金言351:北京五輪まもなく開催です

2008年に続き、新年早々また北京で商業五輪の興行が始まります。2008年の聖火台への最終ランナーはロス五輪で活躍したアスリートでした。1984年のロス五輪が、最初にオリンピックの商業化に成功した大会といわれました。あの時の組織委員長は、P.ユベロス氏でした。この人は九州とハワイ間のチャーター便の成功で財をなす基礎をつくりました。人気ピーク時には、次の大統領候補になるにちがいないといわれました。80年代に、ドイツのスポーツメーカーは、五輪商業化の手腕に期待して、アメリカ市場の建て直しをこの人に期待しました。当時、このドイツ人の会社の日本人社員として働いていた某氏によると、ドイツ人幹部は、このアメリカ人ビジネスマンを操り人形といっていたそうです。ロス五輪の商業化の裏には、米国大企業の影の部分が見え隠れしていたのかもしれません。

派手なスポーツイベントを見るたびに、スポンサー料を湯水のように使う広告代理店の体質を思い出してしまいます。スポーツイベントでは、メディアに放映権を切り売りし、また競技場施設や選手自身そしてメディアが触るものすべてに肖像権や独占権がからみます。さらには、1業種1社の独占的なスポンサー権を巡り、多額の現金が動きます。その資金の一部がイベントプロデュース屋さんに流れます。受注したイベント屋さん、すなわち大手広告代理店は、特別チーム(法人化した事業集団)を組織し、大会本会場敷地内に特設事務所(工事現場の建設事務所みたいなもの)をつくります。そこに、各スポーツ団体・協会・スポンサー企業から出向してきた専門家が集まり、大会開催に向けていろいろな活動をしていきます。この経費は、スポンサーが負担します。

イベント屋さんは、予算を節約したら、次のイベントの受注活動にマイナスになりますので、獲得した予算は全部使いきって派手なパフォーマンスをします。ある世界大会では、一流ホテルで開催された打ち上げで、イベント屋さんがスポンサー企業の幹部を招待し、出席者全員に三越百貨店謹製の特注純銀製メダルをお土産に用意しました。出席者は高価な記念品をもらって喜んだと思いますが、このプレゼントの原資は出席者の企業が払ったスポンサー料です。自腹でタクシーに乗るときは金額が気になりますが、会社払いだと負担を感じない勤め人が多いと思います。

昔は、そのような感覚で、イベント関係者がそれぞれ獲得した予算を使っていました。スポンサー企業は払った宣伝費を、自社商品の拡販で取り戻します。多額のスポンサー料の一部は、イベント主催者の活動資金となり、その資金の一部でイベント屋さんは本領発揮し、スポンサー企業の主力商品が売れていきます。大会運営資金が集まらないマイナーイベントでは、主催者が手弁当で苦労しますが、グローバルで人気のあるイベントには、豊富な資金が集まります。そしてこの資金は基本的に、その都度使い切りです。

この夏、コロナ感染拡大中の東京2020も例外ではありませんでした。コロナ不景気なのに夢のような話ですが、イベント屋さんが湯水にようにカネを使う構図は、昔と変わっていないような気がしました。信じられないほどの弁当廃棄とか、五輪貴族とかコロナ禍で業界内の公然の秘密が公開されてしまいましたが、興行関係者は集めたカネをどう使うか、部外者には関わり合いのないことと心得ています。

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