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clusterワールド制作記録:Velvet Lagoon

グリーンマンは電脳都市のひとつ、ベルベットラグーンで起こった事件。
濃緑色をした無制御のアバターの集団が海から上陸し始めた事件だ。
「あれが、未完成なエクト・マスコット…」
「そうだ、我々はあれで痛い目に遭い、危険を認識した。」

複雑なパラメーターの実装やUI表示と言った新機能に対する研究は既存ワールドの改修の際には難しい。今後建造するワールドに向けて様々な知見を得ねば。

奥深きロジックの沼へ。そして、世界観の深部へ。

全ては、再生へ。

電脳都市1366番。cluster向けワールド「ベルベットラグーン」リリースです。

◆ようこそ電子の海へ🏖️

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ベルベットラグーンは久々の電脳都市、世界観小説「LegacyOceanReport」の舞台を現実空間に顕現させたワールドとなります。

かつては観光スポットとして名を馳せ、VRヒーリングスポットとして知られたこの街もいまや閑散とし、海底にはガラクタが転がっています。この街に、一体何があったのか。

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所謂水辺型のワールドですが、今回は海の中にそのまま潜っていくことが可能です。世界観小説で幾度となく描かれてきた海底お宝探しを、ようやく実際に体験して頂ける日が来ました。

海面シェーダーは裏面表示されない為反転させたものをもう一枚用意し、海底には海月天文台でも使用したFakeCausticsを使用。更に水面下進入をトリガーとする、Color GradingとVignetteのポストプロセッシングを加えました。

本当は被写界深度も使いたかったのですが、VRでは使わない方がいいという情報があったので見送りました。また、スマホで動かすにはかなりきついラインだったためブルームも外しました。

◆ロジックの流れ📠

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今回のワールドは新機能が多数追加されたロジックに対応すべく、ゲームワールドとしての要素を持たせました。具体的にはテンプレート2「プログレッション」に近いものとなります。

初期処理でワールド各地にガラクタを配置し、これが回収、消費されるとワールド中を常時移動しているスポーンスポットから次のガラクタが供給されます。当初はタイマーを使用して一定時間ごとに10か所のポイントからランダムに供給されることも考えていましたが、確率の偏りが大きく賽の河原の如きゴミタワーが出来てしまったので断念しました。

また、来場者が思惑通りゴミ集めをしてくれるとは限らない以上、無制限にゴミが増えていく可能性があったのも問題でした。

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拾ったガラクタは海上の回収ボックスに入れるとポイントが加算されます。まず、箱内部のコライダーに何かが進入すると「consume」というシグナルを対象に飛ばします。

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このシグナルに反応してトレジャーアイテムはプレイヤーのスコアに指定の値を加算し、同時に自らを消去させます。

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またこの際、アイテムの側も論理型キー「fanfare」とシグナル「charge」を飛ばします。前者はパーティクルの起動、後者はSEとパーティクルを停止するためのタイマーの起動です。

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隣にある黒い窯は調理装置。ここに虹色サザエなどの電子生物を入れると消費アイテムに変換してくれます。効果はターボが速度5倍、シェボンがジャンプ力7倍と大きいですが20秒しか持たないので、使いどころをよく考えないと無駄撃ちになりがちです。

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ポイントはカフェの交換所で景品と換えることが出来ます。プログレッションを遊んでいて思ったのは、UIにスコアを表示するとカメラに映らないと思った事でした。そこでトロフィーの様なアイテムと交換できる要素を追加しました。最高額の10000ポイントはそう簡単には集められなさそうですが…。

◆BGM

既存の曲を使う予定でしたが、もう少しおとなしい曲が欲しかったので簡単に書き下ろしました。











「なあ、ゴーレムやトロイだって、アバターを取って食ったりはしないんだよな?ドラゴンの陸生種なんて見つかっていないんだよな?これはきっと廃棄されたコンティネントの一部なんだよな!?」





光点が地面に降り注いだ直後、地面が一瞬青白く発光するや、不気味に蠢き始めた。砂利を押し退け、岩石同然に損傷したメモリーブロックの残骸を掴み立ち上がったのは、先程まで力なく横たわっていた廃棄アバターの集団だった。




◆世界観の深部に

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ハイエルフは作業の手を止め、饒舌だった口を紡いだ。そして何かためらっているようなそぶりを見せながら、モバイルインベントリから残骸の一つを取り出す。それは、人間の脚部……?
「…グリーンマンだよ。この区画でまともに手に入る糧食源は、これしかなかった。ゴーレムから生えた植物も、時折見つかるキノコも食料としては使えなかった。」
そう言うと彼はグリーンマンの脚をプロセッサで加工し、数点のレーションを合成した。

……お客様の中に、もしかしてフードプロセッサでグリーンマンから食料を作り、食べた方はいらっしゃるでしょうか🍴

グリーンマンは我々スケープゴート……自ら生きて動くアバターの不完全体です。ベルベットラグーンはかつて、このグリーンマンの大量出現事件によってリゾート地としてのブランドを失い、荒れ果てた廃墟となったのです。

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電脳潜水、電子生物、論理通貨、電子糧食…今回のベルベットラグーンはこれまで投稿した電脳都市シリーズと違い、カタリナ・プロジェクトの世界観にかなり深く関わっています。LegacyOceanReportにも何度もその名が登場し、第二章以降の実質的主人公、レイが発見された場所でもあります。

8000ptの高額トレジャー「重要機密メモリー」を得るには、このグリーンマンの破片から「論理食料2号『シェボン』」を作る必要があります。カタリナ・プロジェクト運用サイドの「人間がグリーンマンを食べているところが見たい」という邪悪なリクエストに応える形で設定されたものです。



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…お見苦しいものをお見せしてしまいましたね。このワールドはそんな事件から時が流れ、復興を目指し動き出したベルベットラグーンが舞台。いいんですよ、細かい事なんて気にしなくても。

ビーチでのひと時、お楽しみください🏖️