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 ここで暮らしていく上で、多分一番大切になるのが水。
 ここには上水道は通っていない。だけど、Arkadiaから1kmほど西に上がったところの地主さんが井戸を掘り、そこからザブザブ出てくる水をこの集落は使っている。
 家のまえを通るパイプから支線を引き入れ、家の中に自然な流れで水を取り込む。家の裏側にその貯水タンクを設置しなくてはならない。各家でそれぞれ違うやり方をしていて、隣のホアキンさんは建物の下に地下貯水槽を作っている。セサールの家は庭に貯水タンクを半分埋め、半分外に出している。
 設計した時、Arkadiaの貯水タンクは道路と家の中間あたりの地下に埋めようと思っていた。どでかいの。
 で、重機を入れてその場所を掘っている時、なんと深さ1.5mのところで岩盤に当たってしまい、それ以上掘り下げられなくなってしまった。もちろん発破でもすれば良いのだろうけど、そこまでするのもねぇ、あれよねぇ。かといって、庭の一番いいあたりから貯水タンクの頭でたり、パイプ出てるのもねぇ、あれよねぇ。本当なら、地表は可能な限り最大限有効にあれこれ使いたいのだけれど、でもおそらくここ、どこ掘っても1~2m下は岩盤。無駄なあがきはしたくない。
 と言うわけで、ほぼすんなり「だったら一番人目につかない家の裏にしましょ」と。家の裏手、北東の角、ホアキンさんの家の壁に近いところに設置することにした。

 そしてセサール兄貴の出番。
 土台となるところをクマ夫とセサール兄貴は整地し、電気溶接された金網を張った上にコンクリを流し込む。よく計算して水平を保てる土台を丁寧に作る。もうこの辺りは男衆にお任せして、私はコツコツと内部の作業に集中するわけで。

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 Casa Arkadiaの貯水タンクは6000Lを二つ。二人が節水して使って2ヶ月分の水量だ。円筒形の屋外設置用タンクをその土台の上に置き、レンガを積んでいく。クマ夫の担当は、セメントを混ぜて練ったものとレンガをセサールの近くに持っていく。せサールはそれらを使ってレンガを積み上げていく。地道な作業。コツコツ、毎日毎日、セメント練ってはレンガを運び、一つ一つ計りながらズレないように、かしがらないように積んでいく。大したもんだ。

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 私は毎日、夕方4時ごろに、サンドイッチやフルーツや、たまに「新製品」の焼きそばとか肉まんとかを彼らに試食してもらう。クマ夫はすでに何度も食べているが、セサールにとっては初めての「日本人が作った日本食」でして。グラノーラのクッキーとか、ハンバーガーとかね。

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 クマ夫の担当はそれだけでなく、タンクの天井部分が直接レンガに当たらないよう工夫もする。近隣の梱包資材の店から発泡スチロールの大きな板を見つけてきて、それを適当な大きさに切り(角度とか計算が必要なので私には無理ざます)、挟み込むわけだ。誰に教わったのでもなく、そうしようとアイデアを持ち寄り、セサール兄貴もそのアイデアに大きく頷く。いいコンビなんじゃないの?

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 男二人で1ヶ月間、セサールは農場の仕事もあるので午後の数時間しかこちらには来られないが、8時間労働に換算したら十日ほどで作ってしまった。

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 後日談があってですね。
 この時の体験からか、クマ夫さんは「できることなら2度とセメント練るのはしたくない」と。大嫌いな作業なんですってよ。私、結構好き。もちろん体力すごい使うんだけど、でもどこがそんなに嫌いになるのかわからない感じで。
まあええわ。

 貯水タンクの設置が済むと、屋根にあるタンクに水を送ることができる。ポンプをタンク内に沈め、タンクから伸ばしたパイプを家の壁面にある取り込み用パイプに接続する。あとは、屋内の電源を入れるだけで貯水タンクから上のタンクに水を送ることができる。屋根の上のタンクに水を送ってそこから水を落とす仕組みなのは、メキシコ国内ほぼどこでもそんな感じ。一軒家でも集合住宅でも大体そんな感じ。なのでよく「メキシコは水圧が低い。トイレも詰まりやすいしシャワーの水圧も弱い」と言うことになる。日本でだったらこういう仕組みはまずないよね。

それと、貯水タンクの設置はどうしても乾季の中盤(1〜2月)中にやってしまいたかった。と言うのも、この地方の乾季は10月半ばから6月頭まで。後半の3〜5月には野火が増えてくる。もちろん、延焼を避けるために家の周辺の枯れ草などはあらかじめきれいにし、火の連鎖を断てるようにするのだが、やはり消火用にもばっちり用意しておきたかった。これだけ何ヶ月も雨が降らず、湿度30%以下が続けば、あっという間に燃え広がるのは目に見えている。

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丘の向こうが燃えてるんだ〜、と思っていたら

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あっという間にこっちまで来ちゃったし。


備えあれば憂いなし。万全にしておかないと、こんなど田舎、消防車だって簡単には来れない(いや、来ないとダメでしょ)
 

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