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負け犬=大人になりたくない––櫻坂46『魂のLiar』

櫻坂版サイレントマジョリティー?

『魂のLiar』の歌い出しは、小池・小林、田村、藤吉……かな。であれば、小池・小林のWセンターだろうか。Buddies感謝祭の『僕のジレンマ』も小林センターで復活したし、全員曲で一期生がフロントに立つのはしっくりくる。また『もしかしたら真実』もサビはじまりの後の歌い出しが守屋、小池、小林……なので、5thシングルでは、フロントの一期生が文字通り先頭に立ちメンバーを率いている感が強い。『桜月』収録の楽曲がみどころとなる3rd TOUR 2023では、小池・小林に期待している。

道行く人に素通りされてるデジタルサイネージ
言いたいことはいっぱいあるのに そこで叫ぶだけで
客のいないステージ だから本音で歌えるってことだ
わかる奴だけに届けばいいなんて偉そうな俺のメッセージ

魂のLiar

人が溢れた交差点を
どこへ行く?(押し流され)
似たような服を着て
似たような表情で

サイレントマジョリティー

『魂のLiar』の主人公は、傍から見れば“黙ってればいいのになんか叫いてるイタイ奴”、厨二病のガキだ。サイネージを素通りするのは「似たような服」「似たような表情」の大人たち。主人公の「俺」もいつかかつての思いをどうにか処理して大人になっていくのだろう。そんな『サイレントマジョリティー』を彷彿とさせる世界観に、小林(とたぶん小池)が先頭に立ち、Rock You !を叫ぶ。
2023年は、言うなれば「有言実行」の年。2022年で「世界で通用するステージを」とぶち上げたからには、それを確信に変えていくことが、3rd TOURのミッションだ。

Loser, Loser 夢は捨てたか?

魂のliar

大人になりたくないよ

Cool

そんな大人は負け犬だ。『魂のLiar』の歌詞は、正直いってベタで野暮で時代錯誤的で好きになれなかった。でも、キャプテンが交代し、三期生を迎えた新生櫻坂の最初の一歩としてはこのぐらいわかりやすいほうがいいのかもしれない。『無念』も相当かっこ悪い曲だ。それでもなお、こんな歌詞を採用して歌わせる運営の真剣度をプラスに考えることにする。
所詮アイドルは消費されるコンテンツだ。新期生を迎えることは消費された分の補充の意味もある(結局Bishも消費され尽くしたということだろう)。でも、自分たちはどこまでも躓きの石となってやる。櫻坂でのとくにメッセージ性が強い楽曲群は、アイドルでありながら消費されることを拒む「NO」を突きつける。よくメンバーたちが口にする「一人でも多くの人に届けたい」は、楽曲で表現するとこうなる、のか?

全員曲が表現するもの

大人になるってのは丸くなるってことだろう?
真剣にぶつかってたって理解されはしない

摩擦係数

もう真実の僕なんか どうだっていいじゃないか?

Cool

日曜朝の情報バラエティ番組で自分のコメントが切り取られ、本意じゃない解釈がされることに不満を感じて降板したコメディアンがいたが、なんというか子供っぽいナイーブな発想だと思うし、そんなに間違えることがこわいのかと思う。一方、裏番組の炎上上等なコメディアンのほうは、自分の言葉が間違って伝わってしまうことを恐れてない。一方向に傾いた世情に対して、ちょっと引くぐらいに「Yesでいいのか?」を問いかける。粋(Cool)と野暮の対比でいえば、野暮の極みだけど、どっちがかっこいい大人だろうか? 大多数は粋(Cool)の方を選ぶのだろうが、櫻坂はどうしてもマイノリティ側にとどまる。粋(Cool)=大人になることに、「厄介な気持ち」を抱いてしまう。
大人たちに「大人たちに支配されるな」という歌を歌わされていると揶揄されてきた彼女たちだからこそ、楽曲を伝えることの困難さを実感してきた。このまま間違って伝わることを恐れて、口を噤んでしまうのか。

そう 黙るってのは敗北だ
言いたいことを言ってやれ

摩擦係数

櫻坂改名後、彼女たちの楽曲は一貫して「言いたいことを言ってやれ」を提示してきた。
例えばだけど、これまでの表題曲・カップリングの楽曲は、主に二期生をセンターとした大人数ユニット曲であり、グループのシンボル曲は全員曲にあるとすれば、一期生をフラッグシップにしたフォーメーションは櫻坂最大の「攻め」の体勢なのではと思う。乃木坂の32ndシングルも3期生をセンターに据え、期別のヒエラルキーがわかるようなフォーメーションとなった。櫻坂も同様に考えてもいいと思う。日向坂は……9thはさておき、次のシングルでそれが問われることになる(でも一期生がリードする感じにはならないだろう)。
その上で画期的だったのは「W-KEYAKI FES.2022」の初日で、けやき坂/日向坂の『NO WAR in the future』を選曲していたことだ。ライブで盛り上がる曲だからというのはあるけど、菅井のMCのとおり、世界の情勢に対しての思いも込められている。アイドルが願う平和なんてただの綺麗事かもしれない。でも『魂のLiar』『無念』と並べると、彼女たちのリアルがあり、彼女たちだからこその思いが込められていることがわかる。そして『NO WAR in the future』も全員でのパフォーマンスだった。


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