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近江高校コラム

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これまで書いてきた高校野球コラムのうち、近江高校に関係の深いものをまとめました。
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#近江

「山田陽翔=びわ湖」。完成を待つ日本一の方程式/高校野球ハイライト番外編・近江

いつからだろう。スポーツを見るとき、心に予防線を張るようになったのは。 応援チームの優勝を願いながら、いつもどこかで「負けるんじゃないか」と思っている。スポーツが全てではない。負けても明日はやって来る。平静を保つための保険は必要だ。 「2018年を越える。記憶にも記録にも残る史上最強のチームになれる」。 夏前の取材。多賀章仁監督の宣言を100%で受け止めなかった自分がいる。滋賀大会を勝ち抜いたあとも、期待より不安が大きくなってきた。 確かに山田陽翔はスペシャルだ。ただ、ワン

雑草集団が春に咲かせる「一番」の花/高校野球ハイライト特別篇・近江

去年秋の県大会決勝。近江の主将を務める中村駿介の姿は、グラウンドではなくベンチにあった。スタメンを外れた原因はコンディション不良。 「確かに無理はさせられない。ただ、何かあれば主将でも出られないというのを全員が知ってほしい。危機感を芽生えさせるため、監督として本気度を示す必要はあった」。 4年ぶりに秋の県大会優勝を果たし、近畿大会もベスト8入り。2022年以来のセンバツ甲子園を射程圏に収めながら、多賀章仁監督の表情は明るくない。 失礼を承知で言えば、今季の近江には「順風満帆

重圧と死闘を越え、横田悟がたどり着いた「5度目」の甲子園/高校野球ハイライト特別編・近江

「近江でまだ誰も成し遂げたことのない5季連続の甲子園。これを達成できる存在が横田だったんです」 多賀章仁監督の願いを一身に受け、近江の主将に就任した横田悟。しかし去年の秋、夢は彦根東に敗れて儚く消えた。 「早い段階で負けて、自分たちが弱いとわかった。これまでは先輩に優勝させてもらっていただけ」 横田が掲げたチームスローガンは「下克上」。あえてチャンピオンのプライドを捨て、一番下から這い上がる気持ちで厳しい冬を越えてきた。 それにしても、本当にしんどい役回りだったと思う。 先

絶望と失望を経て、星野世那が照らす日本一への希望/高校野球ハイライト番外編・近江

「あの投球では使えない」。3回途中で降板した八幡商業戦後、星野世那は多賀章仁監督に告げられた。甲子園ベスト4まで進んだ長い長い2年の夏。「ベンチには入れ続けてもらったけど、登板はないだろうと思っていた」。言葉通り、この試合以降のマウンドに星野が立つことはなかった。 出身は草津リトルシニア。滋賀学園の服部弘太郎や比叡山の有川元翔らと全国準優勝も果たした星野は、2018年の林優樹に自分の姿を重ねてブルーのユニフォームに袖を通した。 角度あるストレートや大きな縦カーブだけでなく、

成長曲線はホームランの如し~高校野球ハイライト延長戦特別編・近江

「新チームの捕手は島瀧悠真」。水口東を破った去年の独自大会決勝直後、近江の首脳陣から聞かされた構想は衝撃的だった。確かに肩は強い。長打力もある。それでも名門で1年生ながら甲子園ベンチ入りを果たした投手だ。1学年下の山田陽翔が台頭してきたとはいえ、「投手・島瀧」を捨ててまでのコンバートには不安もよぎった。 結果的に不安は現実となる。秋は滋賀学園と神戸国際大附属に、春は立命館守山に、いずれも終盤に決勝点を奪われ敗退。チームの成績は捕手の評価に直結する。「経験が少ない。リードでき

番組台本「失意からの躍進~近江高校 準優勝への軌跡~」

場内アナウンス「準優勝校、近江高校!」 第94回選抜高等学校野球大会。近江高校は滋賀のチームとして初めて、決勝の舞台まで駆け上がりました。 市民「すごいです!感動しました」 しかし、滋賀県中が沸いた大会からさかのぼること2カ月。1月28日。校長室の電話が鳴らなかった近江高校には、厳しい現実が突きつけられていました。 岩谷校長「本校は選考されませんでした。本当に残念です」 秋の近畿大会ベスト8のうち、センバツに選ばれなかったのは近江だけ。 多賀監督「決定を聞くまで(選出を)

【アミンチュな日々】いざ、センバツ!

塚本京平です。 3月18日に開幕するセンバツ高校野球に、滋賀県からは近江高校が出場します。びわ湖放送では15日の夕方5時15分から、特別番組「All For No.1」を放送する予定です。 2年前は全国準優勝。今年のサッカー部の躍進も重なり期待値はどうしても上がっていきますが、まずは選手たちに悔いなく戦ってきてほしい、甲子園を楽しんでほしいと思います。 さて、特別番組取材の中では2年前に大活躍した「あの選手」から現役選手へオンラインインタビューを実施しました。現役選手への熱

【アミンチュな日々】2年ぶりのセンバツ!

塚本京平です。 1月26日に高校野球・センバツ甲子園大会の出場校が決まり、滋賀県からは近江高校が出場することになりました。選考委員会の当日は学校まで取材に向かいましたが、緊張から一気に解放され、高らかに帽子を投げる選手たちの表情が印象的でした。 前回・2年前にセンバツへ出場した際は、山田陽翔選手(現・埼玉西武)を擁して全国準優勝。今年はサッカー部も全国準優勝を達成するなど周囲の期待は大きくなる一方ですが、まずは選手たちが落ち着いて力を発揮できる環境を整えてほしいと願っていま