金言212:ビジョンの再構築と明確化

実業の世界に踏み込んで(学校を卒業して就職する程度のことですが)最初に学んだことは「予算管理」でした。現場作業から、営業部門に配属されたときに、営業責任者から「予算管理」という手法を教わりました。経営に関しては在学中興味がなかったので、ほとんど勉強していません。仕入れた物を売ることで利益があがることに疑いをもっていませんでした。いわれたとおりのことを前年とおりにやっていれば、前年より売上も利益も増えるという右肩上がりの世の中でした。

事業計画は前年対比5~10%増で積み上げればできあがりです。ノルマを達成できなかった営業マンは、「営業というものは辛いものだ、しかし余禄もある」という反省が、居酒屋で口に出るぐらいで、リストラという言葉は当時存在していませんでした。解雇は、売上金を馬券購入に流用したことが発覚したとき、左遷は派閥のボスに嫌われたとき、そういうような気楽なサラリーマン無責任時代でした。

そのような風潮のなかで、当時の上司は予算管理の考え方を導入しました。事業計画を作成し、売上利益に対応して要員と経費(主に接待費)計画を明確にしました。何事も予算を立てて、予算に対して実績はどうだったのかをチェックするようにしました。ただし、柔らかい業界だったので、この考え方は定着しませんでした。何しろ、給料よりお得意様から都度頂戴する寸志の方が多かったのです。従業員は顧客のご機嫌をうかがい額に汗して稼いでいました。

昔話はこの辺にしておきます。最近、目から鱗の話を聞きました。ジグソーパズルです。2つのグループがジグソーパズルに取り組みます。Aチームはなかなかピースがはまりません。Bチームはサクサクとピースをはめ込んでいます。このスピードの違いには仕掛けがありました。Bチームはあらかじめパズルの完成図を見ているのです。なので、Bチームは完成図をイメージしながら次々にピースをはめていくことができます。一方、完成図をみていないAチームは、木を見て森を見ず状態で方向感が掴めない状況で苦労します。

パズルの完成図を見ることができれば、それをイメージしながらの作業は容易です。これを人生のパズルに置き換えると納得します。目標や夢、ビジョンを目に見える形にしておけば、その実現のための行動はジグソーパズルのピースをはめていくように比較的容易にすすめることができるというわけです。この話を聞いて初めて若い頃、上司に教えられた予算管理・目標管理の効能が理解できました。翌年の事業計画とか目標とか予算作成などは、年度末のルーティンワークとしてのお約束ごとで何の疑いもなく毎年繰りかえしてきました。経営者のビジョンの「再構築や明確化」は、アナリストが注目するので重要なのだと理解していました。

もしかしたら、初めて予算管理ということばを聞いたとき、当時の上司はその重要性とか意義などを部下に言ってきかせていたかもしれません。でも覚えがありません。何しろ、当時は好景気で皆がやることを横並びで、今までどおりにやっていればよかったのです。やれと指示されたことを指示通り実行することが年功序列組織での王道でしたから。

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