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#26 内定につながらない自己PRとは③適性診断の結果を鵜呑みにする

自己分析のツールとして、ネット上では、簡易的な適性検査ができるサイトもあります。客観的な自己分析の方法としての適性検査はうまく活用すれば非常に効果的ですが、情報を鵜呑みにしないように注意してください。

 適正診断結果を鵜呑みにして、半年以上の時間を棒に振ったという学生が私のところに来たことがあります。
 ある就活サイトの運営会社が主催する「大学生向け就職フェア」というイベントで、キャリアカウンセリングブースでの相談を担当していた時のことです。一人の学生が、すごい剣幕でカウンセリングブースに乗り込んできました。そしてこう言ったのです。「あなたの会社の適正診断のせいで、僕は就職活動の期間を半年以上棒に降りました!どう責任とってくれるんですか!?」鼻息荒く叫ぶ学生。私は就活フェアを主催する企業の社員ではなく、カウンセラーとしてこの日だけお手伝いをしていたのですが、学生からすれば、スタッフは全員主催者の関係者だと思っても仕方ありません。突然のことに驚きはしましたが、ひとまずゆっくり話を聴きますと言って、私の目の前の席に座っていただきました。
 その学生(仮にA君としましょう)はこんなことを語っていました。
「就職活動をスタートするときに、あなたの会社の主催する就活フェアで適正診断をやりました。そこで、自分はS Eに向いているという診断結果が出たのです。その診断結果通り、僕はS EになるためにI T企業に応募していましたが、4年性の11月の時点でまだ内定が1つもないんですよ!あんなインチキな適性検査のせいで、僕は就職できないかもしれません。責任をとってくれるんですか?」
応募した企業は50社全滅(それだけ応募し続けられることが、素晴らしいと思います)殆どが、書類や筆記試験でN Gだったそうです。「適性診断で向いていると言われたから」という理由だけで応募していれば、それは書類が通らないでしょう。そんな志望動機を書いてしまっていたことも問題ですが、さらに、問題なのは筆記試験でN Gだったということ。一般的な筆記試験で有名なのはS P Iや玉手箱というテストですが、I T業界の場合多くの企業の筆記テストはC A Bというテストです。S P Iや玉手箱が基礎的な学力を測るテストであるのに対して、 C A Bでは暗算(計算能力)・法則性・命令表・暗号などの分野によって、論理的思考を測ります。IT業界での仕事はロジカルに言語を積み重ねてシステムを作り上げる仕事ですからね。
A君は法学部の学生で、数学がとても苦手だということでした。では、なぜ適正診断で「S E」という結果が出たのでしょうか?A君がやった適性診断は性格診断のようなもので、各問題を自己評価で採点します。要は、自分で点数を操作できるのです。「こんな自分になりたい」という憧れの自分を想定して採点すれば、現実とは異なる結果が出てくることもままあります。A君は、「文系の学生は就活が厳しい」という噂を聞き「理系っぽい自分だったら、就活もうまく行くのでは?」と思いながら、適正診断を受けたとのこと、そして理想通りの結果が出たので、それを信じて行動したそうです。しかし当然ながら、結果は出ず・・・。どうしてもクレームを言いたくて、自分が実施した適正診断を掲載していた会社のイベントに乗り込んできたと言うわけですね。
 話をしているうちに、A君も適正診断結果を自分の理想に近づけて操作していた事や、筆記試験に落ちると言うことの意味について気づいてくれました。でも、数学が苦手なのに、うっかりS Eとして働くことになっていたら、働くことが苦痛になっていたかもしれません。不採用になっていて良かったと、前向きに捉えてもらえるように声をかけました。また、診断結果を信じて行動したこと、クレームを言いにわざわざイベントに来て、実際に私のところにクレームを伝えたこと、この行動力は素晴らしいと言うことも。諦めずに行動できることは強みだから、それを活かしてねとお伝えした所、「実は僕、出版や文章を扱う仕事をしたくて、仲間と自主出版のサークルを作っているんです」と言って、サークルの名刺を渡してくれました。本当にやりたいことがあるのに、周囲の情報に流されてしまっていたんだね。
A君は「色々話したら、スッキリしました。自分のやりたいことをもう一度考えて就活やり直します」と言ってカウンセリングブースを去って行きました。

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