金言209;ヘアピンカーブ

自動車教習所の練習コースにはS字コースがあります。このコースでは、速度調節とハンドル操作を練習します。特にMT車の場合は断続クラッチで微速前進となります。クラッチを切ったりつないだりして速度を調節しながら同時にハンドルを操作してオーバーハングのコース(路肩がボンネットに隠れて見えません)を走るのですから、慣れが必要です。いままで、公道でS字カーブを経験したことはありませんが、教習所のコースにないヘアピンカーブは御殿場、箱根や日光などにあります。このカーブはAT車なら単純にカーブに入る前に十分減速して、少しずつアクセルを踏んでいけばいいので簡単かもしれません。

ヘアピンカーブで感動したのは、富士スピードウェイで観戦した四輪車の耐久レースでした。岡の上から見ていると、レース車がヘアピンカーブで止まっているように見えます。実際にはかなりの速度でカーブを通過しているはずです。時速300KMから急激な減速、マシンには過酷な操作が1周ごとに繰り返されます。ポルシェ全盛の頃の話ですが、レース序盤では、日本車は軽快に走りますが、中盤を過ぎると1周まわってくるたびにエンジンの音が変わってくるマシンが増えました。結局、頑丈でマシントラブルの少ないポルシェの常勝でした。

ビジネス界にもヘアピンカーブがあります。メインスタンド前の直線をトップギアで駆け抜けることができるのは、スタート時だけかもしれません。第1コーナーで追いつかれ、ヘアピンでは遅れを取り戻そうとして減速のタイミングを失しコースアウトしてしまうリスクがあります。ローリスクを選んでヘアピンカーブに進入すると、後続車に抜かれてしまいます。高速走行仕様の車は低速走行が続くとエンジンがオーバーヒートします。相手の動きに惑わされず各コーナーで的確なエンジン回転数を選びコース取りをしてマシンの負担を軽減して耐久レースで完走を目指します。ピットインで劣化した部品を交換し路面に合わせてタイヤを選び燃料を補給し、ドライバーを交替させます。耐久レースは一人では戦えません。

耐久レースは会社経営そのものです。ドライバー=CEOまたはCOOがいくら優秀でもクルーやマシンがとろいと完走も危うくなります。クルーとマシンのレベルがライバルと見劣りしない位まともなら、勝敗はドライバーの技量と運次第です。事業には、いたるところにヘアピンカーブが待っています。減速しないで突っ込んでコースアウトしたり、減速しすぎて後続車に追い抜かれたりというリスクを回避する経営判断と瞬時の意思決定が都度要求されます。ピットインして必要な整備をしないと1周ごとにマシンは壊れるリスクが高まります。1周のタイムを競うのは期末決算でいくら儲けたかということであり、耐久レースで完走するには経営基盤を年々強固にして倒産リスクを減らす仕組みが必要です。

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