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記憶を辿って

海は常にその思考に蓋をしている。形を変える入口はあるものの、快く受け入れられはしない予感と私を追い返すような意思に怯んでしまう。 12月、海に入った。冬の夜の海、どこまでも漆黒で巨大な蠢きに惹かれた。足の指先から脛骨に這い上がるような温もりと引力に導かれる。徐々に身体を馴染ませていくと自分がどこへ向かっているのか、どこからどこまでが身体なのかがあやふやになった。海は全てが共同体で、底知れぬ寛容さが心地良い。 かつて私は水の中で呼吸していた。母の生命に食い込みながらこの身体は形

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