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アイドルが誕生する瞬間——櫻坂46 三期生「おもてなし会」

三期生たちの心に宿る、欅坂の「僕」

櫻坂三期生おもてなし会視聴。圧倒的な『BAN』を披露した三期生たちが、一人ひとり想いを語るのを聞きながら、菅井の言葉を思い出す。

思い返すと、みんなそれぞれ人生を変えたいなと思ってオーディションを受けた子が多いんじゃないかなって、欅坂には特に多いのかなと思っています。
先輩とか、いろんな方々のおかげで応援してくださる方もたくさん増えてきて、でもそのたびに自分たち、まだまだ越えなきゃいけないなとか、なにか普通のグループじゃないのかなということをどんどん気づきはじめて、それに悩んだりとか苦しい時期もたくさんあったんですけど、でも、どんなときも支えてくれるみなさんやメンバーがいたからみんなで乗り越えてこれたのかなと思っています。何より、欅坂の素敵な楽曲とか歌詞にいろんなことを教えてもらったなって思っています。私たちだからこそできる世界があるのかなって、だんだんとそんな欅坂のことを誇りに思うようになって、どんなに醜くても苦しくても、でも、自分たちらしくいていいんだって教えてくれたのは、この欅坂でした。

欅坂46 THE LAST LIVE

オーディションを受けた子たちすべてがこの言葉を聞いていたはずはないが、舞台に上がった11人は多分もうそれを知っている。
3坂続けて開催されたオーディションで選ばれた乃木坂5期はさすがにタレント揃いだなと思う。日向坂4期は体育会系の新入部員という感じ(宮田・影山は卒業後勝ち組のイメージがあるが、一枚岩のグループと齟齬をきたした感もある)。そして櫻坂は……やはりどこかアンバランスな子が選ばれたのだろう。
東京ドーム観戦後からのスパルタ合宿は、アイドルグループとして、同期生として最低限のバランスをとることと、それでもなお「私たちは私たちらしく」という櫻坂の核を叩き込む作業だった。ドキュメンタリーで初めてみる彼女たちの姿は、なぜか過去を想起させる。エンディング曲は『五月雨よ』だったけど、こんな曲も似合う。

ある日僕のまわりには
同じ目をしたみんながいた
生きることに不器用な仲間
一緒に歩いていこう

W-KEYAKIZAKAの詩

三期生って、一期生の生まれ変わりなんじゃないだろうか。
欅坂のデビュー当初から追いかけてたメンバーがいるかたわら、改名したことを知らなかったり、おそらくオーディションを受けるまでアイドルになる選択肢すら考えなかったメンバーもいる。何者かになりたい、ではなく、何かを変えたいと思って応募してきた子が多かったんじゃないだろうか。実際の彼女たちの姿はわからないけど、キャラ設定としても三期生は一期生にダブる。

アイドルが誕生する瞬間

そして、ライブパート。直前に2人の情報が解禁され、ドキュメンタリーも更新され、唐突に村井・山下が注目された。TAKAHIRO先生が一目で村井・山下のダンスの特性を見抜くシーンは鳥肌ものだし、谷口の最終兵器発言、それを受けての『Nobody's fault』『五月雨よ』は、ここで伏線回収してくるかみたいな感動すらあった。『夏の近道』MVからパフォーマンススキルは垣間見ることはできたが、『Nobody's fault』のWow前に村井が2回転入れてきたところは決意の表れだろう。続く『五月雨よ』はダンスより、センター山下の歌声を聴かせるための抜擢だったのではと思う。好みもあるけど、彼女は声がいい。配信を通してだけど、ライブパートでの彼女の存在感は頭ひとつ抜けていたのではないだろうか。
中嶋がメインMCと『Buddies』センターを務めたのは意表をつかれたけど、これは、まだ私たちが知らないパーソナリティや関係性があるということを教えてくれる。これから彼女たちを見る楽しみが増えるキャスティングだった。年少組の的野・向井はとくに表情がコロコロ変わって、だいぶ印象が変わった感じがする。

そして『夏の近道』。ただの少女からアイドルへと飛躍する過程を描いたMVは、本当に「今」しか撮れない瞬間を切り取ったもう一つのドキュメンタリーだ。本人たちのVlog、7本+1のドキュメンタリー、MVすべてがつながっていて、一人ひとりの少女がアイドルになる過程を辿っていく。
醒めた目でみれば、結局そういう感動の物語を仕立ててるだけじゃないかということもわかる。ドキュメンタリーはすべてを見せてるわけでないし、すべてが真実でもないことも知っている。実際に、村井がダンスリーダーの一人だったことは隠されていたし、中嶋がメインMCを任されるようなタイプにも見えなかった(また、チアリーディングをやっててY字バランスができることとかも!)。それでも見入ってしまうのは、櫻坂46になることを選んだ彼女たちの決意は真実であることがわかるからだ。

ライブでの振り付けは、かなりひんぱんにポジションが入れ替わり、全員がそれぞれに見せ場があるようになっていて楽しい。多分、この楽曲は2サビ後の間奏がトップになるような構成になっていて、MVでもタイトルが表示される一番のポイントになっているが、ライブでは2サビの全員ダンスのあと、メンバーの掛け声とともに村井・山下のWソロダンスが繰り広げられ、この日のクライマックスを迎える。まさにその時、欅坂を知るまでアイドルなんぞまったく興味がなかった私だが、はじめてアイドルが誕生する瞬間を目の当たりにしたような気がしたのだった(2日目なので、正確には前日に誕生してるんだが)。
この瞬間こそ、彼女たちが櫻坂46のメンバーになれた瞬間といってもいい。
『五月雨よ』でも感情が高まってきて、WowWowへとつながっていくところがあり、これは言葉にできないぐらい高まってる感情の表出だが、『夏の近道』でも三期生全員の感情の高まりを、村井・山下の言葉を超えたダンスに結晶させている。

なので、ドキュメンタリーの『BAN』と、今日観た『BAN』の最大の違いは、アイドル以前/アイドル以後の差となって表れる。技術的な向上はもちろんだけど、内面はたぶん0と100ほど違っていたのではと思う。
『櫻坂の詩』は、ツアーで一期〜三期全員で歌える曲になるかな。楽しみ。


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