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俺をモブキャラと呼ぶな・第6話・謎の行商人

ジムとチェイスは無言のまま屋上から降り、ドアを開け中へ入る。廊下を歩いて4階から3階へ降りていく。

さっきいた囚人もそうだが、俺達を捕まえようとした隊員達も姿を消えていた。
あれだけ躍起になっていたはずなのに、一体どこへ
いったんだ?

2階へ降りようとした時、部屋を出てくるライアンとブリンダ「ジム、こっちに来い」
チェイスは無理矢理、腕を引っ張り近くの開いていた部屋に隠れる。ドアの隙間から覗き込むと、ライアンとブリンダは何やらブツブツと独り言を話していた。

「おい、どうなってんだ?」
激しく動揺するライアンにブリンダは
両腕を強く握り。
「落ち着けよライアン、なぁライアン」
ほっぺたを軽く叩くと正気に戻る。
ハッとしてブリンダをみると、
「すまねえブリンダ、ん?誰か来る」

階段の方を見る、コツコツコツコツと
階段を上がる音が響き渡る。
「誰か来る、気をつけろ」
戦闘態勢に入るライアンに「さっきのアイツラなのか」とライアンの後ろで、ファイティング・ポーズを取るブリンダ。

ゆっくりと姿をを現したのは、白い頭と白い髭に、デカイバックパックを背負った行商人の老人。
ライアンとブリンダは身体の力を抜き、老人に近づくとブリンダは顔を近づけ、「あんだ爺かよ、脅かしやがって」老人は奇麗に整った髭を触りながら、2人を観察している

「おい爺、ちょっと聞いてもいいか?」
「なんじゃ?」
上から爺を見下ろし、生ゴミのような息を吐きながら、
「ここは一体どこなんだ?」
「なんじゃ、あんたら別の世界から来たのか?ここはDead.CITYじゃよ」

Dead..…city……その言葉にライアンとブリンダは 
固まる。
「おい爺さん。噓だろ。冗談はよせよ」
「ライアン、Dead.cityってまさか?ゾンビが徘徊する世界だよな、噓だろ」
2人は戸惑いを隠せない、自分たちは望まない
世界に来たことに愕然とする。

「それより爺さん、2人のガキを見なかったか?」
「2人のガキ、わしは知らんよ」
そう言うと、ちらっとジムとチェイスがいる方へ目を向ける。

爺さんと一瞬目があったチェイスは目をそらす。
「どうした。チェイス」
チェイスは胸に手を当て「目があった」
ドキドキする胸に手を当て、再び隙間から
見る。

ライアンの後ろにいたブリンダは、爺の腰に装着している刀に興味を持ち、しゃしゃり出ると
「おい爺、その刀を俺によこせ」

刀を奪おうと腰に手を伸ばした瞬間、爺の右手は手首を掴み足を引っ掛け、勢いそのまま階段下に落とす。

「うぁぁぁぁぁ…」
階段を転げ落ちていく、全身を強打、その拍子で頭を強く打ち気絶する。
「ブリンダ、大丈夫かぁ。おい、クソ爺」

ライアンは両手で爺の肩を掴むと動きが止まる。
「くそ、この爺がぁ」口から血が流れる。
爺の左手に装着された巨大ナイフが、ライアンの腹を突き刺す。

ゆっくりと巨大ナイフを抜くと、腹から大量の血が吹き出す、フラフラと階段の方へ歩くと、足を滑らせ転げ落ち、ブリンダの上に落ちる。

「おい、ライアン、ライアン」
ブリンダは話しかけるが反応はない。
懸命に話しかけるブリンダとライアンを
確認すると、壁に設置してある火災報知器のボタンをグーパンチで押す。

ジリリリリリリリリリリリリリ
刑務所に耳をすんざく機械音が響き渡る。
その音に寝ていたゾンビや、徘徊していたゾンビが
音のする方へ向かってくる。

ゾンビがこちらへ向かってくることに気づき、
抜け出そう藻掻くが、岩のように重くなったライアンはびくともしない。
そうしている間にも、ゾンビは数十人の集団と化し
ブリンダの階層に辿り着くと、ヨタヨタと歩く。

「来るなぁ、こっちに来るなぁ。うわぁぁぁ」
1人、2人、3人、4人と、ゾンビ達はライアンと
ブリンダに覆いかぶさると、肉を貪り食う。
そこから、までの数分の断末魔が聞えるが、ピタッと聞こえなくなる。

「死んだか…」爺は階段下を覗き込む。
一心不乱に貪り食うゾンビを確認すると、
火災報知器を止める。音が鳴り止むとジムとチェイスのいる方へ目を向けると、「もう大丈夫だから、出てきなさい」

ゆっくりとドアを開けると、ジムとチェイスは恐る恐る外に出る。
「あ……ありがとうございます…」
その場で直立不動になる。ジムとチェイスに
ふふふと笑い、「そんなかしこまらなくていい、こっちに来なさい」

爺が手招きすると、2人は爺の側に近づく
「わしの名前はバロン、しがない行商人をしている」髭を触りながら言う。
「俺はジムといいます。隣にいるのが幼馴染のチェイス」2人は軽くお辞儀をする。

2人は自己紹介すると、「あのバロンさん、あの囚人2人は……」ジムがそう聞くと「あ……アイツラならゾンビに食われて死んだよ」階段の方へ歩いて立ち止まると下を覗くチェイス、数人のゾンビが肉を貪り食うり、その周りをゾンビが囲っていた。

「あ…あぁぁぁぁ」
その光景に裏声を出して尻もちをつく。
ガタガタと身体が震える。
「おい、どうしたチェイス」
「し、下を見てみろよ…」
指を指す方向を覗き込むジムは固まり
言葉を失う。

「噓だろ……」呆然と立ち尽くしていると、
「お二人さん、君達も別の世界から来たのかい?」
バロンは2人を尻目に、背中に背負っているバッグパックを床に降ろすと、布を広げ武器を1つ1つ置いていく。 

「バロンさん、何をしてるのですか?」
ジムは後ろを振り返ると、床に置いてる武器一覧を
品定めする。チェイスは立ち上がり、汚れたズボンの尻を叩くと

「おいジム、まさか…武器を買うつもりじゃあないだろうな?」
手に取った武器を床に戻すジムは、溜息をつくと
「分かってるよ。金なんて持ってないし」
「お金がない?お金ならあるじゃろ、ポケットを調べてみなさい」

ジムはズボンのポケットを調べると、見たことない
電子機器を見つける。
「これはなんだ?いつの間に」
ジムから電子機器を奪い取り弄りだすチェイス。
お金ってこれのことかいバロン?画面を見せて頷くと、ジムにも見せる。

画面には1000ジルと表示されている。
これがお金?ジムは疑いの目で画面をジッと見ていると、バロンは武器を買うように促す。  
「もし今、武器を持っているなら今すぐ捨てて、新しい武器を買いなさい。」

2人は顔を見合わせ、バロンを見る。
「武器を捨てる?本気ですか?」
「なんで武器を捨てなきゃいけないんだよ」
2人はバロンに文句を言うが、話を続ける。

「君たちはモブキャラだよね?」
バロンは険しい顔をする。モブキャラ……その言葉に
ジムはイラっとするが冷静になり「はい、僕たち2人はモブキャラですが」

「いいか?これから言うのは大事な話だから、ちゃんと話を聞きなさい。君たちは多分、ここだけじゃなく、他の世界へも行くだろう。だが、君たちには1つだけ大きなハンデがある。

「ハンデ?」
「それってなんですか?」

「モブキャラということだよ。いわゆる凡人てやつだ。」

モブキャラ……凡人……
大体は何かしらがあるのだが、それがない
ジムとチェイスはショックを受けるが、さらに
「2人は特別なスキルや、攻撃力、守備力、瞬発力もない。なに1つとしつしたものがない。」

ジムとチェイスは肩を落とす。確かにそうだ分かっていた、そんなことは。
自分はただの平凡なモブキャラだってことは、
だからこそ、思いっきりて行動をしたのに、
「でも安心せえ、そんな2人に1つだけ、他の誰にも負けないスキルがある。」

バロンがそう言うと、2人はジッとこちらを見る。
「なんですか?そのスキルは?」
「早く教えてください。」
早く教えろとせがむと、「教えてやらん。自分達で気付くことじゃあなぁ」
そう言うとバロンは豪快に笑った。







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