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彼の、25歳の誕生日。

社会人になれば、誕生日を一緒に迎えることは難しくなると思っていた。遠距離ならなおさら。

でも、今日は一緒に迎えられた。正確には、彼との距離をゼロにできたわけではない。このご時世、東京にいる彼がこちらに帰ってくることも、京都にいるわたしが the most dangerous city, Tokyoに行くことも「許されない」。

本当は、彼とわたしは彼のお気に入り、静岡に旅行する計画を立てていた。でも、そんなことを言っていられる状況ではない。もとより、彼はとうの昔にリモートワークになっているし、塾という、一番リモートしにくい場所が、いつリモートになっても不思議ではないのだから。平日は自転車で3分の塾と自宅の往復のみ、土日は昨日トラブル処理で呼び出された以外は外に一歩も出ない生活をしているし、まさにstay home一色だ。先週までは、もし自分が守るべき、そしてなによりも可愛い生徒たちの命を脅かしてしまっては、という恐怖を感じながら授業をしていたが、今週から完全なるオンライン授業に移行する。わたしのまわりの、ちいさなちいさな世界はそんな状況だ。

そんな中迎えた、彼の26回目の、25歳の誕生日。上述のオンライン授業の準備で史上最強のカオスな状況だった弊社での激務に追われ、物欲のない彼に甘え、「まあ、いっしょに選べばいいよね〜」程度にしか思っておらず(というか、旅費出せばいいか〜って思っていた笑)、何も用意していなかったわたしは、焦りに焦り、たった今開封されている「仕送りボックス」――共通の友人は箱の中身を聞いてそう呼ぶ――を送った。彼は手作りが好きなので、「すきなところ100個カード」と、stay homeグッズと称したレシピやお気に入りの本、旅行先のガイドブックなど、そしてそしてティッシュペーパーとトイレットペーパー。彼からのリクエストにお応えした八ツ橋(京都で有名な実店舗はしまっていたので、スーパーで買った切れ端みたいなの)、家族旅行先で買った紅芋タルトと芋けんぴ的なブツ、免疫力を高めて殺菌効果がある緑茶の入った可愛い飲み物っぽいブツなど、よく出勤前の鬼のような1時間で揃えたな、という品物ばかり。ふふ。(自画自賛)

誕生日前日の昨日は電話をつなげながら映画鑑賞会vol.2――先週も同じようにやって味をしめた模様――をやりながら、ゆるりと誕生日を迎え(気づかなかっただけ)、爆発的な何かをしてから、そのままゆるやかに眠った、と思いきや、東京に大きな地震。将来ふたりの子に読ませようと英語の絵本を考えていたら彼は眠っていた。

当日の今日は、tele-birthday-partyと称して、既製品のパンケーキにいろいろと乗せて、ろうそくを立てて火をつけ、実は2回めのbirthday songを歌った。(きのういつ歌ったかは忘れたが、歌った。)互いにお昼寝をしたり、映画を見たりしながら、これまたゆるっと過ごしていたらもう20時になる。

わたしにとって大切な人が25歳を迎える大切な日は今日しかない。それは揺るぎない事実だし、奇跡的にその日は日曜日で、本当なら一緒にいられる予定だった。手紙でもほぼ触れないようにした。だって、誕生日は誕生日だから。でも、彼もわたしも今、この瞬間に元気で、ゆるりと過ごせることのほうが、大切だ。とても、とても運がいい。

年の差のうまれる約20日間、何をしよう。
会えないこの時間、どう過ごそう。

不安症のわたしが、そうポジティブにこの状況で考えられるのは、紛れもなく彼のおかげだし、生活をともに背負った職場の皆のおかげだ。そして、こんな状況下でも「オンライン飲み会」、「おうち時間」等、ポジティブに世界を回そうとする、わたしたちのバイタリティーのおかげだ。

このような状況が、一生に一度のものになりますように。
来年の誕生日は一緒に、「去年は会えなかったねえ」と、今年と同じく元気で笑い飛ばせますように。
ひとりでも多くの人々が、救われますように。

今日観た映画、"A Good Lie"から言葉を借りるなら、
"If you go fast, go alone. If you go far, go together."

焦って焦って早く終結ではなく、確実に。
今まで生き残ってきた人類の知恵をかけて、じりじりと、粘り強く戦っていきたい。


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