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服の不自由をお持ちの方に寄り添い、服を通じた心の潤いを提供するケア衣料「carewill」/着用ヒアリング協力者の岡田さんにお話を伺いました

carewill代表の笈沼が勤めた会社で新卒同期だった、というご縁から、笈沼がSNSに投稿したヒアリング協力者募集のメッセージを見て服づくりの過程にご協力くださった岡田さん。今回、どんな想いでヒアリングに協力をしてくださったのか、ご自身がお抱えだった服の不自由についてお話いただきました。

岡田菜穂子様
carewillの服づくりの過程で、着用ヒアリングに2回、服のデザイン・ユーザーMTGに1回、それぞれリモートでご参加いただく。代表の笈沼とは新卒で入社した組織での同期。以降、ゆるやかなつながりの中で、2020年末に笈沼の「ヒアリング協力者募集」投稿を見たことがきっかけで、協力者として関わっていただいている。関西在住・会社員。

過去の服の不自由を振り返りながら、ケア衣料のサンプルを手に取りヒアリングに協力

ーーお忙しい中、複数回carewillのヒアリングにご協力くださいました。本当にありがとうございます。早速ですが、岡田さんご自身は、どのような服の不自由をお持ちでいらっしゃいましたでしょうか。
岡田さん:最終的に診断された病名は「リウマチ」です。現在はほぼ通常の生活をしていますが、4年前に、足の裏が突然痛くなりました。当時、痛みを我慢しながらなんとか歩けるものの、とにかく歩くことが苦痛な状態でしたが、そのうち、腕が上がらなくなってきました。ヒールも履けないですし、仕事に行く際に、スーツにあわせられる靴の選択肢が少なかったり、自分が好きな靴が履けないというストレスがありました。服については、肩が上がらないだけなので、着られないものはないのですが、ちょっとした動作が苦痛に感じて、着脱しやすい服の必要性を感じました。仕事をしたり、普段の生活の中で、痛みによって服が思うように選べなくなることや、普段はできていた動作が苦痛に感じることによって、自分の病気を思い出してしまうことがありましたし、とても不自由に感じていました。


ーーなるほど。足も、肩も、だったのですね。大変でしたね。服の不自由を感じていらしたときに試されたことはありましたか。
岡田さん:口コミを頼りに靴は色々と試しました。最終的には、だましだまし手持ちの靴を履いたり、スニーカーで乗り切りました。自分が履きたいと思う気持ちを叶える靴は存在しなかったからです。痛みを我慢しながら、夕方になるとその痛みが強くなるのですが、手持ちの靴で乗り切っていました。仕事のときに着ていたスーツにスニーカーは合わないですし、ヒールを持ち歩いて、客先到着寸前に履き替えることもありました。この、足が痛くて靴を履くことに不自由を感じていた期間は、1年間ほど続きました。4年前の話です。結局、その症状がリウマチに関連していることが判明したのが、最初の症状から1年後だったので、そこからやっと症状が落ち着いてきて、今に至ります。


ーー原因がわからず、1年間も経過するのは、身体にも、心にも、ご負担でしたね。
岡田さん:最初に痛みが出てから、何度もかかりつけには診てもらっていたのですが、リウマチの発症時に足から症状が出る方は少ないようで、指先に症状が出て初めて、医師から「血液検査をしてみよう」と提案されました。その時点で、リウマチ因子の数値や、炎症反応が出たのでようやく診断がついて以降、治療が始まり、少しずつ症状が治ってきました。根本的な解決としては、病気が見つかり、薬を飲み始めたので、症状が軽減して服や靴の選択肢が戻ってきた、ということです。足の痛みを抱え、靴の不自由を抱えながら過ごしていた1年間で最も辛かったことは、自分が抱えている症状の病名がわからなかったことです。転院後の診察や検査の中で、レントゲンで骨粗鬆症傾向を指摘され、もしかすると当時とても痛かった期間は足の骨にヒビが入っていた可能性もあるとのことでした。外反母趾や歩きやすい靴のお店にも伺ったことはありますが、なかなか合うものが見つからなかったんですね。デザインなどを好きに選べない、というのがとても悲しいですね。その時の経験や想いが、私のcarewillへの共感につながっています。


ーー仕事をされているときにも大変だったと思いますし、お子さまも当時は小さく、送迎や外遊びで大変だったのではないでしょうか。
岡田さん:当時、年長さんと小学生の女の子で、突然走り出すとか、走り出したら止まらないタイプではなかったので、その点では助かりました。しかし、朝起きたときの一歩目がとても痛いので、送迎は大変でした。


ーーなるほど。朝の一歩目がとても痛い状況ならば、通勤も本当に大変だったでしょうね。ここからは、肩のほうの服の不自由について教えてください。着るときに伸ばして着れば、手持ちの服でなんとか着られていたのでしょうか。
岡田さん:そうですね、腕が上がりづらい症状だったので、手持ちの服の中で、着られるもの、なるべく負担を少なく着脱できるものを選んで着てました。下から着るのは楽だったので、下から履くように体を通して着られる服も着ていました。とはいえ、服の不自由が全くなかったわけではなく、ボタンの留め外しがある服は、なるべくなら着ないで済むようにしていました。なぜなら、ボタンを止める動作に多少なりとも違和感を感じていたので、その動作をする時に自分の病気について感じてしまうからです。また、スーツは伸びにくい素材ですし、形状も理由でしょうか、着脱時に多少大変さを感じていました。

ーー岡田さんは、わざわざ新しい服を買うのではなく、少し無理をすることもありながら、手持ちの服を着られていたのですね。当時、ケア衣料という概念はご存知なかったかとは思いますが、何か服の機能やデザインを意識されていた点はありますでしょうか。
岡田さん:モーハウスの服は印象的でした。10年ほど前にも、授乳服はいろいろ出ていたのですが、私はモーハウスの授乳服のデザインが気に入っていました。他のメーカーは、ジッパーやボタンなどが装着されていて、赤ちゃんに当たると痛そうだなと感じた一方で、モーハウスの服にはジッパーやボタンがなかったんですね。とはいえ、モーハウスは誰もが求める最適解ということではなく、私はモーハウスは好きでしたが、知人のテイストとは違っていたみたいですね。人のデザインの好みなどはありますから。服の構造で工夫されていたので、赤ちゃんがどこに当たっても痛くないですし、親も着脱動作に無理がなく過ごす、「自然」「違和感がない」「楽」でした。優しくて、着心地がいい、機能も兼ね備えていた、外に出かけたい気持ちにもなる、というのがよかったです。現在はファッションブランドでも授乳服の展開がありますが、当時はスーパーや量販店の商品ばかりでした。ですので、素材がちょっと安っぽい、であったり、デザインが外に出かけづらい、授乳が終わったら着られないな、という授乳服が当時は多かったのですが、モーハウスはその課題への解決があり、その工夫やアプローチが面白いと感じたので、私はモーハウスが好きだったのだと思います。

服の不自由を抱えた人に寄り添う同期のチャレンジを応援

ーーモーハウス、いいですよね。私の周りにも着ている方がいらっしゃいました。
ここからは、carewillに関わっていただくようになって以降のお話を伺いたいと思います。もともと笈沼さんとは知り合いで、SNSでつながっていらして、これまでにも投稿はご覧いただいていました。今回、ヒアリング協力者募集の投稿をご覧になられた時に、どんなことを思われましたか。

岡田さん:そこ(ケア衣料)に着目して、取り組もうと思ってくれる人がいることを嬉しく思いました。服の不自由を抱えていた際には「選択肢がないから、我慢して、あるものでなんとかしないといけない」と考えていたのですが、まさにブランド名が体現していますが、不自由を抱えている人に寄り添ってくれている印象がありました。そこがとても嬉しいと思いましたし、ぜひ協力したいとアクションを起こしたきっかけです。


ーー笈沼さんがケア衣料に取り組んでいることを知ったタイミングはいつでしょうか。
岡田さん:「何か挑戦をしているな」というのはずっと投稿を見て知っていました。その時は、自分の同期が何かがんばっているな、という目で見ていました。投稿に目が止まって、真剣に読んだのは、笈沼さんが「こういう人を探しています」と、具体的な病名や症状を提示して発信しているのを見たときです。


ーー自分ごととして読み手の方に捉えていただいて、協力しようと思っていただけるのは、具体的なメッセージングをもって発信したときなのだな、というのを今改めて認識しました。
岡田さん:まさにそのメッセージングが刺さったのが私ですね。


ーー自分に関わりのある症状に向けて服を作っているんだな、という投稿やメッセージを見ても「すごいね、応援しているよ」で終わってしまう人も多い中で、なぜ岡田さんは、今現在は服の不自由、症状も落ち着かれている状態だったにもかかわらず、今回協力してくださった理由を教えてください。
岡田さん:いいと思うものを誰かに伝えたい、ですとか、自分が役に立てることならば何でもやるよ、という性格もあるのかもしれません。
リウマチは、一生付き合う病気だと言われています。寛解にはなりますが、年齢を重ねると再発する可能性が高いです。この先自分がこのcarewillが開発している服にお世話になるかもしれない、という想いもあったのかもしれません。ただ、笈沼さんが挑戦していることは「同期ががんばっている」と応援したくなる気持ちにつながりましたね。


ーー着用ヒアリングにこれまで3回ご協力いただきました。
1対1のヒアリングと、デザイナーの方やユーザーの方が集まるミーティングにもご参加いただきました。サンプルを手に取られて感じられたご感想を教えてください。

岡田さん:かぶるだけのカーディガン(黒)が一番印象的でした。中に着る服とその上に羽織るもののセットです。時期(冬)だったのかもしれないのですが、重さ、長さ、丈、暖かさがちょうどよかったんです。私は肩が痛く、服の着脱がつらかったので、当時、カーディガンを羽織れば肌寒さが解決される季節にも、袖を通す動作に苦痛を感じていたので、今回のサンプルのように、ただ被るだけで、暖かくなる服はとてもいいと思いました。そこに、ブランドのコンセプト、想い、「寄り添う」というメッセージングを感じることができました。モーハウスの話のときにもお伝えしましたが、デザイン性はとても大事ですよね。私が印象に残った服は、アシメントリーにも着用ができて、「ケア」と「おしゃれ」が両立していていいな、と思いました。痛みがあるとひとは妥協して、楽な服を、楽な靴を、と流れてしまいがたいですが、痛みや不自由があっても、遊び心やおしゃれさを持って服が選べることはとても嬉しいと思いました。病気をしているときはそもそも気持ちが落ち込みますし、その痛みがある部分に気持ちがフォーカスしてしまいがちですが、服選びでワクワクすることができるのもいいですよね。

ーーヒアリングに協力いただく中で、carewillのこだわりを感じるところはありましたか。
岡田さん:ヒアリングで私が話す内容を、全て肯定して受け止めてくれたことです。また、私の抱えていた服の不自由についてはカバーしづらいタイプの、服のサンプルを送っていただいたことがあります。その際も、carewill側の仮説と、実際にリウマチの症状があると不自由を抱えるポイントとのすり合わせや、この機能はリウマチの方には必要ないのですね、という確認を綿密にされていたのが印象的でした。服作りに対して協力するヒアリング協力者の声を真摯に受け止め、拾って、服作りに活かしてくれているなぁと感じています。しっかり準備しているからこそのヒアリングという印象でした。

ーー今後のcarewillに期待いただいていること、carewillだからこれからの社会にこんな価値が生み出していけるのでは?というアイデアをお願いします。
岡田さん:ロゴや、服などを拝見していて、病気・加齢などの服の不自由を抱えていらっしゃる方でも服の楽しさや、服を通じた心の潤いを感じられる製品開発を意識されているのだと、ファッション性を大切にしたい想いを感じています。出かけたい、動きたい、と思ったときこそ、おしゃれな服を着たいと思いますよね。でもそういうタイミングこそ、靴はきつめだったり、着脱に不自由のある服のデザインだったりすることが多くて、怪我や病気をしていることに対してさらに気持ちが落ち込んでしまいます。その状況で無理なく着られる機能的な服が存在して、しかもその服がおしゃれで外に出かけられる、という嬉しさを提供してくださるのではないかと。寄り添いながら、無理なくおしゃれな服を提案してくれる存在ですね。これからも、機能的だから服の着脱が楽になる、デザイン性があるからこの服を着たいと選ぶことができる、そして、この服を来て誰かに会いたい、外に出たいと思う気持ちを後押しできる存在でいてほしいです。


ーーそういうふうに思ってくださる方がもっと増えていくようにがんばります。
期待しています。自分もこれから歳を重ねていくので、お世話になる服をぜひ作ってください。


岡田さん、取材にご協力いただきありがとうございました。
これからも、さまざまな服の不自由をお持ちの方に寄り添い、ご意見を伺いながら、carewillの服作りを追求してまいります。


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