おじさんが去って静寂が訪れる

カフェでおじさんにからまれた。
僕も十分おじさんだがそれよりももっとおじさん的なおじさんにからまれた。

面倒臭いおじさんに絡まれた時の対処法は「嵐が過ぎ去るのをただ待つ」それに尽きる。

黒のつなぎに黒のハンチング。入ってきたおじさんはカフェの空気を一変させた。まずは最初に自分がこの店に入ってきた動機の説明から。
マスターはじめ、その他のお客さんに聞こえる声でこの店がいかに素晴らしくて、魅力的かを大声で語り始めた。

「店を構えてずっと続けているのはスゴい」とお店とマスターへの賛辞が始まった。
「それに比べてオレの人生はどうしようもない」と自分の卑下もセットだ。

ひととおり賛辞と卑下が終わったあと、今度は社会情勢、街の今後を語り始めた。
彼の言いたいことも間違ってはいないが、そんなことは誰でも知っていることだ。
「君はどう思うよ?」と僕に聞いてきたが、適当にはぐらかした。
「そうっすね〜〜」しか返す言葉がない。

こういうやたら他人と語りたがるおじさんは、人の話なんかきいちゃあいないし、話したところで何も生まれない。時間の無駄である。

注文していた酒を飲み終わったそのおじさんは夜の街に消えていった。
台風一過とはまさにこのことで、また静寂の時間が訪れた。
マスターが言うには忘れたころにやってくる人らしい。

今回の台風の特徴
・やたら褒める
・声が大きい
・自虐的
・社会情勢に対しては攻撃的
以上。

「何も語らなきゃあんたも素敵なのに」

僕の感想はそれだけである。

ありがとうございます。有意義なことに使います。