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辻に立つ─歩むは心か足か─

─祓い給い
   浄め給いて
     鎮まり給うは
       いつの世も変わらぬ心─
「ひとの感情は止められぬ」
聴こえてきた声にふと立ち止まると
そこは辻であった。
「あなたの声ですか。あなたは…?」
その問いに、辻に立つものは言った。
「私はいつもここにいて、気付いたものへ
問うている。幼い子どもや若い娘、年老いたものに私は問うてきた。
ここは、道。ここは、辻。
行き先を選ぶことができるが、辻に立つ私を
見ていない、知らなかったこととして
これまでと同じに歩むもよしとするならば、
お前はどうするか。」
こちらを見やりそのものは、更に続ける。
「…まるで祭りのようだった。泣き出すもの、
怒りだすもの、無邪気に選ぶもの、中でも
泣いていたものや怒りだしたものは、心を
掻き乱されていたようだった。それを見て
これは、祭りだ。感情の起こりは……
…人の祭りだと思った。
あぁ、私は黙って見ていた。ずっと。
ひとしきり、掻き乱されたあとは、ふっと
穏やかな表情を浮かべ、皆、様々な方向へ
歩いて行った。」
辻に立つものは、まるで懐かしい友を
思い出しているかのようだった。


辻に立つものの少し先には、道の先を
指し示すものがいた。
あまり話すことはなく、道の先で迷ったものに
道を指し示すのだそうだ。
「あのものは…」
と、問うと辻に立つものは、首を振り
静かに言った。
「あれは、そのようなものだ。迷ったものに
のみ見える。すると、あなたは何かを迷って
いるのかな?」
急にこちらに向いてきた問いに、驚きを
隠そうとするが、ふと答えた。
「…そうかもしれない。私に見えたという
ことは、つまりはそういうことなんだろう。」
そう答えた私に、辻に立つものは笑って
問うてきた。
「あなたは、どうされるか?」
その問いに私は……。


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