時を巡り続ける双子の話

「いつか、目を覚ました時には…あの子の側に、いてやってくれ。」

Motherの手で、キングナソードのコアに素体を安置された私達。そして、添えられた傷付いた手…Mother、貴女はいつもそう言うわ。

だけど…ねぇ、Mother。

「アリーヤ……アリーヤ、目を…アリーヤ…!」

貴女だけ、いつも居なくなってしまうわ。あの薄暗い魔界で、貴女の亡骸を抱いて泣いているが誰か分かっている筈です。最愛の…結ばれる事すら運命に許されない、運命の人。でも、貴女が居なくなって悲しむのは彼だけじゃない。どれだけの人が貴女の死を痛むか…貴女は、知っている筈なのに…いつ、どんな時、どんな運命で聞いても…自分一人の命で、多くの命を救える貴女は「これでいい」と言うの。Mother…やっぱり、貴女はとてもずるい人だわ。愛されて、愛に飽いて…それでも愛をくれて…あぁ…貴女ほどに、愛せる人間が、何故早々に命を奪われねばならないのか―――!!!

「Mother…今度こそ、今度こそお助け致します…!」

だから、私達が運命を破壊する必要がある。
私達双子のナソードを作り上げた完璧な医者であり研究者。
完璧な天才であるが故に、人の命を救いすぎて神に命を喰われる者。

「Mother」
「なんだ」
「Mother…」
「なんだよスルザ」

私はデスクに向かうMotherの膝に縋るようにしがみついた。そうすれば、Motherは愛おしい御手で私を撫でてくださるもの。ええ…ええ、愛していますMother…この幸せな運命が、どうか…どうか続きますように…いつか、いつか必ず、貴女をQueenと、そして彼と共に歩める運命を掴んで見せます。どうか…どうか、力を求めないで。

私達はQueenの友として作られたけれど…それではいけないと、この永遠の中で気付いたのです。この涙と揺り篭は…QueenとMotherの為の兵器となります。

貴女方の為なら、どれだけ傷付いたって構わない。

医者であるMotherから作られた私達は、生命体であるナソードとしては肉体を持ったある種"完全体"。作られた素体はキングナソードのコアで眠り、人のように、時をかけて成長をした…『最も人間に近いナソード』。

だからナソードと言えど、私達の身体は肉体であり、血が巡り、体温があり、痛みもある。

Motherの頭脳で形成された最小化された額のコアに凝縮された、Motherの記憶と…過去の私達が残したループの記憶。

…きっと、きっと今度こそ、Motherを救える筈なの。

もう少し、もう少しなのに…


Motherが生きると、Queenが死ぬ。


なんて、なんて残酷の運命か。いや、きっとこれもあの神の掌で踊っているに過ぎない。負けられない…負けてなどいられない…!


「何千、何億と時を繰り返そうと!」

「私共は、必ず御2人をお救い致します!」


揺り篭のヴァッカ、涙のスルザ。

彼女達は、永遠の時を巡る。

いつ来るやも知れぬ、幸せを追い求めて。

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