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アーミッシュというスローライフな暮らし方

皆さんは、アーミッシュ呼ばれる人々をご存じだろうか。1720-30年代、ドイツ南部やスイス辺りから(アメリカに)移住してきた当時の生活を守り、現代文明の利器とは距離を置いて自給自足の生活をする人々だ。家族が助け合い、労働に対しては勤勉であるものの、質素を旨とし、物質的・金銭的な豊かさを最大の脅威とみなす。究極のスローライフを実践している人たちだ。そのアーミッシュの集落として有名なのがペンシルバニア州のランカスター郡。ニューヨークから3時間半ほどの距離だ。今回はそこで見聞きしたものを紹介したい。

旅の拠点としたのがランカスター郡の中心地、ランカスター市だ。この街からアーミッシュの集落、Bird-in-hand まで車で30分弱の距離である。(なお、アーミッシュ集落にもホテルやゲストハウスはあるようだが、レストランまでの距離が遠すぎると車を運転する夫がお酒を飲めないので、徒歩で行動できる都市泊を選んだ。市内ではウーバーも利用できた。)ランカスター市から少しドライブすると、以下のような風景が現れる。

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この辺りにはアーミッシュの生活風景を見学したり、馬車に乗ったりできる施設が何軒かある。私はその1つの「The Amish Experience」という名の施設で学校と家を見学するツアーに参加した。平日ということもあり、ツアー参加者は私と夫の2人だけだった。ガイドさんに質問しまくった。

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様々な学年の子達がこのような教室で一緒に学ぶ。アーミッシュの人たちは独自のカリキュラムがあり、科学系の科目を勉強しない。一般のアメリカ社会では高校生(12年生)までが義務教育だが、アーミッシュの人たちは8年生まで終わりだそうだ(1972年に連邦最高裁でも認められたそう)。その後、アーミッシュではない、外部の人や現代の利器などと触れる生活をするのだそうだ。そして16歳(アーミッシュでの成人)になったタイミングで、アーミッシュとして残るか、外に出るか決める。ガイドさんによると95%の子達がアーミッシュとして残ることを選択するそうだ。残りの5%はどうなるのか?と聞いたら、メノナイトという、アーミッシュに近いけれども現代文明を受け入れる人々のグループに入るのが一般的だそうだ。成人になった段階で一般の義務教育に戻り、完全な現代人として生きることは滅多にないとのこと。…家族との関係性が断たれたくない思いで残るのか、やっぱり現代文明は精神的にそぐわないと思うのか。。ガイドさんはアーミッシュではなかったので踏み込んで聞くことはできなかった。なお、義務教育の他に、社会保険料(social security) も適用除外だそう(他の税金は払っているそう)だ。家族の相互扶助で介護も完結するため、政府の支援が不要だからだ。

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↑これがアーミッシュの人たちの日常着ている服。1番右の野球のユニフォームは、義務教育後の外部社会の人と交流する時のもの。すべて手作り。ベルトはアーミッシュ的には「華美」なので、大人もサスペンダーを使うそうだ。

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↑女の子の部屋。エアコンがあるのは、あくまで見学者のためであって、アーミッシュは使用しない。アーミッシュキルトがとてもかわいらしい。本についても科学や現代的な内容は読まないそう。

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↑結婚記念の手芸飾り。アーミッシュの人々は個人写真を撮らないので、文字で記念を残すそう。

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↑台所の様子。電灯は懐中電灯のような電池式。冷蔵庫、温水も使うそうだが、車のバッテリーみたいな充電を電源として使っている。(12Vまでしか使わないのだそうだ)アーミッシュの人もウォルマートなどの一般社会のスーパーを利用するという。机の上にあるからくりのおもちゃはお手製。アーミッシュは木工細工も有名なのだそう。そしてその奥にあるのが新聞。アーミッシュの唯一の情報源だ。

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↑手前にあるのが洗濯機。機械ながらかなりの旧式。奥においてあるのが車輪付きのキックボードみたいな乗り物。アーミッシュの人にとって自転車は「スピードが速すぎる」ので、NGだそう。

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↑庭の一角にある小屋が電話ボックスだ。かつては数世帯で1台を共有していたそうだが、今は一家に一台あるそう。電話が家の中にあると、電話によって生活の流れを乱されてしまうため、距離を置いているのだ。ボイスメッセージを聞いて対応するとのこと。中の電話もクラシックな電話なのかと思いきや、↓

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完全に現代的だったのが拍子抜けで面白かった。外に出たところでツアーも終了。1時間弱のツアーで、質問できる範囲も限られていたが、未知の世界に触れられて、生活感覚を知ることができただけでも十分貴重な体験だった。

田園風景がとても穏やかな時空間を醸し出していて、少し周辺をドライブしてみた。

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北海道ほど広くはないが、雰囲気は北海道のような感じだった。アーミッシュの農業は農薬を使わないため、ニューヨークでもオーガニックセクション(高価格帯)で販売されている。Theな感じの風景が↓

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洗濯物干しだ。アメリカでは外干ししないのが一般的(景観を損ねる+乾燥機が買えない=お金がないと思われて不動産価値が下がるから、住人の取り決めで外干しNGが全米共通の慣例なのだそう)だが、アーミッシュの人たちはやっぱり違う。洗濯物の干された風景は平和的だ。車を出て、こういった風景を撮っていたら、たまたまアーミッシュの馬車とすれ違った↓

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親しみを込めて路肩から手を振ったら、乗車していた親子が私に手を振り返してくれた。ある程度は外部社会と触れながらも、自己と他者を明確に区別して、自分の信じる道を進む。アメリカ社会の多様性を象徴するような世界だった。その孤高な信念の強さと、ノスタルジックなものへの淡い憧れからか、とても輝いて見える。が実際に行うとなると葛藤がないわけではないと思う。また行く機会があれば、アーミッシュの人がガイドをしてくれる個人ツアーを申し込んで、沢山質問してみたい。

(ランカスター旅行の前後に立ち寄った場所についても追って紹介したいと思っています)

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