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ウメハラの思想

 ウメハラというのは、日本初のプロゲーマーである梅原大吾のこと。格ゲープレイヤーで、世界チャンピオンに何度も輝いている。
 以前、ウメハラの書籍を3冊ほど読んだのだけど、そこで書かれているエッセンスを整理したいと思った。半ば自分のための備忘録。ちなみに、読んだ3冊は以下のもの。
 特にこの記事の内容は、1冊目の書籍をベースにしている。そこで書かれていることを、私なりに整理し直したもの。


1.成長し続けることの必要性

(1)目先の勝利を追い求めると勝てなくなる

 人はどうしても目先の勝利を目指してしまいがちだ。けれども、それを続けても、勝ち続けることはできない。結果ばかりを追求すると、型にはまった考えしか思い浮かばなくなり、自分の感性も錆びるし、視野狭窄に陥る。

 そして、目先の勝利を追い求めようとすると、失敗を恐れるようになる。しかし、失敗を恐れて何かを回避しても、上に行こうとすれば、回避したはずの壁に再びぶち当たることになる。結局、失敗を恐れて回避しても、前進できることがほとんどない。

 そうすると、目先の勝利を掴むことはできるかもしれないけど、長続きはしない。どこかで結局勝てなくなる。

(2)限定的な力はどこかで壁にぶち当たる

 自分の勝ちパターンを押し付けるような勝ち方、相手の弱点を突くような勝ち方をして勝っても、やはり長続きはしない。
 勝ちパターンを押し付けても、それが通用しない相手に遭遇したらそこでおしまい。
 相手の弱点を突くような勝ち方をしても、その相手にしか通用しない勝ち方だし、レベルが上がっていくとそれが通用しなくなっていく。

 だから、そういった限定的な力では、勝ち続けることはできないし、上のレベルにいったら通用しなくなっていく。

(3)自分だけの力を身につけ続けなければ勝ち続けられない

 効率の良いやり方や勝ち方も流行ったりするが、特定の戦術・戦略に固執すると、やはり壁にぶつかる。対策されたり、そもそもそれが使えなくなることもあるからだ。そうなった瞬間に何もできなくなる。
 それに、人は、既に生み出されたものに対応する能力は高いから、流行りのやり方をやっていてもすぐに競争相手に追いつかれる。トップでいるためには、常に新しいものを生み出し続ける必要がある
 また、センスや運などで勝ってきた人間は、迷ってきた量が少ない。だから、いざという場面では勝負弱い。悩んで迷い続けて鍛錬をしてきた者は、判断力が磨かれているし自信があるので、勝負強い。

 そのためには、真似されない自分だけの力を身につける必要がある
 小さな違和感も忘れず、常に新しい変化を求め、今までと違う視点から眺め、挑戦をする。そうやって自分自身で試行錯誤することにより、トータルの能力や判断力が磨かれる。それにより絶対的な自信も生まれてくるし、大きな場面での判断も間違えないようになる。

 自分だけの力を身につけるためには、成長し続けることが大事だ。自分自身の力で、新たな力を身につけようと試行錯誤するしかない。そして、新たな力を手に入れても、それに満足していたらすぐに追いつかれる。だから、さらに違う可能性を試し続け、新しいものを生み出さなければならない。
 そのためには、何かの大会で勝つことを目的にするのではなく、自分が成長することを目的にすべきだ。とにかく変化し続けること。それによって、新しいことに気づいていくこと。そして、失敗を恐れないこと。苦手なものにも挑戦すること。そして、常に厳しい競争環境に身をさらすこと。
 築き上げたものに固執して縛られてはいけない。そこに縛られている限り、新境地に到達することはできない。すべての可能性を試し、乗り越えていくことで、自分だけの力を身につけることができる。

2.成長の仕方

 成長することが大事だとして、それではどうやって成長すればいいのか。完全に素人のときと、ある程度の力を身につけたときとで、やり方が違う。なので、両者を区別した方がいい。

(1)最初期の鍛え方

 最初期は、オリジナルを求めたり自由に練習してはいけない。それを続けても、底の浅い仕上がりにしかならないからだ。まずは、丁寧・慎重に基本を学ぶべきであり、上手い人の真似をするべきだ。最初の3年は基礎固めである。
 基礎を身につけてから、初めて自分なりの色を出したり、異なるやり方を模索していくべきだ。

(2)基礎を身につけてからの鍛え方

 基礎が身についても真似をし続けるのはよくない。ずっと真似ばかりしていると、真似をした相手に見切られるので、殻を破れないからだ。
 だから、基礎が身についてからは、上で述べたように、色んなことに取り組みながら自分だけの力を身につけていく必要がある。

 ただ、そこでの努力は、自分を痛めつけるようなものであってはならない。1日15時間努力するなどといった努力の仕方は、痛みと傷しか生み出すことはできず、結果が出ずにいずれ行動不能になる。自分の限界を超えた努力で勝ったとしても、その勝利は背伸びした結果にすぎない。
 大事なのは量ではなく質。短い時間の努力であっても、小さな発見を得て成長し続けることが大事。そのためには、短期間で息切れするような努力の仕方ではなく、10年間続けられるような努力でなければならない。

 だから、結果にはこだわらず、日々の成長に喜びを見出せるような努力の仕方をするのが健全だ。
 

3.勝利・敗北の捉え方

(1)勝負の捉え方

 大事なのは勝ち続けることだから、目先の勝負で勝つことに拘泥してはいけない。むしろ、自分が成長するための一過程として勝負が存在しており、その自分の成長過程を披露する場。それが勝負だ。特定の勝負のために努力をするのではない。努力の過程において、勝負が存在するのだ。
 だから、勝負というのも、自己の成長の一過程にすぎない。

(2)勝利の捉え方

 したがって、勝負に勝ったとしても、それはそれまでの積み重ねの成果にすぎないから、それ以上の大きな意味はない。
 そして、勝ったことで成長を止めてはいけない。むしろ、その勝利の中で、気づきを得られるか。そのことの方が重要だ。勝利したとしても、何かに気づいて、さらにそこから変化していく。これが大事だ。
 なぜなら、負けた相手は敗因を分析し、自分のことを研究してくる。だから、次の勝負では、相手は対策を講じた上で挑んでくることになる。勝利したときから何も成長しないまま、再び勝負に挑んだら、一度勝った相手に追いつかれて負けることもある。
 しかし、勝利してもなお、新たな気づきを得て成長すれば、一度勝った相手に追いつかれることはない。
 だから、勝利しても、天狗にならず、さらに気づきを得て変化し続けることが重要だ。

(3)敗北の捉え方

 負けたときは、その原因が必ず存在する。その敗因にきちんと向き合って受け止め、それを分析することが大事。
 負けたからといって、卑屈になる必要はない。それを踏まえて成長につなげることが大事だ。

4.関連する切り抜き動画

 ウメハラの書籍で書かれている内容は以上のとおりだが、YouTubeで上がっている切り抜きでも、上記の内容は触れられている。なので、関連する切り抜きを載せておく。
 切り抜きを見れば、ウメハラの根底にあるのが上記のような思想だということも再確認できると思うし、上記の話を具体化して理解することもできると思う。

 これは、「効率の良いやり方」をするのがダメな理由を述べている回。この記事の冒頭で書いているように、そのやり方をやっていても、他の人にすぐ追いつかれるし、勝ち続けることはできないということ。

 それと関連するのがこの話。効率の良いやり方をトレースすれば、上位層にまでは到達できる。けれども、そのやり方だと、そこから上に行くことができない。
 自分であれこれ考えて分析し、実践してきた強さがあることによって、その壁を打ち破って上に行けるということ。

 ウメハラが「努力こそがチート」というのも、上の話を踏まえれば分かると思う。努力するからこそ、これまでにない新しいものを生み出して、新しい境地に到達することができるからだ。

 これは、上の2で書いたような話。最初期は、とにかく上手い人の真似をして基礎力を身につけていく段階なので、どんどん伸びていく。けれども、一定水準に達したら、そんな速度での上達はしない。
 でも、そこから先は、少しでもいいから成長や変化を実感するということ。それが大事だという話。

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