猫町 萩原朔太郎

人に薦められて青空文庫というサイトで、萩原朔太郎の『猫町』を読んだ。文章自体長くなく、手軽に読むことができた。


作品内容について。幻覚世界と現実世界との描写の対比表現が巧みでとても感心させられた。とくに、町の情景に言及する場面が幾度もあるが、表現や言い回しが尽きなくて飽きない。街並みだけでなく、商店の外観やその生活が垣間見えるような花壇や窓辺のデティールへと視線が移ろいでいく文章のタッチはありありと景色が目前に建設されていくようで心が惹きつけられた。

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冒頭にてショウペンハウエル「蝿を叩き潰したところで、蝿の『物そのもの』は死にはしない。単に蝿の現象をつぶしたばかりだ。――」が引用されているように、『意志と表象としての世界』と照らし合わせると内容が理解がしやすかった。

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①昔は旅の景色を想像するだけで心が躍ったが、②時が経ち旅が単なる同一空間における同一事物の移動にすぎないことを知る。
③薬物を用いた不思議な旅で遊ぶことを覚える(時空と因果の外に飛翔し得る唯一の瞬間)。
④町を散歩すると方角観念の喪失から、見慣れた退屈な町が全く別の美しい町に見えることに気づく。
表象への期待→表象の退屈さ→(薬物体験)→意志と表象の二重性体験

現象世界における時空の有限性や因果律に対して、意志を絶対不惑の事実だと語っている。

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