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シームレスな共生社会の実現に向け、法人パートナーとしてcarewillと共創する未来 株式会社航和 代表取締役 佐々木航さんに伺いました

岩手県雫石町に本社を持つ航和グループは、株式会社航和(接骨院1拠点、介護施設11拠点)と社会福祉法人結和会(就労支援、共同生活援助施設3拠点)により構成されています。「介護×テクノロジー」にも積極的に取り組んでおり、2019年には介護クラウド等を展開する株式会社keeperを設立。2020年にはクラウドファンディングにも成功されました。
 株式会社航和は、carewillの法人パートナー第一号であり、ケア衣料のものづくりに不可欠な研究・調査や、開発ヒアリングに協力いただいています。 今回は、代表取締役の佐々木さんにお話しを伺いました。この記事は、後編です。


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株式会社航和 代表取締役
佐々木航氏
岩手医科大学大学院修了後、株式会社航和創業、社会福祉法人結和会設立、都内にて介護スタートアップ株式会社keeperを設立。岩手県雫石町、盛岡市にて介護施設や介護サービス事業、障がい者の支援事業所を含む15事業所経営。さらに生涯活躍のまち構想(日本版CCRC)を実現するため雫石町、小岩井農牧株式会社、金融機関とともに町づくり会社を創業し経営

株式会社航和ウェブサイト


株式会社keeperウェブサイト


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地元・岩手県雫石町と、東京の二拠点でのビジネス

ー後半では、佐々木さんご自身のお話しを中心に伺っていきたいと思います。以前は東京のみに拠点をお持ちでいらっしゃいました。地元・岩手に戻られて、岩手と東京の二拠点で複数の事業を展開されている現在と当時では、どのような違いがありますか。

 大きな違いは、働き方の自由度ですね。以前は東京の病院に勤務していました。組織に属して勤めていた頃は、時間の制約がありました。自分で事業をやると、働き方や時間の使い方・管理を自分で設計できるようになり、働きやすくなりました。そして「介護×テクノロジー」の取り組みを中心に、大企業の方が当社の取組みに関心を持ってくださり、一緒に仕事をさせていただくことが増えてきています。介護スマートルームは日本で初めて介護の居室をIoT化した施設で関心を持っていただいていることが多いですし、政府系機関の方も視察や意見交換にこられることもあるようです。巡り巡って色々なことがつながっていますね。
 また、僕は雫石の自然が大好きなので、自然に囲まれて暮らせる、仕事ができるのはいいですね。雫石って、町のスローガンが「虹が似合う町」なんです。まちづくりにも関わったりしています。
 

ー素晴らしいですね。自分で働き方や時間の使い方を設計できる、っていいですね。地元発で、街をよくしたい、ひとのために、と行動される方がいて、その周りにどんどん仲間が増えてくると、行政の力を使わなくても地方が元気になったり、もっとよくなると思うので、佐々木さんのような人、雫石のような町が日本中に増えていけばいいと思います。

シームレスな共生社会の実現に向けた、アイデアを事業にしていく強い想い


ーコロナ禍で地元に帰省できない、高齢の家族になかなか会えないという方のお話しを最近多くお聞きします。介護スマートルームをはじめとする、御社のテクノロジーを活用した取り組みには可能性を感じますし、佐々木さんの会社の施設を利用されている方とご家族の方がうらやましいです。そんなビジネスアイデアはどこから浮かんでこられるのですか。現場の方の発案からなのでしょうか。

 普段の業務や、生活の中から思いつくことが多いですね。介護スマートルームのアイデアは、Alexaユーザーの僕が思いつきました。新型コロナウイルスが拡大する以前は僕も出張が多かったので、子どもとオンライン通話で話すことが多かったんです。もっと顔をみたい、直接話したいと、リアルタイムで子どもや家族と話をしている中で、思いつきました。そういえば、これ、うちの施設で使えるな、って。

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ーアイデアを思いついたり、ここが不便だな、これは使えるかも、と気づく方は結構いらっしゃると思います。しかし、そこから実現に向けて自分がやってみようと決意し、実際に自走される方はぐんと減ります。だから、ぱっとひらめいて、実際に形にしていってしまう佐々木さんの推進力はすごいと思います。

 笈沼さんもすごいですよね。お父さんの介護の経験、お母さんとの服作りから、想いを形にし、必要な方の声をどんどん吸い上げて製品・サービス化につなげていっているので。


ーそうですね、佐々木さんも笈沼さんも、どちらにも共通することですが、原体験と決意のある方は推進力が強いですね。介護スマートルーム、現場の声を聞いて事務作業の効率化にITツールを導入した、など、御社や佐々木さんの取り組みや行動の背景には、現場としっかり向き合っていらっしゃる、利用者の方をとても大切にされていらっしゃる姿勢があるように思いました。「利用者が第一、従業員が第二、家族がその次」と、別の記事で佐々木さんがおっしゃっていましたね。その思いに通じる過去の原体験が何かおありなのでしょうか。

 家族には何を言っているんだと言われそうですが・・はい、利用者の方も従業員も大切に思っています。現場のスタッフから、「介護が大変じゃない、事務作業が大変です」という話を聞いて、さまざまなITツールやテクノロジーを現場に導入し、事務作業の電子化を進めました。前半の記事でもお話した、月1回開催の経営会議は、拠点が複数ありその距離が離れているので、新型コロナウイルス感染症が拡大する以前から、オンライン会議で実施しています。最近では「介護スマートルーム」が利用者の方に好評いただいていますし、介護現場でのICT化の実現により「クラウド実践大賞」にも選ばれました。

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 原体験は、過去の母の仕事をみていた頃の記憶ですね。母がケアマネージャーとして、障がい者施設で仕事をしていました。僕は小さい頃は母親からなかなか離れられず、母の職場に連れていかれて一緒に遊んでいました。発達障害などを抱えている、自分と同じ年頃の子どもたちをみて、なぜこの子たちは学校にいっていないのかな、なぜ自分の親や家族と一緒に暮らせないのかなと疑問だったのですね。今なら理由はわかるのですが、当時はそれがずっと気になって、その思いが僕の中に残っていました。

 当社、そして、現在都内でやっている、介護アプリの会社(株式会社Keeper)も掲げているビジョンは「介護で困っている人たちを幸せに」、㈱航和では「シームレスな共生社会の実現」です。これまで高齢者向けの事業と、障がい者向け事業を推進してきました。次は子どもの事業をやりたいと考えまして、これは知り合いがやっている学童にアウトソースしながら進めていきます。障がい者福祉も、高齢者についても、子どもたちも、みんな、地域のひとたちが交わって生活しないと、孤立しては生きられないんでよね。隔たりなく、いろんな人が交わって生活していくところを創りたいという思いがあります。その根幹の部分は、母親に連れられて行った、幼少期の母の職場での原体験があります。

 なぜ、社会福祉法人や福祉事業を複数立ち上げて事業をしているのかというと、母親が生前ずっと言っていた、「困っている人たちを助けなさい」という言葉が背景にあります。介護、障がい者、子どもたちは、ビジネスとしてではなくて、何かしら手をさしのべる、一緒に暮らしながらやっていきたいと思っています。


ー今はダイバーシティ、共生などを国をあげて取り組んでいますが、佐々木さんは幼少期からずっとそこに課題意識をもって取り組んでこられたのがすごいと思いました。笈沼さんも、お父さんを通じて共生や、境界のにじみをなくすことに取り組みたいと考えています。高齢者向けの介護施設、社会福祉法人、そして介護×テクノロジーと、複数の事業を同時に動かし、関わる人も多い中で、佐々木さんが大切にされていることや、チームで仕事をする中で、うまくいく秘訣って何かありますでしょうか。

 自分自身はそんなに何でもできる人間ではないので、権限を委譲してやっていいただくことが多いです。社会福祉法人については、創業して数年は僕が理事長を勤めていましたが、ある程度回ることになったので他の方にお任せして、権限委譲しています。経営者として、決裁などには関わりますが、ある程度は現場で回せるようになっています。都内の会社も、MTGはもちろん実施していますが、ある程度皆さんの声を尊重してやっています。自分自身でやるよりは、仲間を信頼して任せるということですね。

ー任せるってすごいなと思いました。佐々木さんのお話しを聞いて、素晴らしい組織だと感銘を受けた一方で、信頼できる仲間を探すのって難しいのではと思ったのですが、どうやって仲間を探していらっしゃるのですか。

 まず仲間を見つけるのは、おそらくcarewillさんも同じかなと思うのですが、ビジョンに共感して、一緒にやりたいと思うひとを仲間にすることですね。共感して入ってくるひとを仲間にする。トップがやることは全てのことに最後に責任を取ること。あとは仲間を信じて任せていきますね。


ー確かに、carewillとのパートナーリングも、現場のトップの方、施設長の方に任せていらっしゃいますね。そしてそのトップの方がとても迅速に、そして丁寧に取り組んでくださり本当に助かっています。今はご協力いただくことが多いですが、これからcarewillが御社にとって何か役にたてることはどんなことか、佐々木さんからご覧になられて、carewillに期待していることだったり、一緒にこんな未来を作れる、という話を教えてください。


 僕が目指しているのは「シームレスな共生社会」です。介護や福祉で困っているひとたちを幸せにしたいという強い思いがあります。当社は、衣食住の中の「住」、「食」のサービスは提供できます。今後、介護、障害をもった方々の住む場所や、ケアを受けられる場所が限られてくる中で、我々が提供できる価値なのです。ただし、「衣」の部分は、当社は取り組まない分野です。だから、「衣」は、carewillがデザイン性が高く、機能性の高い、ユーザーの方の自尊心を守る商品を多く出してくれることを期待しています。carewillが世の中に多くのケア衣料を生み出していくことは、より多くの方の服の不自由を減らします。そして、carewillを身につけた方々の心が前向きになり、「喜び」や「生きがい」が増えていきますし、施設で仕事をするスタッフの負担を減らすことにも効果が期待できます。利用者の方にも、現場のスタッフにもメリットを感じていただける取り組みなので、当社はこれからも色々と協力したいと思っています。そして、社会情勢が落ち着いたら、ぜひ、雫石町に皆さんいらしてください。

ーぜひcarewill社員旅行も雫石へ。個人的にも雫石町にお伺いさせていただきたいです。今後とも法人パートナーとしてどうぞよろしくお願いいたします。

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