PEARL JAM

椎名林檎のアルバム『無罪モラトリアム』や『日出処』の曲調のルーツは、彼女が昔聞いていたという90年代のアメリカのロックバンド、パール・ジャムがその一つである。私は彼女の音楽性を形作ったバンドを聞きたいと思った。

有名なアルバム『Ten』は内容の静と動のコントラストが特徴的だ。ギターのピックスクラッチや歪んだ音色、飾り気のない歌声、無造作に伸びた髪、挑戦的な視線と乾いた唇。パール・ジャムの音楽は椎名林檎のつくる楽曲よりも野性的で開放性があった。初めて曲を聞いた瞬間これから自分はこのアルバムを何度も聴くんだろうと感じた。
グランジロックは、パンクロックのような簡素で性急なビートとハードロックのようなリフ主体の楽曲構造とが融合されている。ディストーションのかかったラウドで荒々しいギターサウンド。怒りと反骨心。心臓が波打つ音が聞こえる。規範や社会の枠が振動するような、それもふくめて、これが彼らの音楽だと感じる。

再生数が一番多いのが『Even Flow』。ホームレス視点で歌詞が書かれている。世間の普通へのカウンターでもありながら、どこか冷ややかな視線が含まれているように感じた。コーラスは「Even flow, thoughts arrive like butterflies」と、荒々しい曲調とはギャップがある。
聞き覚えがあるなと思ったら、椎名林檎の『日出処』の『自由へ道連れ』とすこし似ている。


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