狩りと採り3
この山はサメのヒレのような形をした尾根が南北に3つ連なっている。そのサメのヒレのてっぺん部分は西側を通る一つの林道で繋がっている。この3つの尾根を北から順にABCとすると父が入ったのは車が停めてあった位置からしてB尾根だった。一番厄介な尾根だった。というのもA尾根とB尾根、B尾根とC尾根の間にはそれぞれ沢が流れていて沢づたいは急な崖になっている。つまりA尾根とC尾根は沢に面している片側だけが急斜面だがB尾根は両側が沢に面しているので南北のどちらも急斜面なのだ。
自分の車を停めた位置から800メートルほど林道を登ってくると最初にC尾根への入り口がある。さらにそこから200メートル進むとB尾根への入り口、さらにその先にA尾根への入り口と続く。林道はすべての尾根の高いところを通っているので入り口から山に入るとひたすら下っていくことになる。そしてどの尾根も下って行った先は同じ、B尾根の南北を流れる2本の沢の合流地点だ。つまりこういうルート設定ができるわけだ。林道を登ってC尾根に入り、松茸を探しながら沢まで下る。沢まで下ったらA尾根に入り、今度は松茸を探しながら尾根を登り元の林道に戻る。これはAからB尾根でもBからCでも、その逆でもルートを設定できる。要するに1日で3つの尾根のうち2つは歩くことが可能なのだ。
おやじはBから入った。B尾根にいるのか?
おやじの脚力でも行きは下りだから沢まで下りることはできるだろう。沢まで辿り着いたとして果たしてAに行くか、それともCか。
そんな事を考えながら真っ暗な林道を自分の車まで戻って行った。
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