空は本当の空か

     世に知られた文人の命日ということで、いろいろな人の命日がでていた。
芥川龍之介は『河童忌』、正岡子規は『糸瓜(へちま)忌』、梶井基次郎は『檸檬忌』と呼ばれているそうだ。同じレモンでも高村智恵子の命日は『レモン忌』だそうだ。高村光太郎の『レモン哀歌』からとったものだ。智恵子は、東京の空を本当の空ではないと言い、生まれ育った二本松の空が本当の空だと言っている。だがその美しい故郷も、今は朝夕線量を計られ、野菜、果物、米など出荷できるできないと毎日警戒されている。空だけは汚染の対象にならず、昔ながらの美しい本当の空なのかもしれないが、その下に住む人々の生活は一転してしまった。レモンのしずくをたらしてぱっと元に戻せればいいのだが、それができない今、ただただ昔の空、昔の生活に戻れる日がくることを願うばかりである。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（H２３．１０．１５）