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Weekly Pick Up! 2021.11.18

1. Applied VRのEaseVRxが慢性腰痛治療用システムとしてFDAのDeNovo承認を取得

VRを活用したデジタル治療薬 (Digital Therapeutics;DTx) を推進する代表的な企業Applied VRが開発する慢性腰痛治療用のVRシステム:EaseVRxFDAのDe Novo認可を取得しました。

本システムは、VRヘッドセットとコントローラ、呼吸増幅器により構成されています。認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy ; CBT)に基づいた56種類のVRセッションを8週間の治療プログラムの中で実施することで慢性疼痛の緩和に効果を示すことを臨床試験で示しました。従来、慢性疼痛の治療にはオピオイド鎮痛薬を使うことが一般的ですが、それに変わる新たな治療手段となります。

DTxとしては、糖尿病治療用のBlueStar(welldoc)や薬物依存症治療用のreSET(Pear Therapeutics)、ADHD治療用ゲームEndeavorRx (Akili Interactive Labs)などがすでにFDAに認可を受けていますが、VRシステムを活用した事例は今回が初めてになります。

同社では、慢性腰痛に続き、術後疼痛の治療システム(Relie VRx)や不安障害の治療システム(Anxiety VRx)も開発しています。これらも実用化されるのか要注目です。

また、VRシステムは教育COVID-19患者のリハビリなどに用いる事例が報告されており、今後もさまざまな用途への適用が期待できそうです。

2. Pfizerが新型コロナウイルス感染症の経口薬”パクスロビド(Paxlovid)”の緊急使用許可をFDAに申請

新型コロナウイルス感染症の経口薬としては、10月に申請されたMerck社の”モルヌピラビル (Molnupiravir)”に続く2例目の使用許可申請になります。

治験の結果、発症後3日以内に本薬を投与された場合に入院と死亡のリスクが89%減少することが示されています。また、パクスロビドの全世界への供給に向け、「医薬品特許プール(MPP)」と契約を結んだことも発表されています。

3. デジタルツールは社会経済的地位 (SES) の低い人の運動を改善しないという研究結果が発表

ウェアラブルデバイスやモバイルアプリの普及に伴い、デジタル技術を活用した行動変容が広く活用されています。特にSES (Socioeconomic Status)の低い人に対してこの技術は有用であると考えられていましたが、その効果は明らかになっていませんでした。

そこで、過去20年の研究成果からメタアナリシスを実施し、SESに違いによるデジタル技術の効果の差を評価した研究結果がInternational Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity に発表されました。その結果、SESが高い人に対しては行動変容の効果があった(SMD=0.34)のに対して、SESが低い人に対しては効果がない(SMD=0.06)ことが明らかになりました。

これは、一般的に考えられていたSESの差による健康の不平等化をデジタル化が改善するという見解とは相反する結果であり、健康格差を拡大させている可能性が高いことを示しています。


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