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しかがみさま 第一章 第一夜
第一夜 ハゲ猿
2024年 9月10日
「野球ってある意味運ゲーやろ?」
ベラベラベラベラ阿呆みたいなこと抜かすこのハゲ坊主は一応親友としてやってるハズだが、野球が運ゲーなんて今どき“バズり”に命をかけてるJKでも言わないだろうその言葉にはカチンと来ざるを得なかった。
折角の昼休み。窓から射し込む柔らかな日光が憎らしい。生徒のスマホの持ち込みが発覚したらしく、連帯責任とか何とか言って、クラス全体が昼休み外遊び禁止だとか。ビール腹で無駄に縦にも横にもデカい先生が、顔を真っ赤にして授業を自習にしてまで怒鳴り込んでいた。
「ええなー!俺も一発カキーンって打ってみたいわ!」
「はぁ?明楽お前馬鹿か。野球が運ゲーならお前でもホームラン打てるっての。俺は技術でキャプテンやってんだよ」
「は?馬鹿ちゃうし!カミケンだっていっつも見た夢の話ばっかで阿呆ちゃうんか?!」
カミケン、とは俺のあだ名である。神代健太、略してカミケン。強引に略し過ぎだとは思う。普通に健太で良いだろ。まぁうちのクラスには健太が3人も居るからしょうがないっちゃしょうがないけど。
「バーカ!俺は滅茶苦茶詳細に夢の話覚えてられんだぜ。ハゲ明楽に出来るかよ」
ハゲ、明楽への煽りによく使われる。明楽は真っ赤になって反論するから、集まってくる野次馬からも「お、ハゲ明楽がハゲ猿になってら」なんて明楽のノリが良く無かったらいじめとして集会が開かれそうな事をゲラゲラと笑われながら言われている。猿とは言い得て妙な程似合ってしまうから思わず俺も笑ってしまう。
「ハゲてねぇっての!じゃあ野球馬鹿カミケンの今日の夢の話聞かせてみろよ!覚えてられんなら“今”教えてみろ!」
ほら、すぐ真っ赤になってトマトみたいだ。熟れて熟れて破裂しそう。そんな事を頭の片隅に考えながら彼の言うように今日の夢を思い浮かべる。
あぁ、そういえば明楽みたいな顔の奴も居た。夢って見た事あるモノしか出ないらしいが、今日のは随分変な夢だった。売り言葉に買い言葉。明楽の小学生みたいな喧嘩腰に、思わずこちらも啖呵を切った。
「やってやんよハゲ!」
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