金言264:勝っても兵を語らず

野球、バレーボール、サッカーなど、監督がイニシアティブを握る団体競技で、監督が「勝ちにいく」と試合前にコメントするのをたびたび耳にします。試合が始まり、試合前の期待を裏切り、勝ちが遠のくと、選手は「ゲームを楽しむ」「完全燃焼」に課題を読替えます。

商売の世界では、受注競争に負けたり、案件が赤字になったりすると、営業選手には、長時間の反省や総括のためのデスクワークが課せられます。詳細な経過説明や、市場や競合他社の動向が分析され、現場の責任者が責めを負い、次は勝てそうな施策が検討されます。営業マンが記録的な好成績をだすと、本人は「理由はよくわからない、とにかく運が良かった」とコメントすることがあります。ゴルフでホールインワンしたプレーヤーに達成の秘訣をインタビューするときと同じです。「勝軍の将も、兵を語らず」。成功体験を共有したくないのかもしれません。漁師が魚のいる場所を秘密にするようなものでしょう。

成功体験や知恵を共有して、集団の優位性を強化していく手法がありますが、成功体験は、多くの場合、暗黙知が重要な部分を占めていますので、その時その場にいなかった人には、あの時あの場の共有なり追体験は困難です。二匹目のドジョウは、知恵を共有した者の前には現れないかもしれません。

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