企業法務、四大が勝ちみたいな謎思想

司法試験に受かることが目標になってしまい、合格した先のことを考えていなかった結果、弁護士を辞めたくなっている者からの助言です

かつての自分が抱いていた、誤った思想を紹介します

・一般民事よりも企業法務の方が格上
・四大法律事務所は、Sランクで、それ以下の事務所は四大に入れない人が行くところ
・1日10時間受験勉強できるんだから、仕事も1日10時間できる
・華やかな仕事そう(?)
・お金持ちになれる
など

今考えたら、全部浅はかすぎる考えですが、
割とこんなふうに思っている受験生は少なくないと思います

まず、
一般民事より企業法務のほうが格上、という謎感覚はどこから生まれたかというと、
予備試験に合格した優秀な先輩がほぼ全員企業法務の事務所に就職するからです
受験生は、企業法務、というのがそもそも何なのか何もわかっていないはずですが、企業法務の事務所への就職が優秀であることの証みたいに思い、やたら企業法務を目指したがる気がします

たしかに、サマクラなどの募集があるのはほとんど企業法務の事務所なので、一般民事の法律事務所よりも、企業法務の事務所のほうがよく名前が知れていて、受験生としては、「あの有名な大企業」的な感じで、勝手に憧れを抱くんだと思います

ただ、司法修習で民事事件を見て、その後企業法務の事務所に就職して個人的に感じたのは、
企業法務つまんない……
規約とかどうでもいい……
といった感じで、人の役に立っている感覚がない(特に誰からも感謝されない)上、事例としても、何の興味も惹かれないので、正直自分は一般民事で他人のトラブルを見ているほうが面白いことに気づきました(面白い、というのは「トラブってるじゃん、ケケケ」というのではなく、何とかせねばと思うやる気が出る・興味があるということです)
受験生のときは、一般民事だと、他人のトラブルに感情移入してしまって疲れるから企業法務の方がいい、といううっすい理由で企業法務縛りをしていましたが、
司法修習中に思ったのは、一般民事でも慣れてくるとだんだん事例がただの問題文のように思えてくるので、大して感情移入はしません
よっぽどエグい事件でなければ淡々と処理できるだろうなと思います

受験生時代、まずは受かることが大事だということにとらわれて、法律事務所でバイトしてみたりインターンをしてみたりなど、法曹の仕事を知る機会を全く設けず、何にも知らない無知の極み状態で内定受諾まで突っ走ってしまいましたが、
いかに自分が愚かだったか、今になって思います


また、四大事務所こそ至高みたいな謎感覚もまた優秀な先輩が四大に行くのを見てそう思ったわけですが、
働く時間や経験できる分野、業種の多さ、上の弁護士から任せてもらえる仕事の量、若手でも上のパートナーと議論できるか、どれくらい丁寧に指導してもらえるか、深夜にメールが来るか
など諸々考えると、色々と思うところはあります

事務所が有名か、有名じゃないかは、事務所に入った後は正直誰も気にしておらず、仮に事務所の知名度だけを理由にして就職先を選んだとすれば、その未来としては、何も知らない受験生と非受験生の地元の友達に「なんかすげー」って言われるくらいでしょうか

就職先選びは知名度とか、”トップ”とかそんなしょうもない理由ではなく、くれぐれも、今後40年働き続けることを考えて、自分の興味のある分野や将来どういう弁護士になりたいかを考えた上で決断することが大事です




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