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第一話(ANTI.HERO)




「そこの現金輸送車、止まれ。」
菅原伊礼は同期の石橋海音と、現金輸送車を
襲ったヒーローの追跡をする。途中で仲間と
合流すると先輩でリーダーの倉島紫音が、
無線で言う

「今日はお前ら2人の初任務だ、うまくやれよ。」
無線から聞こえる、何やら嬉しそうな声、伊礼と海音の二人はわかっていた。

絶対に失敗はできないと。
倉島紫音が乗ったトラックは、
後ろに下がっていく。

現金輸送車は高速道路へ入っていく、
ETCのバーを破壊しノンストップで突き進んでいく。その後ろを追いかける伊礼と海音のトラック
「さてと、海音、ちょっと運転を頼む。」
「わかった、気をつけろよ。」
運転席の後ろにあるドアを開け、中へ入ると2人の整備士とサポートのAIロボットがこちらを見る。
「パワードスーツを遣うなら、いつでもいいですよ。」
白いツナギを着た若い整備士、

三体のパワードスーツが置かれているのを確認する伊礼。

「これは見たことない。」
「そうだろ、この三体は自社で開発したパワードスーツだからだよ。」
もう一人の整備士が伊礼に話しかけてくる。
白いツナギではなく、オレンジのツナギを着ている。

名前は山さん、整備歴三十年のベテランで、
若い整備士から尊敬されている。
もちろん、伊礼と海音も尊敬している。
「山さん、パワードスーツ使ってもいいですか。」
「あぁ、それじゃ、赤のパワート゚スーツを使いなさい。」

山さんが指を指す、赤を基調したパワート゚スーツ、赤のメタリックボディを触る伊礼
「わかりました」

赤のパワート゚スーツの前に立つと、パズルのピースをはめるように装着する。
「いいか、このパワート゚スーツは、パワート゚とスピードはある、だが、弱点もある。」
「弱点?」
「あぁ、パワーとスピードを上げた分、装甲が脆い。だから短期で決めろ、いいな?」
その言葉にうなずく伊礼、

「ウィンドサイドを開けろ。」ゆっくりと開くと、勢いよくジャンプすると
ローラスケートの様に走り出す。
「なんだ。おい、あれみろよ」
現金輸送車の助手席から、身を乗り出し後ろを見ると、現金輸送車に乗っているヒーローも後ろ見る。
「おいやばいぞ、どうするんだよ。」
音を操るヒーローのボイスが、運転するアンドロイドの首を強く締めると、アンドロイドの右の裏拳が顔面にクリーンヒット、ボイスが仰向けに倒れる。
「仕方ねえ、俺が行くかぁ、なぁスライサー。」
助手席に座るスライサー、

現金輸送車襲撃を
始め世間を混乱させている、グリフォンのリーダーである。「あぁ、頼んだぞ。アスファルス。」
車の間をすり抜けて走行、すると目の前に現金輸送車が見えてくると。
「おっと、ここまでだ、ここから先は行かせねえよ。」

突如、アスファルトの壁が現れ、次々と車がぶつかり炎上、車を捨て逃げる人々、辺りは地獄絵図と化す。

「お前は何者だ。」
アスファルトの壁から姿を現わす。灰色のスーツを着た長身の男が、ニャッと不気味に笑う。
「俺の名前はアスファルス、リーダーの命令で
お前を足止めさせてもらう。悪く思うなよ。」
「そこをどけ、下っ端の雑魚がぁ。」

叫んだ後一瞬でアスファルスは伊礼の前に現れると、腹に足蹴り勢いよく吹っ飛び、車にぶつかる伊礼。
「あ、ぁぁぁぁ、こいつ下っ端の雑魚じゃねえのかよ。油断したぜ。」
「下っ端の雑魚?グリフォンのメンバーに雑魚はいねえよ。」
伊礼はゆっくりと立ち上がるとファイティングポーズを取る。
「グリフォンのメンバーかぁ、どおりで違うわけだぁ。なら手加減はしねえ。」
「それはこっちのセリフですよ。それにあなたは確か、あのレジェンドヒーローの、」
「それ以上言うな、それ以上言うんじゃねーーーーーー。」
右手を相手に向け小型のミサイルを発射、
アスファルスに被弾、爆風と燃えさかる車の
ガソリンの匂いが辺り一面を包み込む。
「やったか?」右手をゆっくり下に降ろした瞬間
ドロドロのアスファルトの手が、伊礼のパワート゚スーツを掴む、
「ふう、危ねえ、危ねえ、もう少しでやられるところだった。残念だったなぁ。」
「くそ、離せ、離せ、こらぁ。」
不思議そうに伊礼を見るアスファルス、
「そんなパワート゚スーツを捨てろよ。お前強いのに、もったいねえ、うっ、なんだ、あっ、あ……」
伊礼を掴んでいた手を離すアスファルス。
仰向けに倒れた伊礼は立ち上がると、後ろを振り返るとライフルを構えた海音が立っていた。
「大丈夫か?伊礼」「あぁ、大丈夫だぁ。」
フラフラする伊礼、それを支える海音、その目の前では、酷くもがき苦しむアスファルスの姿がある。
「お前、俺に何をした。ぐわぁぁぁ。」
「まだ試作品だが効果は抜群だなぁ。、おい、こるれを早くアイツに取り付けろ。」
太ももにぶら下げている、銀の縄を伊礼に投げる
「おいこれはなんだ。縄か?」
伊礼は銀の縄を持って、もがき苦しむアスファルスに近づくと、銀の縄がアスファルスに飛びつくと、蛇の様に絡みつく。
「くそ、なんだこれは、くそ。」
自社で開発した対ヒーローの秘密兵器が功を奏し、アスファルスを捕獲、もし秘密兵器がなかったらと思うと、背筋がゾッとした。
アスファルスを車の後ろに入れようと、海音が
持ち上げようとした時、サイレンの音が聞こえてくる。パトカー数台が止まるとサイレンが止まり
警察官がゾロゾロと車から出てくるが、その中で
金髪で長身、黒いスーツを着た男が伊礼と海音のところへ歩いてくる。
「ずいぶん派手にやってくれたなぁ。ん?菅原?菅原伊礼じゃないか?」
なんだぁ。ガルシアじゃないかぁ。久しぶりだなぁ。元気だったかぁ。」
金髪の男の名前は伊藤・ガルシア、政府がヒーローに対抗するために設立した組織earthSHIELDの
エージェントであり、中学校の同級生でもある。
ガルシアとはよく2人で遊んでいた、悪いこともよく一緒にやっていた。そんな伊礼とガルシアは
別々の道を歩み今二人は、human.defense.
agencyの社員と、もう一人はearth.SHIELDのエージェント
「なぁ伊礼、こいつ誰だ?」海音は言う
「はじめまして私は政府の組織、earthSHIELDのエージェントで名前は伊藤・ガルシアです。どうぞよろしく」
海音に名刺を渡すと、じっとその名刺を見る。
伊藤・ガルシアはポケットからタバコを取り出すと、口でタバコを一本咥えると、ライターで火をつける。
「話が変わるが、そいつをこちらに引き渡してもらおうか。」
フゥーーーーとタバコの煙を吐くと、後ろに待機していた警察官が前に出てきた。
その手には特殊な銃と警棒を握っている
いつでも合図をすれば、攻撃できるように、
その様子に伊礼と海音は身構える。
「ガルシア、これはどういう意味だ。」
吸っていたタバコを捨てると、足でもみ消す。
「そのまんまの意味だよ、そいつを渡せ。」
無表情の伊藤・ガルシア
「渡さなかったら、どうするつもりなんだ。」
「無理にでも、奪うだけだ。」
パチパチパチと手を叩きながら、白髪の男と黒の長い髪の女秘書が警察官達の後ろにいた。
「気になって来てみれば、先を越されていたとは、君にはがっかりしたよ。ガルシアくん」
ガルシアと警察官が振り返るとびっくり、すぐに
警察官が道を開け、その道を歩く白髪の男と黒い髪の女秘書、ガルシアは頭を下げていた。
「アリーシア所長、申し訳ございません。」
アリーシアの隣に立つ女秘書が、伊礼を凝視
何かに気づいたらしく、アリーシア所長に耳打ちすると、アリーシアは気づいた顔をして
「君はあの有名な、レジェンドヒーローの息子らしいが、それはホントなのかい?」
その言葉に大声で反応する伊礼。
「それ以上言うなぁ、それ以上言うと、誰であろうと殺す。」
右腕をアリーシア所長に向けると「やめろ、伊礼」海音が右腕を下に降ろさせると、パワート゚スーツの両肩を両手で掴み、静かに話しかける。
「伊礼、落ち着け。いいか、悔しいがこっちには分が悪すぎる。」「お前は何を言って。」
海音は伊礼の前に出ると、「あの、いいですか?
コイツをあなた達に渡すので、それでいいですよね?」
アスファルスの足を引きずって、ガルシア・アリーシア所長の前に置く。ジタバタと暴れるアスファルス、手のひらを2回叩くとボーッとしていた
警察官達が、ジタバタ暴れるアスファルスを担いて、パトカーのトランクに放り込む。
「伊礼、俺が責任を取る。お前は何も悪くない、何も」
苦虫を噛み潰した顔をする海音、その顔を見た伊礼は我に帰ると、海音の肩に手を置くと「海音もういいよ、俺も一緒に怒られてやるから、なぁもうそいつを渡したからいいだろ?おっさん」
おっさんと言う言葉に激しく怒る、女秘書。
「あなた、アリーシア様になんて暴言を、今すぐ撤回しなさい。」
「別にかまわないよ、最後に君の名前を教えてくれないか。」少し間を置いて「菅原伊礼」
ニコッとすると、止めている車の方へ身体を向けると、「菅原伊礼、また近いうちにどこかへ会おう。帰るぞ。」アリーシア所長の鶴の一声で、一斉に警官達がパトカーに乗る中、伊藤・ガルシアは
伊礼・海音と対峙していた。
「伊礼、お前なんで、ヒーローをやらないんだ。」
無言のまま伊藤・ガルシアを睨む菅原伊礼。
「おい、ガルシアやめろ。」
ガルシアは顔を近づけて言う「俺は小学生の頃、お前の父親に生命を救われた。あのレジェンド・ヒーローに、あの日から俺はヒーローになりたかった、けど現実は非情さぁ、俺はただの人間だからヒーローになることはできない。それに比べてお前はヒーローの息子、それを知った時の俺はお前が羨ましかった、今でもそれは変わらない。なぁ伊礼、その能力無駄にするなよ。まぁ、俺が言うことじゃないけど、それじゃあなぁ。」
アリーシア所長と女秘書が乗っている車に乗り込み、走り去っていく。
伊礼・海音は暫くその場で立ちつくしていると、
海音の持っているスマホが鳴る。
ズボンに入っているスマホを取り出し、通話ボタンを押し、耳にあてると、怒鳴り声が
「伊礼・海音、今なにしてるの?早く戻ってきて。社長がカンカンに怒ってるの?何したのあなた達。」
イザベル染谷・祐子係長は倉島の上司で
頭の切れる人でもあり、人望もあるが伊礼と海音は苦手なタイプの人間。その理由は入社してすぐの出来事。「あなたって、あのヒーローの息子なんでしょ?」
休憩所でコーヒーを飲んでいると、話しかけてきた、イザベル染谷・祐子。
無神経な発言にイラッとしたが、無言のままコーヒーを飲み終え、紙コップを握り潰し、ゴミ箱に放り投げる。
「だとしたら、なんですか?」
ぶっきらぼうに言う伊礼、
「もったいないわねえ、ヒーローの力を使わないなんて。」またかぁ、いつもの質問に溜め息が出る。よく聞かれるのがヒーローの息子ですか?
なんでヒーローの息子がヒーロー活動をしないのか?この2つの質問をよくされる。
その2つを言ってきたのがこのイザベル染谷・祐子を伊礼は嫌いだった。
急いで会社に戻っている途中、トラックの窓から
景色を眺めていると、大きな爆発音が聞こえるが
眠気に突如襲われ、寝てしまう。
30分後、human.defense.agencyの駐車場に
到着すると、眠っている伊礼の肩を揺する。「起きろ、着いたぞ。」眠い目を擦りながらトラックを降りる伊礼は欠伸をしながら、海音と共に会社の玄関へ入っていくと会社の事務員、警備員がおじぎをしている横を通り過ぎて、エレベーターに乗る
社長室がある十階に着くと、エスカレーターの扉が開くと、社長秘書の平野・キャサリンが立っていた。「お待ちしておりました、どうぞこちらへ。」
秘書に案内され社長室の前へ、秘書がドアをノックする。「お二人を連れてきました。」「中へ入りなさい。」
社長室へ入ると、社長の相田・源三郎とイザベル染谷・祐子、そしてリーダーの倉島紫音と数人の隊員がいた。
「失礼します。」社長室に入ると、全員の視線が伊礼と海音に向けられる「ようやく来たか、それでは話をしようか。倉島紫音、君は今日の任務は2人でやらせたのは本当なのか?」
「そ、それは」社長は続けざまに、他の隊員にも
話を振っていくが誰一人、本当のことを話さない。一連のやりとりを見ていた女秘書が、手元に持っている資料をパラパラと見ながら喋りだす。
「本来、初任務では絶対にやらせない任務を彼らはやらせました。これは重大な違反です。我々の会社の名誉を著しく傷つける行為です。」
そう言い切ると、倉島と隊員達を睨みつける。
下を向く倉島と隊員達。
「それでは、ゆっくりと話を聞こうか?」
伊礼と海音は社長室から出ると、社長室から怒号が聞こえるが振り返らず、エレベーターへと歩いて乗ろうとするが、「階段で降りよう。」海音が言うと、伊礼はしぶしぶ階段を降り始める。
コツコツと音をたてながら、
腑に落ちなかった伊礼は何故にあんなことをしたのか、後日社長秘書に聞いてみると「あの男、あなた達2人が気に入らなかったから、あんなことしたみたい。」
呆れた口調で言う社長秘書、
その馬鹿げた理由に何も言えなかった、
いや言いたくなかった。
あっという間に十階から一階まで降りると
急いでロッカールームへ足早へ向かい、部屋に入ると、すぐに私服へ着替える
「この後どうする?まだ家に帰るのは早いだろ、なぁ、いい店あるから行こうぜ。」
ニヤニヤしながら話す海音、付き合いは長くないが、こういう時は面倒くさいと決まっていたが、今日は家に帰りたくない気分になっていた伊礼は
「あぁ、そうだなぁ、行くかぁ。」
伊礼と海音はロッカールームを出ると廊下を歩いて、玄関を通過し外に出ると、駐車場に停めているバイクに乗ると、右手に持ったヘルメットを被る伊礼。海音もヘルメットを被ると先にバイクを発進、その後ろを伊礼のバイクが走りだす。

その一方で、高速道路を走る黒塗りの高級ベンツに乗っている所長のアリーシア・秘書の女・伊藤・ガルシア、高級ベンツの前後を守るパトカー数台に高速道路を走る一般車は、何かを察知し
て距離を取っている。
アリーシア所長は顎をさすりながら「ガルシアくん。あの子とは友達かね?親しげに話していたが。」「親しげには……」言葉を濁す伊藤・ガルシア
「あなたはearth.SHIELDを背負って立つほどの優秀な男、だからこそあの手術を施した。この意味わかっていますよね?」
女秘書の言葉の圧力に一瞬たじろぐ。
プルルル・プルルルと設置してある電話を取ると
「所長、早く、早く逃げてください。うぁぁぁぁぁ。」叫び声と共に電話が切れると同時に、後ろから爆発音が聞こえてきた。
「あれは何だ、まさか。」
窓から顔を出し、後ろを見ると何者かが
3人が乗るベンツに向かって飛んでくる。
ベンツを守るパトカーの1台が止まると、
トランクからRPGを取り出すと、弾を入れ
向かってくる何者かに向かって発射、他のパトカー数台も、RPGやサブマシンガンで応戦するが
「なんでこんな奴らを相手にしなきゃならねんだよ。」発射した弾が空中に浮かぶ。手を振りかざすと、弾が槍のごとく飛んでいくとパトカーは蜂の巣、警察官全員に被弾するとその場に倒れ込み死亡する。
RPGの弾は反対側の車線の車に直撃、そして爆発車は炎上する。
窓を閉めると真剣な顔をする伊藤・ガルシア
「アリーシア所長、あれを使わせてください、このままじゃ。」
女秘書はジェラルミンケースを後ろから出し、目の前で開けると、赤と黒が入り混じったメタルアーマー「これを腕につけなさい。」渡されたのは
メタルアーマーを制御する時計をであり、どこにいてもこの装置があれば、勝手にアーマーが飛んでくるらしいが、今はそれより俺にこのアーマーが使いこなせるのか、それだけが心配だった。
その不安を感じ取ったアリーシア所長が「お前なら使いこなせる、自分を信じなさい。」そう言って
ガルシアの肩に手を置く、
その言葉に頷くと車体の上が開く、よじ登るとゆっくり立ち上がる。強い風でセットした髪とスーツが乱れる。できればアーマーを使わずに終わらせたい。平和的に解決できればの話だか手汗が止まらない。手汗をスーツで拭いてポケットにしまっていた鋼鉄のグローブを両手にはめると、数メートル先に青いマントに青いマスクの男が現れる。
「お前は捕まったヒーローのお仲間かな?」
薄ら笑いを浮かべると、勢いよく伊藤・ガルシアへ突っ込んでくるのをギリギリのラインでかわす。「なんだよお前、ただの人間じゃねえのかよ。面倒くさいなぁ、」「誰だお前は?」
腕組みする青いマントの男は、高笑いすると
「俺の名はウィンド・ミルズ、死にたくなければ、仲間を返してもらおうか。」
白い歯をみせて挑発するウィンド・ミルズに伊藤・ガルシアは戦闘態勢をとる「断る、それに都合がいい。ノコノコとそっちから来てくれたんだからなぁ、捕まえる手間が省ける。」
その言葉に顔がひきつるウィンド・ミルズ、
「アァァ頭にきたぜ、ぶっ殺してやる。」怒りと同時に風の渦が起きると、その渦が数秒で巨大な竜巻になり伊藤・ガルシアを飲み込み移動していく。数分後巨大な竜巻は、無人の野球ドームで止まると伊藤・ガルシアは数十メートルから下に落下するが、空中で体勢を整えグランドに着地、空を見上げるとウィンド・ミルズがゆっくりと下に降りてグランドに立つ。
「ここなら、遠慮なく戦える。いくぞ」
息を吸い息を吐くと、爆発音と共に伊藤・ガルシアの身体に被弾すると激痛が走る。何だ、何が起きた。まさか、今吐いた息が身体に被弾した?
ちらっと見るとスーツに大きな穴が空いていた。
スーツの中に装着していた軽量のプロテクターが
粉々に破壊されていた。腹の部分も
嘘だろ、像が踏んでも10トントラックが轢いても壊れない最新のプロテクターがいとも簡単に
急に余裕がなくなった、足が震えていた。
ガタガタと震える足を押さえ、この状況を打破するために、頭をフル回転させる。
スーツの裏には対ヒーロー用の武器を常備
伸縮自在の棍棒、800万ボルトの改造スタンガン、相手の動きを封じるハバネロスプレー、後は発煙弾と対ヒーロー用の特殊サバイバルナイフ
さぁ、今ある武器で、どうやってコイツを倒す。
間合いを取りながら、再び頭をフル回転させていると、ウィンド・ミルズは「ちっ、なんだよコイツ、さっきの攻撃で死なないのかよ。でも次で楽にしてやるよ。」そう言うとウィンド・ミルズは息を吸い始めると「やらせるかよ。」
スーツの裏から改造スタンガンを取り出すと
ダッシュで間合いを詰め、改造スタンガンを胸に強く押し付ける。
「うぁぁぁぁぁぁぁ、キサマァ、小賢しいマネを。」800万ボルトの改造スタンガンの威力は
効果は絶大、ウィンド・ミルズは一瞬ふらっとよろめき、左膝を地面につく。
「効いたのか?今の。」
後ろに3歩下がると、突然左腕に痛みが走る。
プロテクターを黄色い矢が貫通、矢を引き抜こうと触るが、電流か走る。
「くそ、ぁぁぁっ」
矢を無理やり引き抜くと、右足にも矢が突き刺さるが、すぐに右足の矢を抜く。
スタンガンのダメージが残っていた、
ウィンド・ミルズはゆっくりて立ちあがり、伊藤・ガルシアの元へ歩く、左右にフラフラしながら「油断した、この俺がこんな人間に、てこずるだと、この俺が……この俺がーーーーーー。」
獣に似た雄叫びをあげると、小さな風の渦が
ウィンド・ミルズの周りに現れると、巨大なサイクロンへと急激に成長、野球ドームの屋根を破壊
サイクロンが接近「嘘だろ、おいおい。」
伊藤・ガルシアは逃げるが、サイクロンは徐々に追い詰められていく。
「逃げろ、逃げろ、ほら。」
ニヤニヤしながら、ウィンド・ミルズは高見の見物、このままではやられる。もうこれを使うしかないのか。腕につけた腕時計の装置を見つめる、
もう使わない選択はなかった。ボタンを押すが
「おい、ボタンを押したけどまだ来ないぞ。」
通信機で話しかけると、女秘書が「今飛んでいったわ、あと3分で到着するから、耐えて」
あと3分が、長く感じたのはおそらく、あとにも先にもこの時しかなかった。そんなことより
まずいことになった、1つだった
サイクロンが3つになり、伊藤・ガルシアは野球ドームの隅へ追い詰められる。「終わりだぁ、死ね。」
伊藤・ガルシアはサイクロンの中へ消えていくと
そのままサイクロンは観客席に突っ込み、数分後サイクロンはととて消えていく。
「手こずらせやがって、まぁいいか。」
ジャンプし、空を飛ぼうとした瞬間
「どこへ行く、まだ終わっていないぞ。」
声のする上空を見ると、伊藤・ガルシアが立っていた。赤と黒のメタリックスーツを身に纏っていた。「な、なんだと、そんなバカな、俺のサイクロンを喰らったはずなのに、ピンピンしてやがる。」
今度はこっちの番だ、いくぞ。上空から急降下するとウィンド・ミルズにタックル、左右に連続パンチを当て回し蹴り、勢いよく地面にぶつかる。
地面に降りると、ゆっくり歩き、倒れているウィンド・ミルズの襟元を掴むと、
「その手を離してくれないか?」
上空から謎の男が現れる。半分黒半分赤のコート
半分黒、半分赤の頭髪、半分黒、半分赤の顔
その異質な姿に掴んだ手を離した。
ウィンド・ミルズは謎の男をじっと見る
「マ、マグネ・テイラー様。」
驚いた顔をするウィンド・ミルズをノールックで
「お前のような無能な部下を持つと、大変なんだよ。それとお前にお土産だぁ。」上空から鉄の塊が
落ちてくる。それを見たウィンド・ミルズは絶叫「嘘だ、嘘だ、うっあっあぁ………」それは一瞬の
出来事だった。太い鉄骨がウィンド・ミルズの腹を貫き、そのまま観客席まで飛んでいくと刺さって止まる。口から血を吐きながら、鉄骨を抜こうともがき苦しむ。「お前何してんだよ。」無表情で
「使えない奴は、我が組織には必要ない。使えない奴は粛清するだけだ。」その言葉の意味は、鉄の塊と鉄筋に串刺しになった、ウィンド・ミルズを
見てわかった。コイツに嘘も冗談も通用しない、
血も涙もない奴だと。さっきの奴とは雰囲気が
違う、迂闊に攻撃したらやられるともう一人の自分が言っている。「しかし最近のヒーローは人間ごときにやられる奴ばかりで情けない。話が変わるが、おまえはただの人間じゃないよなぁ。」
「お前には関係ない。」きっぱり言うと、何かを考え込むマグネ・テイラー、何かを思いつくと
「お前、名前は?」突然名前を聞かれ困惑する
伊藤・ガルシア「ガルシア、伊藤・ガルシア」
ここで名前を言わなかったら、殺されると思ったからすぐに名前を言う。「伊藤・ガルシア、我々の組織に入らないか?」突然のスカウトに、一瞬戸惑うが、「断わる。」即答する伊藤・ガルシアに呆れながらも、「君はヒーローに憧れたことはないのかな?俺のところに来る人間はみんなヒーローになりたがるけど、珍しいねえ。」「俺の憧れるヒーローはただ1人だけだ。」マグネ・テイラーを睨みつける伊藤・ガルシア
「たった1人、もしかしてあいつか?」
顔が歪み始めるマグネ・テイラー、何かに触れたのか、次第にイライラをつのらせていく。
一触即発の雰囲気を察して、一歩後ろに下がる。
マグネ・テイラーの周りに、見えない何かが発せられていた。コイツさっきの奴より何倍もヤバい奴じゃねえか。野球ドームがバキバキと音をたて
始め、鉄骨が下に落ちる。
「さぁ、かかってこい。ガルシアくん、試してやる。」先手必勝、ダッシュで加速し、その勢いのまま、右ミドルキックを放つが、かるくいなす。
そこから右と左の連続パンチとフックも避ける。
「どうした。もう終わりかぁ。」
右腕を真っ直ぐにし、標準を定め小型ミサイルを
発射、ミサイルは真っ直ぐに向かうが、手のひらをかざすと、ミサイルは二手に分かれ、そのまま
観客席に被弾し爆発する。
「嘘だろ、なんで当たらない。」
唖然とした顔で、マグネ・テイラーを見ていると
強い力に引っ張られ捕まる、伊藤・ガルシア
「なんだこれは、くそ。」
ジタバタと暴れて抜け出そうとするが、抜け出せない、見かけによらず強い力で締め付けるマグネ・テイラー。
「所詮、人間の力なんてこの程度。我々ヒーローの前では虫けら同然。」手を離すと後ろに吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。ヒーロー?その言葉に
違和感を感じていた。こいつがヒーロー?
ゆっくりと立ち上がりながら、心のなかは
苛立っていた。ヒーローの欠片もない奴が
ヒーロー?ふざけるなよ。ふざけるなよ。
殴りかかるも、避けられ腹に足蹴り、「あっ、あぁぁぁぁぁ」動かなくなる
「つまらないなぁ、お前も、少しはできると思っていたのに残念だぁ。」
手のひらを軽くメタリックボディに当てると、
もの凄いスピードで観客席に激突する。
砂埃が中に舞う。瓦礫の中に埋もれる伊藤・ガルシア、立ちあがろうにも、瓦礫が邪魔で立ち上がれない、ゆっくりと歩いて近づいてくる、マグネ・テイラーは笑いながら








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