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わたしが東京行きを決めた日

6月16日、目を腫らして眠り、目を腫らして目覚めた朝。
きのう、たくさん話したはずの彼だったのに、急に不安になってひとり泣き出してしまった。

わたしが東京行きを考え始めたのは、10日前。

朝、彼といっしょに目覚める朝。
「おはよう〜〜。」と言いながら、キスをする。

背中を向けて寝ている彼。大きな背中に抱きついてみる。
(何度抱きついても、大きくて安心するサイズ感、質感、筋肉感だな〜。)

2人でむにゃむにゃお話をして、お昼に何を食べるかをお布団の中で考える。お昼は前日の残りの食材でだいたい同じものを食べることに決定。
(おいしかったんだよねえ。スーパーの食材で作るお家洋食、大ヒットな餃子ピザとアヒージョさん、バケットのセット。)

今日は彼の考えたレシピを聞きつつ、わたしが作る。
昨日は「丁寧」がテーマだったけど、今日は「豪快」がテーマ(これは今考えた)だったので、テーブルトレーにだだだと載せて、むしゃむしゃばくばく手で食べる。

今日は断捨離の日。(わたしが家中の掃除の日)
昨日と今日の食器を洗って、掃除機をかけ(昨日もかけた)、コロコロをして、ぞうきんで拭き、トイレ掃除までした。掃除機の掃除もして、洗濯も「もうこの滞在では回しちゃだめ!」という彼を説得して、オキシ漬けから洗濯を一度だけ回した。

彼はその間、クローゼットの断捨離をしていた。わたしとしては、冬のコートをそろそろクリーニングに出して、クローゼットにしまいたいのだけれど、クリーニングに出してしまうとコートたちが次東京に来るまで誰にも取りに来てもらえない孤児になりかねないので、もう少し彼が乗り気になったらにした。(いまクリーニングに出すと良い理由を考えています。うちはクリーニングに出すのは当たり前という考え方だったので、悩み中。)

彼の小さいときの写真や、賞状、一緒に在学していた(彼とは中学と大学の同級生)中学の時の写真など、たくさん出てきて、見せてもらった。彼が頑張った証、認めてもらったかけらたちは、見ていて微笑ましくなった。目の前にいる彼を抱きしめて、たくさんたくさん頑張ったんだね。好きだよ。と言いたくなった。

落ち着いたところで買い出しにでかけた。ユニクロに行って、彼のパンツのレパートリーを増やしたいわたしだったが、なかなか良いものがない。マスク&真夏日が暑すぎて、そしてお腹も空いて(こういうときに限って冷たいランチを出しているお店を見つけられない)、服なんて見ている余裕はすぐになくなった。さっさと買い出しをして、家でつるんとそうめんでもすすろうという話になり、いざ。眠れる薬と結膜炎の目薬、柔軟剤(わたしが家に来るとすぐになくなるものランキングナンバーワン、ちなみに付き合いだしてから一度購入しているのにそれがもうなくなった)を買って、スーパーへ。夜は家焼肉、昼はオクラそうめん、そう決めて、お肉コーナーに野菜コーナーをめぐり、彼は在宅時の昼食用のパスタを買っていた。アルコールを抜くべく、飲み物はコーラにした。

さて、灼熱地獄だが、家に帰るためには坂を登らねばならない。彼がしりとりをはじめて、「たべものしりとり」がはじまった。はじめてしりとりをしたけれど、彼は強い。たくさんの「り」で攻められ、攻めたけど、最後は「け」で終わった。もちろん彼の勝ち。「ケーキ」って言えれば勝てたのに、くやしい。

家に帰って、お米を火してくれた。お米が炊ける間に、お家撮影会をした。彼は以前から練習してくれていて、わたし史上ベストのワンピースを着て、レースの下着をつけてたくさん写真を撮ってもらった。たくさん褒めてもらって、恥ずかしさもこらえながら、たくさん笑った。いいじかんだった。次はふたりの写真を撮ってみたい。

そうこうしているとお米が炊けて、お肉を冷蔵庫から取り出した。母からの誕生日プレゼントの、さっき届いた真新しいホットプレートも箱から取り出して、お肉をじゅじゅ〜〜っと焼いた。部屋中最高の香りが広がって、口の中にもスーパーのお肉とは思えない美味しさと幸せが広がった。タン塩、豚トロ、良い和牛肉、ホルモン、サラダ菜、ごはんにコーラ、彼の笑顔と美味しそうに食べる姿。わたしは、この顔を見るためにはたらきたいと思った。

彼と一緒にいて、おだやかな日常が好きになった。
もともとひとの感情を感じやすく、心にもためやすいわたしは、バケツがたまると爆発したように泣き出したり、怒り出したりする。少しずつ、本当に少しずつ、彼はそれをおだやかにしてくれる。泣いてしまうときも、起こってしまうときもあるけれど、そうなったあとは、素直に「ごめんなさい」と「ありがとう」ができる。そのことは、わたしのなかでとても大きい。

彼がつくるなんでもない料理。うどん、そうめん、どんぶり。
ついつい、久しぶりに会ったから、と特別にしたくなる食卓も、彼はごく普通に、日常的なものを作ってくれる。わたしはそれがとてもうれしい。

明日死んでしまうのだとしたら、今日はとびっきりのものを食べるだろう。でも、この日々は続いていくから、明日を当たり前に信じているから、今日の食卓は特別なものでなくていい。胸焼けしてしまうから。


今の彼とのおうちごはんは、ちょっぴり素敵な日常がつまっている。
一緒に住めるその日がきたら、だんだんだんだん、日常にしていこう。

今は見られていない日常を、近くでちゃんと感じて。

ちょっぴり素敵な日常を楽しむために、彼のあの顔を見るために、がんばって、はたらくんだ。


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