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俺をモブキャラと呼ぶな・第五話(ワープゲート)

黃髪はカイの話を黙って聞いていたが
「青髪、コイツは嘘をつけない性格だから言ってることは本当だと思うが?」
襟元を離すと「そうだなぁ、その話が本当ならなぁ、まだ俺は信じてはないが」

「青髪、大変だぁ」「どうした。赤髪」
耳元でヒソヒソと話す赤髪、その話を聞いていた
青髪の表情が変わると舌打ちをして、

「おいお前ら、帰るぞ」

指をパチンと鳴らすと、大きな黒い穴が現れる。
ジムとチェイスが驚く
「あれはワープゲート?」
「あいつらは自由にワープゲートを発生できるのか?」

数十の部下達が、ジムとチェイスを取り囲む。
「足止め、頼んだぞ」
カイは青髪と一緒にワープゲートへ向かう、青髪も
その後ろをついて来る。カイは途中で立ち止まる
と。

「ジム・チェイス、頼んだぞ」
振り返らず大きな声でカイは叫ぶ。
そう言うと、青髪・カイ・赤髪はワープゲートへ
消えていく。

「おい、待て!カイ」
前を遮る部下達を倒すが、ワープゲートが
消えたのを確認すると、部下達もワープゲートで
消えていく。

「くそ……アイツ」
ワープゲートが消えた場所で立ち尽くすジム
後ろから歩いてくるチェイスが肩を叩く

「落ち込むのは後にしろ、今はワープゲートを
探すのが先だろ?行くぞ、ほら」

チェイスが、落ち込むジムの手を引っ張って体育館を出ると、大広間と表示されている場所へ廊下を走ること数分、大広間へ出ると吹き抜けで明るい日差しが入ってくる、

上の階へと続く階段が目に入る、登ろうと足を乗せた時、刑務所が激しく揺れる。
「なんだ……この揺れは」

揺れが収まるとチェイスは階段を登る。
2階に上がるとチェイスは窓を開け、空を見上げると黒い渦のワープゲートが刑務所を飲み込もうとしていた。チェイスは首を突っ込めると

「ジム、ワープゲートはこの刑務所を飲み込もうとしてる」
「なんだって、噓だろ」

ジムは急いで階段を上がろうとした、
その時、左右と真ん中の扉から入ってくる。ラッキーシティの特殊部隊、パイン・ラッツェルの隊員達

「よし、次はここを捜索しろ。」
隊員達をかき分け前に出る隊長のグラーノは
タバコをふかしながら指示をする。

「ジム、早くこっちに来い」
チェイスは早く上に来るよう促す。
ジムは2階へ駆け上がる、ジムの後ろ姿を
1人の隊員が気付く。

「隊長、上に誰かいます」
その言葉に隊長と隊員達が、一斉にこちらを見る
「まずい、ジム行くぞ」
チェイスとジムは階段を急いで駆け上がる。
「捕まえろ、逃がすなぁ」
グラーノの命令で階段を登っていく隊員達、

チェイスは手招きする
「こっちだ、早く来い」
チェイスが3階、ジムが2階へ上がる途中、
隊員の1人が銃を撃とうとするが、
「銃は撃つな、生け捕りにしろ」

インカムで隊員達に伝えるグラーノ。
生け捕りは隊員達に任せて、自分は部下が持ってきた椅子に座り、グラスに入れたブランデーを飲む。
「とっとと、終わらせて帰るぞ」

階段を上がりながら下をみる
「くそ、なんなんだよ。あいつら」
「アイツラが呼んだのか、こうなることを予想して」

息を上げながら、ジムはチェイスに追いつく、
3階に到着すると、自販機の横にある、観葉植物や
チェアや用具入れのロッカーを下に投げつける。

一瞬隊員達が怯んだ隙を見て、4階へ駆け上がる。
「なんだここは?」「ここ、やばくないか?」
2人が立ち尽くす目の前に、厳重な扉が現れる
扉にはレベル3と表示されてる。

「レベル3....…ここはマズイ」チェイスの顔は曇る。
ジムもチェイスの顔を見て、何かヤバイことなのかと一瞬で察する。
後ろから、隊員達が階段をあがってくる音が聞こえてくる。

「おいチェイス、どうしたんだ?」
ジムの言葉で我に変えると、扉を横にスライドして
開けるとジムとチェイスは中へ入ると、内側から閉める。

左右は狭い牢屋、ジムとチェイスは警戒しながら
通路を歩いていると、数メートル先の牢屋が開くと
2人の囚人がこちらへ歩いてくると立ち止まり、

「おい、そこのお前」
「どこへ行くんだい、へっ、へっ、へっ」
長身のライアンと低身長のブリンダがとうせんぼをして、腕を組みこちらを睨む。

「おい、そこをどけ」
一歩前に出るライアンは上から見下ろし
「どかなかったら?」
ジムの先制攻撃でマジック・アームが顔に直撃、
「なんだ?この攻撃は」

マジック・アームを掴むと、思いっきり
後ろへぶん投げる。
床へ倒れると「あ、ぁぁぁぁぁ」痛みにうめき声をあげるジム

「ジム!大丈夫かぁ、てめぇよくもやりやがったなぁ」
雷属性の警棒を右手に、無限銃を左手に持つチェイスを鼻で笑うブリンダ。
「そんなチンケな武器で、俺等とやりあえると思ってんのか?あぁ」

ブリンダが距離を縮めていく、チェイスも攻撃する
隙を狙っているが、隙を見せないブリンダに焦りを覚える。
その時、2度目の揺れが始まる。最初は揺れが弱かったが、徐々に強くなっていく。

ライアンとブリンダが注意が地震によって削がれる
それを見逃さなかったチェイスは警棒で2人を攻撃
すると、雷属性で痺れて動けなくなる。
「なんだ…」「痺れて動けねぇ」

その隙にジムに駆け寄る。
「大丈夫かぁ、ジム」
「あぁ、なんとかなぁ」
ジムの肩を掴んで立ち上がると

「おいお前ら、そこを動くなぁ」
厳重な扉の向こうで、隊員達が銃を構えていた。
「君達、そこのドアを開けなさい。今すぐに」
「嫌だと言ったら?」

刑務所が更に強く揺れる、さっきよりも更に強く。
「チェイス、時間は今何時だ?」
左腕につけた腕時計は午前12時44分を示す、ワープゲート発生まであと1分、黒い渦が刑務所を飲み込んで消える。

どのくらい時間が経っただろうか?
ジムとチェイスは目を覚まし、起き上がる
周りを見渡すと、あの囚人2人がいないことに気付く

「アイツラ、どこへ行った。」
ジムが囚人を搜そうと、扉の方へ歩こうとする。
チェイスがジムを止める。
「ジム、あんな奴らはほっといて、屋上へ行こう」
「チェイス、屋上に行く道はどっちだ?」

チェイスはジムを扉の前に誘導すると、2人で扉を開け外に出ると、自販機と鑑賞植物の間に屋上へ続く非常口を発見すると、駆け寄ってドアノブをガチャガチャと動かすが、閉まっていて開かない。

「くそ、鍵が閉まっていて開かない。」
「ちょっといいか?」
ジムがチェイスを退かすと鍵穴を覗き込み、ハリガネを入れてカチャカチャと数分いじる、ドアノブを回すとドアが開く。

「ジム、いつからそんな特技を身につけたんだ」
「ナ・イ・ショだよ。」口に立てた指を当てるジム
首を傾げながら非常口の外に出ると、階段をあがる
ジムとチェイス。

階段を登り切り、屋上に到着、ゆっくり金網のフェンスへ歩いていくと、見たことのない風景が飛び込んでくる。

「これは一体…」ジムは言葉を失う、隣のチェイスも
言葉を失っていた。
「どうなってんだ……まさか?ワープゲートで別の世界に来たってことか。」
ジムはクスッと笑い
「そうだなぁ。ここはラッキーシティじゃないことはわかる。」

街が火の海、その中を逃げる人々、その人々を襲う化け物の群れ。アチラコチラで聞こえる阿鼻叫喚と地獄絵図に、身体の震えが止まらない,

武者震いではなく、
恐怖から来るものにジムとチェイスはわかっていたが、暫くの間、その恐怖から流れるため、遠くを眺めていた。





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