金言189:やり直す

ドラマの話です。
経営幹部にとって不都合な事実を内部告発した従業員に対して、所属長が解雇処分を伝えました。その後、当の経営幹部が内部告発者と和解し、解雇を取り消し復職させました。内部告発者は上司を誤解していたことを認め、この経営幹部は、お互いやり直そうといって、復職させました。

某外資企業の話です。
日本支社長の領収書改ざんに疑問を感じた経理担当者が顧問税理士に相談しました。税理士の見解は、「経営者が、不正経理操作により業務円滑のために支出する機密費を捻出しているとしたら、親会社は不適切な経理処理の告発を控えるだろう」ということでした。税理士は、経理担当が疑問をもっていることを日本支社長に伝えました。日本支社長は、この従業員を解雇せず冷遇するにとどめました。その後、懐柔策をとりました。「やりなおそう」といって、日本支社長はこの従業員と握手をしました。

従業員の反応。
テレビドラマの従業員が復職に何を思ったかはわかりません。某外資企業の従業員は、上司が握手を求めてきたことに更なる不信を感じました。懐柔策であることに気がついていましたので、内部告発の情報収集をやめようとは考えませんでした。

やり直す。
自分を告発した者と和解し、信頼関係を再構築することは可能でしょうか。
内部告発者は告発した相手の不正を受け入れて、不信感を克服できるでしょうか。「覆水盆に返らず」といいます。告発内容が事実誤認に基づくものであり、当事者が誠実で常識的な感性の持ち主であれば、傷ついた信頼関係は回復可能と想像されます。しかしながら、誠実で常識的な感性の持ち主の経営者に対して内部告発するような従業員、または誠実で常識的な感性を持つ従業員に告発されるような経営者が、相互の信頼関係を大切にするとは思えません。まして、和解して信頼関係を再構築してやり直すということは現実的ではありません。紳士的な合意(落としどころ)としては、一定の距離をおき、相互の利害に抵触しない範囲で共存する(やり直す)こと。

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