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「ウマ娘プリティーダービー」のハルウララについて

「ウマ娘プリティーダービー」のアプリをプレイし始めて、最初にびっくりしたのは、ハルウララが育成対象に入っていたことである。実際にはアニメ1期では第1話から登場しているのだが、そういう予備知識はなかったので、「なぜハルウララが?!」と思ったのである。

そもそもハルウララって?

実際の競走馬であるハルウララがどういう馬だったかというのは、まあ興味ない人にはわからないかもしれないのだが、一言でいえば「負け続けていたのが宣伝されて、日本全国に名前が知れ渡った」馬である。当時の高知競馬は相当に厳しい状況だったようで、「活性化するためならなりふり構わない」状況だったということである。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%A9

末期はいろいろな思惑に振り回された結果、今は千葉の預託施設で余生を送っているという。最初は名前も伏せられていたそうだ。千葉なら近いから、いずれ会いに行ってみたい気もする。

http://rha.or.jp/news/2014/07/post-79.html

ある意味、人間社会の話題の流れとゴタゴタに巻き込まれた馬と言えなくもないのだが、それを言い出すと、そもそもサラブレッドという馬の品種からして、「競馬のために人間によって作り出された品種」なのであるから、あんまり細かくは突っ込まない。

ちなみに、今の高知競馬は「一発逆転ファイナルレース」と称して、16番人気の馬ばかりを集めたレースを開催しているのだが、どうもこれはハルウララ売り出しの反省から生まれた企画なのではないかという気がする。

16番人気の馬を集めたレースでも、誰かが必ず1着になることは間違いないのだから、繰り返していれば「1勝もできないままの馬」は少なくなるので、「どの馬もいつかは必ず勝てる可能性がある」という期待も持てるし、少なくとも高知競馬からは「第二のハルウララ」は登場しないであろう…と思う。なお、ギャンブル的視点からも「予想しようにも全く決め手がない」という混迷を極めた状況なので、高配当が発生しやすいらしい。

「ウマ娘」でのハルウララ

さて本題に戻って…そういう負け続けた馬が、こともあろうに競走馬育成ゲームに登場するということは、通常だったらまずありえない。しかも中央競馬ならいざしらず、地方競馬でしか出走しなかった馬なのである。びっくりしたのはそういう理由なのである。実際、登場するウマ娘のモチーフになっている馬は、(1)重賞レースで勝ったことがある実在馬 (2)実在する馬だが各種の事情により名前が変更されている(シンデレラグレイに多い) (3)ストーリーの都合で必要に応じて設定されたオリジナル(ゲームだったらハッピーミーク、アニメならサンバイザー、シンデレラグレイではベルノライト)の3つに大別されると思うのだが、ハルウララはどれにも該当しない。

しかしながら、競走馬の擬人化作品となると、話が変わってくる。

史実のハルウララは負け続けてはいたのだが、実際に騎乗した騎手からは「レースでは一生懸命に走っていた」という証言が残されているし、調教師や厩務員からも「勝ちたいと思っていた」という証言はある。これをひとまとめにして擬人化してみると「いつも負け続けているけれど、いつか必ず勝つことを目指している」というキャラクターになる。擬人化によって学園生活を送るという設定であれば、そういうキャラクターがいないと逆に面白くないだろう。

https://umamusume.jp/character/detail/?name=haruurara

同時に「いつも明るく元気いっぱい」という設定が行われた結果、アニメでは、デビュー戦が5着だったことを堂々と言って友人が言葉を返せないでいるところ、さらに続けて応援をいっぱい受けた話をして「レースって楽しいね」と言ったことによって、友人たちがレースに対する思いを新たにする…という、なかなか効果的なキャラクターに仕立てられている気がする。

これがゲーム内での育成対象になるとどうなるか。ウマ娘のゲームシナリオは、サイレンススズカのシナリオを例にして「史実を踏まえつつ、もしこうだったら…」という内容だと書いたが、史実のハルウララはそもそも1勝もしていないだけでなく、中央競馬で出走したことも一度もないのだ。

そういう意味では、「もしもハルウララが中央競馬にいたら」という、シナリオそのものが「もしも」の世界にされているようだ。ハルウララの場合は、ゲーム内の育成期間である3年のうち2年を目標がファン数稼ぎで終えるのだが、このあたりは史実を踏まえているかもしれない。また、シナリオの最終目標が人気投票で出走馬が決まる有馬記念というのも、「あれだけ知名度が高くなれば、票が多く入っても不思議ではない」という考えからではないだろうか、と思うのである。

そして、史実で1勝もしなかった馬ではあるが、ゲーム内ではそうではない。普通に育成すれば1勝くらいはできるので、ゲームシステムをうまく使えば「現実世界にいたら実力でも一番人気になりうる」ハルウララを作り上げることが可能である。実際、私も「ゲーム内でのハルウララは常勝にしたい」と思っているし、たぶんハルウララ育成をてがけたプレイヤーの大半がそう思っているのではないかと思う。

余談

ところで、現在、中央競馬の機関誌「優駿」では、「新世紀の名馬ベスト100」という企画が行われている。

https://www.prcenter.jp/yushun/meibavote/

2001~2020年に活躍した競走馬の中から、最大10頭選んで投票するというものなのだが、結構上位にハルウララが入るような気がしてならないのだ。

1996年に大井競馬場から脱走して首都高速を走ってしまったスーパーオトメという競走馬がいたのだが、そこまで全国的な話題になったわけでもないのに、20世紀に中央競馬および地方競馬のレースで走ったことがあるすべての日本の競走馬が対象の投票企画「Dream Horses 2000」で468位に入ったそうなのだ。スーパーオトメは一応1勝はしているのだが、大して有名でもないし、首都高速を走ってしまったというのも地域ニュースの範疇であるにもかかわらず、ある程度の票数が集まったということなのだから、日本全国に名前が広まったハルウララだったら、ベスト100以内に入るかもしれない。

どの子に投票するのかって?まだ決めてません(これは本当)。

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