マガジンのカバー画像

近江高校コラム

24
これまで書いてきた高校野球コラムのうち、近江高校に関係の深いものをまとめました。
運営しているクリエイター

#埼玉西武ライオンズ

「山田陽翔=びわ湖」。完成を待つ日本一の方程式/高校野球ハイライト番外編・近江

いつからだろう。スポーツを見るとき、心に予防線を張るようになったのは。 応援チームの優勝を願いながら、いつもどこかで「負けるんじゃないか」と思っている。スポーツが全てではない。負けても明日はやって来る。平静を保つための保険は必要だ。 「2018年を越える。記憶にも記録にも残る史上最強のチームになれる」。 夏前の取材。多賀章仁監督の宣言を100%で受け止めなかった自分がいる。滋賀大会を勝ち抜いたあとも、期待より不安が大きくなってきた。 確かに山田陽翔はスペシャルだ。ただ、ワン

雑草集団が春に咲かせる「一番」の花/高校野球ハイライト特別篇・近江

去年秋の県大会決勝。近江の主将を務める中村駿介の姿は、グラウンドではなくベンチにあった。スタメンを外れた原因はコンディション不良。 「確かに無理はさせられない。ただ、何かあれば主将でも出られないというのを全員が知ってほしい。危機感を芽生えさせるため、監督として本気度を示す必要はあった」。 4年ぶりに秋の県大会優勝を果たし、近畿大会もベスト8入り。2022年以来のセンバツ甲子園を射程圏に収めながら、多賀章仁監督の表情は明るくない。 失礼を承知で言えば、今季の近江には「順風満帆

【アミンチュな日々】山田陽翔選手のメッセージ

塚本京平です。高校野球の滋賀大会も中盤に入りました。去年は近江高校の山田陽翔選手が注目されましたが、今年も50チームによる素晴らしい戦いが繰り広げられています。 先日、埼玉西武ライオンズに入団した山田選手にオンラインでインタビューしました。プロ1年目は体力づくりを自身の大きなテーマとしているそうで、1軍登板は「2~3年後を目指す」と控えめな言葉。ただ、全ての高校球児へ「最後は3年生がチームを引っ張らないといけない。最後は悔いなく頑張ってほしい」と熱い言葉をいただきました。 滋

重圧と死闘を越え、横田悟がたどり着いた「5度目」の甲子園/高校野球ハイライト特別編・近江

「近江でまだ誰も成し遂げたことのない5季連続の甲子園。これを達成できる存在が横田だったんです」 多賀章仁監督の願いを一身に受け、近江の主将に就任した横田悟。しかし去年の秋、夢は彦根東に敗れて儚く消えた。 「早い段階で負けて、自分たちが弱いとわかった。これまでは先輩に優勝させてもらっていただけ」 横田が掲げたチームスローガンは「下克上」。あえてチャンピオンのプライドを捨て、一番下から這い上がる気持ちで厳しい冬を越えてきた。 それにしても、本当にしんどい役回りだったと思う。 先

『滋賀の泣き虫』林優樹が渡され、託したバトン/高校野球ハイライト番外編・近江

土田龍空のドラフトは取材ネタの宝庫だった。と言っても、ほとんどが指名会見後の囲みで聞いた話。 『3年後の1軍定着』だった目標が答える度に上がり続け、いつしか『トリプルスリー』になっていたこと。付けたい背番号に現役選手の数字を答え、訂正するかと思ったら「譲ってもらいましょう」と言いきったこと。 最も記憶に残っている話は、指名直後にかかってきた先輩からの祝福電話に「お先に行ってきます!」と返したということ。この先輩こそ、土田の1学年上にあたる林優樹だった。 魔球・チェンジアッ

大きな湖に育ててもらった…山田陽翔がドラフト翌日に語った感謝/高校野球ハイライト番外編・近江

2022年10月21日。プロ野球ドラフト会議の翌日に実施した、山田陽翔選手の単独インタビュー。放送で伝えきれなかった部分を含めてインタビューのほぼ全文を記していく。 塚本:埼玉西武から5位指名。待って待っての指名だった― 山田:うーん…他の選手が指名されていくのを見ながら1時間半ぐらい待っていたんですが、それ以上に長く感じたのが本音です。 塚本:指名された時の心境は― 山田:すごくホッとしたというか。自分がプロ野球選手になることによって両親にも恩返しができますし、学校にいる