[澤田和夫] 聖書で祈る:聖霊のご降臨

澤田和夫神父の『聖書で祈る』より、「聖霊のご降臨」。

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聖霊降臨の大祝日にあたって、教会はヨハネによる聖福音第14章(23−31)を読みます。それは、最後の晩さんのあとのイエズスさまのおことばです。

  そのとき、イエズスさまは、こうおっしゃいました。「わたしをほんとうにだいじに思う人は、わたしのことばを守ります。

主イエズスの教えを忠実に守るということ、特に、その愛のおきてを忠実に守るということは、やさしいことではない。むずかしいときにも守りとおす。その原動力となるのは、主イエズスへの愛である。イエズスをだいじに思えばこそ、またひとがんばりと、前向きに進むことができるのです。

  そしてわたしの父もその人をほんとうにだいじになさって、わたしたちはその人のところに行って、その人のもとに住まうのです。わたしをだいじにしない人は、わたしのことばを守りません。ところで、みんなが聞いていることばは、わたしのことばではなく、わたしをおつかわしになったかたのことばです。」

こうしてイエズスと愛をもって結ばれた人は、御父とも愛のつながりで結ばれます。主イエズスと御父とご一体だからです。

この愛のつながりができると、神は、人のうちに「住まう」のです。神はどこにでもいらっしゃる。主イエズスはご聖体の秘跡をもって聖堂にいらっしゃる。それとはちがったしかたで人のうちに「住まう」のです。神が人のうちに「住まいたもう」。なんとすばらしいことでしょう。住まいたもうゆえに人の心のうちには神の正しさ、神の輝きがいっぱいにみなぎる。人は神からの光と力を受けて、これに答えていく信仰と愛の生命をもつようになります。このことを人は成聖の恩恵とか、せいちょう(聖寵)という。

イエズスさまはまたつづけて次のようにおっしゃいました。

  「これらのことは、みんなといっしょにいたあいだに話しておきました。だが、守護する者、御父がわたしの名においておくる聖霊は、あなたがたに、すべてを教え、わたしの話したことを、ことごとく思いおこさせます。」

聖霊は「守護する者」としてわたしたちにおくられます。「弁護者」といわれることもあるが裁判所で被告人のために働く弁護士のようなものではない。むしろ母親のように子どもをかばう聖霊なのです。聖霊は「すべてを教える」。この聖霊の御働きを軽視してはならない。「われこそ聖霊にみちびかれて」と、思いあがってはならないが、他方、聖霊の御働きに無関心であってはならない。

「どこへ行こう」といわれて「どこへ行ったらいいのかわからない」。そういう現代人の中にあってわたしたちも、静かに、聖霊の御みちびきを祈り求めたい。

聖霊は、主イエズスの教えをことごとく思いおこさせる。主のみ教えを、日常忘れがちなわたしたちは、「思いおこさせ」てもらう必要がある。世界の教会もバチカン会議を開いて、「思いおこさせる聖霊」にみちびかれている。われわれも日常つねづね、主のみ教えを、日毎の生活に具体的にあてはめるように、思いおこさせてもらう必要がある。

  「わたしは平安を、あなたがたに残して行きます。わたしの平安をあなたがたにさずけます。世間が与えるように与えるのではありません。心をさわがせ、おそれるのをやめなさい。『わたしは去って行くが、またみなのところへ帰ってくる。』こういったのを、みなは聞きました。みんなが、ほんとうに、わたしをだいじにしているのなら、わたしが父のもとに行くのを喜ぶにちがいありません。御父は、わたしよりも『大』なのですから。実際にそうなったときに、みんなが信じるように、わたしはこうしてまえもって話しておきます。みんなといっしょに話をするのは、もうこれだけです。この世の君が来るからです。かれはわたしに対してなにもできないのですが、わたしが御父をほんとうにだいじにしていること、そして父がわたしにお命じになったようにわたしが行うということを、世が知らなくてはならないのです。」

十字架のはりつけの前日、当然心さわぐべきとき、キリストさま、あなたがでしたちに残すことばは平和のことばなのです。

「心をさわがせ、おそれるのをやめなさい。」これはなにかにつけ、心をさわがせがちなわたしたちに対しても、おっしゃってくださることばです。キリストは去ってしまわれそうに思うとき、イエズスさまが見失われてしまいそうに思うとき、「心をさわがせ、おそれてはなりません。」

主イエズスは父なる神とご一体でありながら、人となってこの地上においでになりました。
それは御父への全き従順をつくすためでした。ーーー十字架の秘義がそこにある。

十字架を見つめて祈りなさい。そこからならうことは多い。御父をほんとうにだいじにするということをも、そこでこそならうのです。どういう理屈でか。いや、それは理屈ぬきの秘義です。
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(沢田和夫著『聖書で祈る』P.29-34 ユニヴァーサル文庫)

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