豚汁のハードルは高くて低いクロイツベルグ

ドイツにまた冬がやってきた!

朝起きたらいきなり雪が降っていた、というか積もっていて、キッチンが窓と床からじんわりと寒く、腕の外側や腰のあたりに冷気を感じる。こうなると朝ごはんに「フルーツヨーグルト」というわけにもいかなくなってくる。

コーヒーを淹れて、マグカップを片手にソファーでぼーっとしながら、「あ、豚汁食べたい」と思いつく。

お椀の中から豚肉と少し崩れかかったジャガイモが顔を出す豚汁が出す湯気をコーヒーが出す湯気を見ながら連想する。ああ、豚汁食べたい。

ところでうちの近所は豚肉を買うのが至難の技である。なんせ、ベルリンきってのトルコ街、またはヒップスターが住む地域。豚肉もしくはお肉はハラムなので、お肉屋さんでも買うことが難しい。ましてや薄切りの豚肉の細切れなんて絶対にお目にかかれない。豚汁用に豚肉を買うのは結構ハードルが高い。

近所で一番大きなチェーン店のスーパーでとんかつ用の様なブロック肉が売っている。これを買ってこっそりとバッグに忍ばせて、今度はトルコ系のスーパーをはしごして材料を揃える。

一方、味噌は結構買える。うちの近所はビオ(有機食材の店)がたくさんあるし、最近アジア食材ブームだから、高いのから安いのまで、信州味噌から韓国製のものまで手に入る。お値段も3ユーロ、500円くらい。実はこんにゃくも買えるんだけど、こんにゃくはしらたきで、しかも結構高いので買ったことがない。その代わり、小さい厚揚げのような油揚げが売っているのでこれを買う。

豚肉のブロック肉は骨が付いていて、これを避けながら、もしくは力技で折って小さくカットしていく。ジャガイモ、油揚げ、人参を適当に入れて煮込む。結構、それっぽい豚汁が出来上がる。

灰色の空気と出来たての豚汁とそこかれ出る湯気は本当に似合う。熱々のうちに食べる。いい「ほ」が出る。出来たても美味しいけど、少し時間が経った後の野菜が崩れてスープと一体化している豚汁もまた良し。ドイツには豚汁がないので、たまたま誰か来た時に出してあげると「こ、これはなんなのだ?」ということになる。豚汁ですよ。日本人は魚と野菜しか食べないと思っている様で、豚肉とお味噌汁が一緒になっているとびっくりされる。

冬のベルリンは風が強い。東京の方がもっと風が強いけど、やっぱり強いは強い。私が家の中で豚汁を作って食べているなんて、きっとベルリンに住んでいる人は全く想像しないだろうしどうでもいいことかもしれないけれど、豚汁は結構、ベルリンに合うし、私はそれを家の中でこっそりと考えている。


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