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彼女より給料が安い…のはいかんですか?

家の近所を歩いていると、「5分だけお時間を…」とマッチョな感じの青年が言ってきた。一昔前のサンドイッチマンよろしく建売住宅の現地案内の看板を前に抱えている。しかもチラシを手に持って。
器用な人…

話を聞くと、購入者のローン審査が通らなかったとかで、完成間近の1軒が買い主未定の浮いた状態になっているらしい。これを内覧しないか?というお話。
「いえね、ご購入の意思はなくても良いんですよ。みるだけで」
といわれても、「○○するだけだから」というお誘いって、概ねそれだけでは済まないのが世の常。時間がないからとお断りして、本来の用事向けてまたねと言って立ち去る。
ところが、用事を済ませての帰り道、うしろから
「ね、5分で良いですから」
と声がする
「お願いしますよ」
なんと、彼の青年が後ろにいるではないか…ぞぞ…。
用事が済んだことはばれているし、その用事も意外に早く済んで時間はあるのでローンが通らなかったという曰くアリの内覧物件を見に行くことに。

一通り中を見終えて、といっても5分の約束だからほんとにさくさくと見てしまったところで青年が
「いやぼくね、先月転職してきたばかりなんですよ。だから売ろうったって一人では売れないんですよ、上司が同席しないと」
と、いいわけのような打ち明け話を言い始める。
え? 先月ってまた年の半ばの中途半端な時期に。ということは転職?
「そうなんですよ。なのでまだまだ勉強中なんです」
前職は何をしていらしたの
「スポーツトレーナーをしていました」
あぁ、なるほど。それでマッチョな感じなんですね。でもなんでトレーナーから不動産業へ?
「彼女がいるんですけどね。彼女の方が収入高いんですよ」
え、え、え。それが理由? 
「トレーナーって、対人業でしょ。なのでやはりお客様と合う合わないがあるんですよ。スポーツトレーナーだと女性のダイエット系の話が多くて、でもそれは自分の得意とする運動とは違うんですよね。でも合わせないといけない。それに給与もそれほど高くはないんですよ」
なるほどね…。じゃぁそもそもなぜトレーナーに?
「教育学部だったんですよ。教員養成の。小学校の体育を専攻していたんですけどね。卒業するときにいろいろ考えて、といってもそれほど選べるわけではないんですけど、小学校よりも民間の会社の方が良いかなと思ってスポーツクラブに入ったんですよ」
なるほどねぇ。
「好きでやるスポーツと、それを仕事としてやるのではやはり違いましたねぇ」
ふ~ん。
「不動産業と言っても今の会社は固定給が厚めで、インセンティブとかは少ないんですよ。そういう意味では安定しているかなと思っています」

とはいえ、5分だけ、という話できたのだから、よけいな話はしないで帰ろうと、ここいらで退散したのだけれど、引っかかるのは
「彼女の方が収入高いんですよ」
のひとこと。
いいんじゃない、それで。安心して生きていけるじゃない。いわゆるヒモ的な生活にならないように、自身もしっかりと働けばいいだけじゃない。彼女が産休、育休に入っても生活していけるように、その間の分だけ持つように貯蓄しておけばいいだけじゃない。金銭面ではね。
じゃぁなくて、「男たるもの」なんて考えているなら、それは古いよ。古い以上に、彼女に申し訳ないよ。「男は」って言うことは、言葉の裏側で「女」をスポイルしていることになっているんだよ。気がつかないかもしれないけど。
もし彼女の方がそう言っているのなら…本気でそう言っているなら、ちょっと考えた方が良いかもよ…。金の切れ目が縁の切れ目に…なんてこともあるかもよ。
いずれにしても、お金(収入)の高さでその人を測るような考え方にはならないようにしておきたいよねぇ…という話ができたら良かったなぁ…大きなお世話か…

「今は宅建の資格とるために勉強しているんですよ。来月が試験なんです」
うんうん頑張りたまえ。

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