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◆カタリナ・プロジェクトアーカイブ【電子生物編】◆

本記事は、カタリナ・プロジェクト三周年に合わせてWorldTypeに蓄積されている資料を加筆修正し、公開するものである。今回はレガシーオーシャンや未踏破領域で発見された電子生物について。

◆電子生物とは

レガシーオーシャンで発見された、大まかに生物を模した形態と動作を見せるbotの総称。後にヨルムンガンドなどの未踏破領域でも発見された。

大半が出自不明であり、基本的に人工的に作られたbotとは区別されるが、由来が明確なプログラムが電子生物化した例もわずかながら存在する。

捕獲しても大半が長くて1日程度で崩壊し、研究の妨げとなっている。一方電脳都市のリソース生産能力の限界を突破する抜け穴として漁獲、資源化が試みられている。

電子生物にはオーバーショックなどを起こす危険なもの、電子遺跡に損傷を与えるものも多く、専門の討伐部隊やそれを召喚する電子航行保険も存在する。

◆グリッチシェル

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レガシーオーシャンの暗礁に幅広く生息する電子生物。浅海に棲息する個体は流れに抗うため突起の多いゴツゴツした殻を持っており、大深度の個体は平たく突起の少ない殻をもつ。

崩壊してデトリタス状と化したジャンクメモリーを舐め採って食べており、
その一部を殻に沈着させている。名前にもなっている色彩はこれによるものであり、レアな色彩の個体は高値で取引されることもある。

一方メモリーの復元に成功した例はなく、凡百な個体は電子市街地のジャンクフードの材料と化すこととなる。

(通称虹色サザエ。最も一般的な電子生物で、電子生物を疑似食のリソースに変換できることが発見されたのもこの種からである。ただその味は磯臭い上に限界まで胡椒をまぶしたような味らしい…。)

◆シミー

アジに似た魚型電子生物、全長最大20cm。体色は暗い青紫で、鰭の条線と側線に蛍光グリーンの発光を伴う。この発光は死後消失する。

大抵数十~数百尾で群れをなして行動、小型の電子生物や浮遊するメモリーセルを摂食する。エレクトロフィッシャーマンにとって重要な漁獲対象であり、水揚げ量の時に半分近くを占めることもある。

ただし、一ヶ所に留まらず広範囲を回遊するため、熟練者でないと漁獲量を稼ぐのは意外と難しい。フィッシュアンドチップスやムニエルが美味。

(名前の語源は紙魚、文字情報を食べる魚と言う訳。虹色サザエよりは大分上質な食材だが、一本釣りにするのはこれでも結構難しい。)

◆ブラストシェル

電子海洋の深度200m以深、深海域に生息するシャコガイに似たフォルムの電子生物。その実態は、海底に沈んだ残骸に襞状の構造物を作るクリームのような生物である。

構造物の形成過程では、残骸に半透明の粘液のようなものがまとわりついて見え、完成が近づくと外周が硬質化、同時に透明度を失い二枚貝に似た形態を取る。問題は、この残骸が粘液によって守られた結果劣化を免れている場合がある一方、危険なスクリプトを孕んだ一種のトラップの場合があることだ。

この有害性はアバターデータに対するものに限らず、激しい閃光を発してVRダイブ中の潜窟家が物理肉体に痙攣を起こした例も確認されている。統計的に大深度の個体ほど危険性が高い傾向があり、サイバーダイバーの調査でも専用botによる危険性テストを経てからの解錠を余儀なくされている。

(電子の海に潜むミミック、説明にあるような専用botや防護ゴーグルなど貧乏ダイバーは持ち合わせておらず、無謀に挑んだ結果後遺症だけを残して引退してしまう例が後を絶たない。)

◆スチーブンソン

電子海洋の水深100m前後に集団で生息する電子生物。形態は立方体の殻を背負ったヤドカリ型であり、海底を掘り進んではデトリタスメモリーを摂食する。

一方電子建造物に対しては、機能性を僅かでも残している限り廃墟相手でも干渉を避けることが確認されており、メモリー食害種リストからは除外されている。

広範に渡る調査の結果、元々は仮想通貨のマイニング用botであったことが結論付けられ、大きな反響を呼んだ。運用元が破産した際の混乱の中で制御を失い、生物を模した自活システムだけでさ迷っていると考えられている。

(LegacyOceanReportに出てきたのはラピスラズリ論理通貨協会のものと思われ、電子衝撃装置や自爆装置などで武装していることが明らかになった。どう見ても人工物だが、なんとこれすらも食用にしようとした記録がある…。)

◆ドラゴン

レガシーオーシャンの沖合50km前後に棲息する大型電子生物。外観はワニトカゲギス類の深海魚に酷似するが遥かに大きく、最大で全長5mに達する。

コブラのような長大な牙を上下の顎に備え、獲物と認識した相手には積極的に襲いかかる危険な生物。また、腹鰭を立てて水上を高速で滑走したり、全身から閃光を放って相手の動きを止めるなどトリッキーな動きも見せる。

危険な電子生物の制圧を生業とするトライデントにとっても手強い相手であり、通常は複数人での狩猟が奨励される。資源的価値は低いが、電子空間渡航用の保険対象であり、顧客の要請を受けてスクランブル出動したトライデントには保険会社から報償金が降りる仕組みになっている。

(元々「深海魚に似たモンスターの住む世界」という未制作のアイデアから引き抜かれてきた生物。説明に反して沿岸にも頻繁に現れるのは気のせい。)

◆オオブシ

マグロに似た比較的大型の電子生物。体は黒曜石に似た暗藍色で、その表面に電子基盤に似た薄い水色のラインが巡っている。このラインは、魚の側線に近い働きをしていると見られている。

表層付近を単独で泳ぎ、他の電子生物を捕食する上位捕食者。電子デブリやメモリーセルを摂食している所は確認されず、完全な肉食性と見られる。

身は大トロに似て美味であり、高値で取引される。漁法としては激しく抵抗する関係で網は好まれず、損壊を抑え商品価値を維持しやすい一本釣りほぼ一択となっている。

なお、トッシャーシティの市場で売られているネギトロの大半は安価で漁獲量の多い代用魚であり、中には虹色サザエの身を加工していた例まである。

(漢字で大武士。電子クルーザーを引き込むほどの強大な力を持ち、分厚い防護プロテクトで電子攻撃も簡単には通らない。これを狩るトッシャーシティの漁師たちって…。)

◆エルドラアイランド

全長100m近い規格外の電子生物。報告は昔からあったが、近年まで漂流する暗礁塊と考えられており単一の電子生物とは見られていなかった。

形態は巻き貝に似るが、殻の表面に無数の劣化メモリーセルを固着させているため遠目には瓦礫の山が漂流しているように見える。主に海面付近を漂うようにゆっくりと移動し、水面下の軟体部から伸びる数十本の触手で海底を漁り、生存および甲殻の補修に必要なメモリーセルを探す。

かつては貴重なメモリーセルを抱えた存在として宝船の如く呼ばれていたが、詳しい調査の結果、殻を構成しているのがほぼ全て損傷の激しい劣化メモリーであり、価値はないと判断された。これは、この生物が摂食に際して活性の強いメモリーセルを避けているためと思われる。

(……という話だが、実際には狂暴な個体「クラーケン」が登場。かつてトッシャーシティを襲撃し、初代クマサカ号は海の藻屑と化した。後にフローティングマーケットに出現、スクリプト弾頭すら通用しない難敵として立ちはだかった。)

◆ゴーレム

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かつて電脳都市アプリコットに雪崩れ込むように出現、無秩序な破壊行動を行った詳細不明の存在。体自体は何の仕掛けもない岩石オブジェクトの集合体である。後にヨルムンガンド未踏破領域でも確認されている。

横に並んだ複数の目を持ち、ゆらゆらと不安定に歩きながら大きな腕を振りかざして叩き付ける。ダイアルアップの接続音に似た独特の鳴き声を発するが、その内容は解明されていない。

◆アルミラージ

電子の迷宮ヨルムンガンド内部でよく見られる、ネズミほどの大きさのキメラ型電子生物。全体としてウサギに似るが毛は馬に似ており後ろ足は蹄、額からは一本角を生やしている。

◆アラガミ

ヨルムンガンド未踏破区画で発見された未知の電子生物。その体は何と蜘蛛型に再構築されたアバターの集合体であった。ゴーレムを軽く突き飛ばし粉砕する脅威的な怪力を誇り、廃棄アバターの漂着するスポットを根城に獲物を狩っている。

(元々は「ティアーズ・イン・ガベージ」というネオサイタマめいた作品のキャラ。全長10mもの巨体がどうやって都市に潜んでいたかは割と謎。)

◆ラタトスク

ヨルムンガンド未踏破区画深部で発見された、同エリアの生態系の頂点に立つとされる生物。アラガミをも食いちぎる怪力に加え旧世紀の攻性プログラムの変異体を体内に培い、並のプロテクトなど軽く破ってしまう。

非常に執念深く、狩りの際には一帯に知覚力を上げる極彩色のパーティクルを散布してどこまでも追い回す。