キャリアアドバイザーのウラベがお勧めする!サマーインターンシップへの向き合い方
キャリアの自由研究、9回目の投稿になります!
5月は大学生の就職活動においての分かれ道。
年明けから頑張ってきたことがうまく成果につながった学生と、そうではない学生の違いが出始めるころになります。
キャリアカウンセラーとしては、うまく内定を取れなかった学生が
どう軌道修正していくのか、がテーマになっていく時期でもあります。
そして、25卒の就活がまだまだ終わりが見えないのに26卒の学生たちが動き始める時期でもあり…季節の移り変わりの早さをいつも感じます。
そう、今回のテーマは「インターンシップ」。
26卒の学生たちはそろそろ夏休み期間に参加するインターンシップについて調べ始めるころ。ところで、昨年からインターンシップの制度が変わっていたことは皆さんご存知でしょうか?今回のnoteではインターンシップの向き合い方について研究論文をもとに執筆いたします。
インターンシップの変更点
そもそも「インターンシップ」とは就業体験を含むという言葉の意味がありましたが就業体験を含まないセミナー形式のものが広く行われてきました。
いわゆる「1dayインターンシップ」と呼ばれてきたものです。
この現状について特に官・学の方面から批判があり、呼称を変更することが検討されてきました。本来の就業体験を含むインターンシップとは離れている、という理由でしょうか。
就職ナビサイトでも、ここ数年は「1day仕事体験」といった名称に変更しています。昨年、その方向性が文部科学省・厚生労働省・経済産業省の三省の合意として見直されたのです。
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000986401.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000949684.pdf
タイプ1・2が「インターンシップ」と呼称しないもので、これまでの1dayのような就業体験を含まないものがこれに含まれます。
対してタイプ3は短期で5日以上、長期で2週間以上、タイプ4は2カ月以上と長期的なものとされています。
そして、タイプ3・4は3月の広報活動、6月の面接活動の解禁以降であれば採用情報を活用して良い、つまり採用に直結して良いという制度になります。
企業にとってタイプ3・4はコストがかかってしまうけど、採用にメリットをもたらせるという点が企業・学生双方に魅力的と考えられます。
これまでは「1dayインターンシップ」が積極的に行われてきました。
理由として、就活ルールの変更により開始時期が後ろ倒しになったことで、企業の採用活動の積み上げを狙ったのではないかと考えます。
ーー今後どのような変化をしていくのでしょうか?
インターンシップをどう活用するか
制度は変わったとはいえ、やはりこれまでのタイプ1を利用する学生も企業も多いのではないでしょうか。
そして、もちろん活用の仕方が徐々に変わっていく可能性もあります。
そこで、タイプが分かれていった制度下でどうインターンシップを活用するのか(タイプ1は厳密にはインターンシップとは呼ばないが)、が学生の皆さんにとってとても大切なことになるのではないかと考えます。
どういった内容がいいのか?日数は短いもの?長いもの?
オンライン?対面?
このあたりの相談を受けることがよくあります。
そこで今回はインターンシップに関する研究論文をご紹介します。
今回の研究論文
初見・坂爪・梅崎らが2021年に発表したもので、タイトルは
「多様なインターンシップ経験と効果の一考察」というものです。
この研究は507名(男性158名,女性349名)の大学3年生・大学院1年生を対象に調査したもので、インターンシップへの参加の有無、社数、日数がキャリア形成にどう影響を及ぼすかという点について明らかにしようとしたものです。
特に注目すべき考察を以下に引用したいと思います。
この部分の説明の前に、前提としてキャリア形成の尺度として
①キャリアの焦点化(「将来のキャリアについて,興味・関心が絞られ,明確化されること」p.3,4)
②キャリアの展望化(「自らの将来のキャリアについての可能性が広がること」p.4)という概念を用いています。
焦点化は「絞り込む」、展望化は「範囲を広げる」という意味が含まれています。
そして、インターンシップへの参加経験がこの焦点化・展望化にどう影響しているかという分析を行ったところ、文系学生は焦点化を促進したが、理系学生は抑制した。
そして、展望化に関しては文系・理系ともに影響を与えなかったとした。
私の意見としては理系学生はある程度専門分野を持っているがゆえに、すでに焦点化されているからこそインターンシップがあまり影響しなかったという可能性があるように感じました。
問題は文系学生について。
焦点化は促進されるけど、展望化は影響されない。
この結果をどう解釈するのか、がとても大事に思います。
インターンシップは絞り込むもので、広げる効果はない?
インターンシップに参加する理由として、
「将来のやりたい仕事を探したい」という目的を持って参加する人は多いはず。
にも関わらず、展望化、つまり「広げる」効果はこの分析結果にはみられませんでした。
それは当然のことで、例えばA社のインターンシップに参加しても、A社の方々は他の会社よりも自分の会社に興味を持って欲しいので広げるための情報提供などはなかなかできないのではないかと考えます。
つまり、自分でしっかりと「意図的に広げよう」という考えを持っていろいろな業界や職種について学べるインターンシップに応募しないと、なんとなく参加してしまうと気が付かないうちに自分が興味があるところだけ受けてしまい、結局「展望化」はなされずに「焦点化」だけが行われてしまい、インターンシップに参加した目的が達成できないまま秋冬の本選考を迎えてしまう可能性があります。
すると、応募先が広げられず絞られた業界・職種の選考を受けることになり「もっと他にあるんじゃないか?」「広げた方がいいのかな?」という
モヤモヤした感覚を引きずったまま就活に突入することにもなりかねません。
もちろん、インターンシップの目的として絞り込むことを狙っている人にとっては効果は期待できますが、広げたい人はしっかりと自分でコントロールできるようになりたいですね。
その意味でも、サマーインターンシップでは興味のある業界や仕事内容だけでなく、展望化を目的として「選択肢を広げていくこと」をキャリアアドバイザーとしてはお勧めします。
【引用文献】
・初見康行、坂爪洋美、梅崎修(2021)「多様なインターンシップ経験と効果の一考察日本労働研究雑誌」63 (8), 41-57,