金言310:人は自らの経験からは学ぶが、先人の経験からは学べない

「人は自らの経験からは学ぶが、先人の経験からは学べない」
元英国蔵相ナイジェル・ローソン氏の一言。

1)鐘つき当番
某オーナーカンパニーの先代会長の墓守当番をグループ企業従業員が輪番制で行っていました。3社から1名ずつの3人1組で毎晩、鐘楼の隣にある小屋の2階で当直です。お茶と夜食にカップラーメンが用意されていました。グループ会社から別々に、古参・中堅・新人と必ず3世代になるよう人選をします。当直当番は、夕方集合し、廟の周囲を掃除し、翌朝まで、決まった時刻に鐘をつきます。間違えないように小石をつく数だけ鐘楼におき、ひとりがつき、ひとりが小石を数え、もうひとりは、つくタイミングをはかります。近隣の住民が毎晩聞いているので、タイミングが狂ったり、時刻がずれたり、数を間違えると、本社にクレームがくると古参に脅かされます。鐘つきの合間に、当直部屋で、故会長のご遺訓を学び、古参の従業員が直接体験した先代の言動を中堅・新人に語り継ぐのが、もう1つの大事なプログラムです。この当直当番で、グループ企業の求心力となる創業者の故会長を偲び、墓前で社業に励むことを誓います。

2)会議の上席にはかならず空席がひとつ
重要な会議では、かならず上席にひとつ空席を設けます。故会長の席です。常に故会長が臨席していることを意識し、ご遺訓に照らし、現在の課題を故会長ならどう処理するかを考えながら、会議し、意思決定をしていきます。

3)思い出話
あるとき、本社では、職場長を除く男性従業員が集められ、名札のある席につくよう指示されました。そして、長時間にわたって、故会長にまつわるエピソードが二代目の側近たちによって語られました。先代が亡くなってから入社した本社勤務の従業員が主なターゲットでした。先代会長の思い出話を追体験するよう会社は求めました。二代目の思いつきで腹心が始めたキャンペーンだったと想像します。経営幹部の思い出話をききながら、この人たちの意図は何かと考えながら、ふと窓の外に視線を移しました。この瞬間を見逃さなかった某側近を通じて、上司から会議室での不遜な態度について厳重指導を受けました。これは、待遇と賞与の減額につながる不利益処分と同じ効果があります。

故会長のご遺訓ではなく、ご遺訓にそって日夜業務に精進してきた側近や古参社員・上司とのダイレクトコンタクトで多くを学びました。故会長のおかげです。先人を超えることはできない、ただ、目指すのみといったところです。

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