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母がいなくなった世界での生き方①

2022年4月最初の日曜日。
家族四人で夕食を食べにでかけた。
前から知っていたけど行く機会のなかった洋食屋。
メニューを見ながらオムライスにするか、ビーフシチューにするか。
セットにするか単品にするか、ジュースを飲むか、飲まないか。
そんな話をしていた。

娘のスマホが鳴る。
「あ、じいじからだ。」
そう言ってスマホに出る娘。
「え?なに?いるよ。うそ!?」
いつもと違う娘の声色と表情。

その様子を息子と見ながら冗談で
「ばぁばが死んだんじゃない。笑」
なんて縁起でもないことを言っていた私。
当然、そんなわけはないし、そんなことが起こるわけもないと思っていたから言ったこと。

電話を切った娘が言った。
「ばばちゃん、死んだって。」
その瞬間、世界の動きが止まった。でもまたすぐに世界は動き出す。

だって、そんなわけはない。

私は父に電話をした。
「おお、お母さん死んじゃったぞ。」
まるで、昨日の天気の話をするように父は言う。

私はどうしたらいいかわからない。
その場に適当な感情も見当たらない。
「え…とりあえず行くわ」

全てを悟った旦那が、注文をキャンセルしてくれた。
子供たちも何も言わない。
そして私たちはとりあえず家に帰った。


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