いてみましょう。

1.理想と現実を把握する

皆さんが住宅などを検討する際に、まずは何を考えますか?現在住んでいる住まいから、新しい住まいを考える際には

・現在住んでいる場所(空間)で不足してること、使いにくい部分

・次に住む場所(地域)の住みやすさ、利便性

・お子さんがおられる場合は学校区

からスタートし、やがて行き着くのが「毎月の支払額」かと思います。

広告で「現在の家賃で新築住宅が購入できます」といった謳い文句がありますが、購入するというフレーズにまず、皆さん心を動かされます。

家賃は残らない。いっそ家賃と同額を支払うなら、住宅を購入したほうがいいんじゃない?という流れ。ここから、理想と現実の悩みが生まれます。

「購入する」という意識が先行すると、そのゴールは「手に入れた」段階でゴールとなるのですが、本当は「新しい生活のスタート」ですから、ゴールではなくスタートなんです。

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2.「維持管理」を忘れないように

住宅などを取得したら、必ず必要なのは「維持管理」

いくら新しい住宅を購入(購入という言葉は好きではないのですが)し、毎月のローン支払いがスタートします。それと同時に、考えながら貯蓄しておかないといけないのは「維持管理費」

戸建て住宅の場合、新築してから5~10年おきにメンテナンスを検討して丘にといけません。屋根やバルコニーの防水など、水回りの防水については、一生ものでなく、各防水メーカーも保証期間があり、その保証期間以降は所有者にて定期的にメンテナンスしていかないといけません。

外壁などについても、10年も経てば当然のように「劣化」していきます。

私も建物調査の依頼を受け調査に伺うことがありますが、外壁については指で少し擦るだけで劣化状況(外壁面が改修必要かどうか)はわかります。

一度、外壁を指でこすってみてください。白い粉が付着する場合、外壁面の改修が必要となります。外壁面の塗装が劣化し、白華(はっか)が発生しています。

外壁面は、特に木造の場合は建物を支える柱や梁などを雨水から守る重要な場所。白華現象が起こっているということは、外壁面の塗装性能が低下し、壁の中に漏水等が起こる可能性があることを示します。

その他、設備面などの修繕、室内の劣化も考えておかないといけません。

住宅は「ライフサイクルコスト」の計画を行っておくことが重要です。

3.マンションの場合は住戸数と「修繕積立金」を理解しよう

マンションを新しい住まいとして検討される際のポイントは、住戸数と修繕積立金のバランスが重要です。

また、中古マンションの場合は「外壁の仕様」なども影響します。

バブル時に新築されたマンションは、仕様もバブル。時には現在製造されていないようなタイルなどを使用されており、今の時代に改修修繕工事を行う際には多額の費用が必要な場合もあります。

マンションは所有権が「共有部分」「専有部分」に分けられ、専有部分は個人所有者によるメンテナンスが必要となります。共有部分の改修修繕は「マンション住民全員」で修繕することとなり、そのための積立金が「修繕積立金」となります。ほとんどの場合は、マンション管理組合を経由し、委託された管理会社が資産管理を行っています。

ここで気を付けたいのが「住戸数と修繕積立金の金額」となります。

マンションの修繕も、戸建て住宅同様5~10年おきに検討しておくべきです。マンションだから長持ちするなんてことはなく、住民全員で維持管理を行っていくことが必要となります。

マンションの改修費用(例えば外壁・外部改修工事)については、あくまで目安ですが住戸数×50~150万かかる工事費用です。(経験則での参考)

築年数が経過すると修繕する箇所や仕様も費用が掛かり、当然ながら修繕費用は多くかかります。

外壁改修工事だけでなく、共用廊下の床仕上げ(防水)や屋根、設備面ではエレベーター入れ替えや、上下水管配管など、時間がたつにつれ改修費用が多くかかる「設備面の更新」がマンション価値のポイントとなります。

修繕積立金は毎月徴収され、その管理がうまくいかないとマンションは劣化度が増し、見た目にも住み方にも影響が出ます。見た目や住み方に影響が出ると入居率は下がり、さらに修繕が行いにくい状態となり、建物劣化度は加速します。

近年、タワーマンションが増えていますが、新築時に入居された際には優越感に浸れます。がしかし、構想であるがゆえに、10年後のメンテナンス時期に修繕費用は当然ながら多額の費用が必要となります。修繕積立金についても入居者にて負担となるわけですから、想像はつきますね。

少子高齢化が進む中、また、新型コロナウイルスによる「新しい生活様式」で、経済の流れは大きく変わります。過剰となっている「住宅産業」は今後修繕等の面で破綻を迎えると思います。住宅を販売する業界は「販売すること」がメインですから、ライフサイクルコスト(修繕費用)については自己防衛するしかないのです。

4.施工を知らない設計事務所は避けよう

設計事務所は、本来「建築のプロでありプロデュース能力」を持っていないといけません。かっこいいデザインは、正直「誰でもできる」ことで(そのための研究と努力は必要ですが)そのデザインを現実化できるかどうかを理解しながらデザインすることが重要と常々思います。

また、デザインは「機能美」であり、使いやすさ、メンテナンスのしやすさ、長く利用して飽きないものを「デザイン」と呼べるわけです。

こういった中に必ず「お金の話」は必要で、この部分を考えずに設計を行うことは不可能です。

かっこいいデザインができても、施工費用の計算ができない設計事務所は少なくなく、そのたびに施工者さんに負担がかかり、結果、建物所有者に影響が降りかかることとなり、この点だけは避けないといけません。

5.まとめ

今回はライフサイクルコストをメインに書いてみました。

設計事務所にご相談される際は「この計画にどのくらいの費用が掛かり、将来、どのくらいの費用を準備貯蓄する必要があるか?」を必ず確認してください。あいまいな回答で、とにかく前に進めようとするのでなく、先に資金計画を明確にしておくことは重要です。

しっかりと理解して楽しい計画を進めていきましょう。

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