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私の山小屋暮らし

気づいたら

長野県 北アルプス 2,677メートル  


にいた。

高校を卒業した私は、海外行きの資金を貯めようと考えていたとき、ふと思いついたのが山小屋だった。
きっと山に行けば色々な人に出会える!沢山話を聞ける!と、これからの事を考えていた私はそんな期待を持っていた。(こんな発想になるのは長野県民だからかもしれない ...笑)
そして、知り合いの協力もあり、卒業1ヶ月後には山の上に居た。

小屋は稜線上にあり、
空は広く、空気は澄んでいて、目にうつるのは雄大な山々と美しい草花。
早朝の日の出や満点の星空は自分自身の小ささ、それから無限の可能性をも感じさせてくれる。

私が求めていたのはこれだ!
そう思える場所だった。


山小屋の朝は早い。
5時に起床、お客さんの朝ごはん作りから始まる。
今日のお味噌汁の具は何にしようか考えながら、ガスコンロにマッチで火をつける。そう、標高が高いからライターはつかない。下界では普通な事が、結構山の上ではできない。朝食を出したら、客室、全館各所掃除が始まる。スタッフの食事は掃除の合間に朝ドラを見ながらワイワイと。
10時半くらいに掃除が終わると、ちらほら登ってくる登山者向けに、売店や昼食の準備をする。
賑わう時期は3時まで大忙し。それが終わると交代で休憩をする。お昼寝してもよし、お散歩にでてもよし、外で本を読むもよし。皆んな思い思いに過ごす。大好きな時間。休憩タイムを終えると次は夕食の準備に取り掛かる。お気づきだろうが、山小屋で働いていると常にご飯のことを考えるようになるのだ。この小屋はスタッフの賄いは前日の夜にサイコロで誰が作るか決めるルール。運が悪いと何日も連続当たったり。賄いに関しては、南極観測隊と同様1日のうちの最大の楽しみになる為、責任重大だ。
お客さんに6時くらいに夕食を出し、片付けが終わるとお楽しみ夕食タイム。これまたワイワイと食べて飲んでするのが楽しい。こんなふうに毎日を過ごし、寝食をしていると一緒に働いているスタッフは家族のようだった。

私が想像した通り、スタッフ、お客さん、色々な方々と素敵な出会いがあった。人生や価値観、素敵なお話がたくさん聞けた。私にとって何よりも大きな学びになった。自分の考えを作り直すいいきっかけとなった。
私の選択は間違っていなかった。

社会のペースに飲み込まれ、自分自身を見失って将来の可能性を自ら握り潰しそうになった日々。
心は「違う!そうじゃない!」と叫んでいるのに気づかないふりをして社会のモラルや決まりに従おうとする理性。感情と理性の殴り合いでヘトヘトだった。
結局は感情が勝ってしまうのは知っていたが、最後まで闘った私の理性、「本当によく頑張った!」笑 
今ならそう言える。なぜなら、闘いきったからこそ、この景色がより一層綺麗なのだから。

そして少し社会が決めたレールから距離をとってみることにした。そして自分にバケーションを与えることにした。人生の春休み。


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