[6分短編小説]SAINT-宗教と聖人と黙示録と偽りの救世主は殺戮を望む-
SAINT-宗教と聖人と黙示録と偽りの救世主は殺戮を望む-
2040年──17歳の、公正取引委員会のカジノ・賭博分野審議官の、少女、マレ・インスラ・ウェルテックスは、無宗教だ。マレの、父親、ヒエムスも、無宗教で、娘の、宗教関与を、忌避し、マレは、権力者が、宗教を、使う事を、熟知して居た。また、宗教に対して、余り、良い印象を、持っていなかった。ソル人の、多くは、無宗教だ。
同時多発複合災害・同時多発核攻撃から、1ヶ月後、臨海副都心、オーケアヌスの、審議院議員仮庁舎で、会議が、開かれる。審判長が、議題を、挙げる。
「今回の、同時多発複合災害・同時多発核攻撃を、預言して居た、ゲームが有る。国内最大手の、RPGゲーム企業、game社の、最新ゲームソフト、国民的RPG、real fantasy®︎だ。」
40代半ばの、ナチュラルストレートの、女性の、公正取引委員会の、カジノ・賭博分野審議官、ウェヌスタは、元カジノ・賭博分野審議官の、ヒエムスが、本件を、予測して居た事を、思い出す。ウェヌスタが、皆に、語り出す。
「ヒエムスが、何か、知って居るかも、知れません。彼は、本件が、超大国3カ国の、共同作戦である事を、知っていた。」
ウェヌスタは、量子暗号通信のsecret message®︎で、ヒエムスに、連絡する。ヒエムスが、回答する。
「RPGゲーム、real fantasy®︎は、制作に関わった。娘の、マレの為の、物語だ。但し、キャラクターの配役や、細部は、関与していない。あくまでも、アドバイザーとして、関わった。」
20代の、熱血漢の、男性の、カジノ・賭博分野審議官、ウィースが、質問する。
「このゲームは、ダウンロードコンテンツが、予定されている。俺たちは、このダウンロードコンテンツが、次に、ソルに起こる事の、予言や、計画ではないかと、疑っている。一神教クルクス教の、黙示録と、聖人復活の、話だ。このダウンロードコンテンツについて、何か、知っているか?」
ヒエムスが、返答する。
「ダウンロードコンテンツの、話は、知らない。初めて、聞いた。」
30代半ばの、カールした、癖毛の、女性の、カジノ・賭博分野審議官、ヴァニタスが、答える。
「真相を、明らかにする為に、私が、game社に、向かいます。」
ヴァニタスは、超大国、ベルルム人で、島国ソルの、出身ではない。先日まで、デジタル世界政府の、転覆と、再構築を目指す、『絵柄』という、秘密結社の、カードの女王、No.2だったが、計画の、最終局面で、組織を、裏切り、ソルの為に、戦い、カジノ・賭博分野審議官に、新しく、任命された、経緯がある。ヴァニタスは、まだ他の、審議官や、職員、審判長からの、信頼を、勝ち得ていないと、感じていた。信頼を、勝ち得る為に、回答すると、即座に、席を立ち、game社に、向かってしまった。ヴァニタスが、去った後で、審判長が、ヒエムスに「彼女を信用して大丈夫か」と、問いかける。
ヒエムスが「彼女は信用に値します」と、返事する。
3大副都心、カステッルムに、game社はある。ヴァニタスは、game社の、受付を、訪れる。
「公正取引委員会の、カジノ・賭博分野審議官、ヴァニタス・ミセリア・マエスティティアです。査察に、来ました。」
受付の、game社の、社員が、ヴァニタスに問う。
「審議官の、デジタルパスポートは、お持ちですか?」
ヴァニタスは「手のひら静脈認証で」と、回答し、手のひらを、静脈個人認証読み取り機、smart hand reader®︎に、翳す。
受付が「査察通知は、来て居ませんが...」と、戸惑う。明らかに、ヴァニタスの、来訪を、歓迎していない。
その時、受付に、レース・プブリカエ人らしき、金髪、色白の、30代前半に見える、1人の、女性が、近づいて来て「まぁ良いじゃない。」と、告げる。受付嬢が、声を出す。
「プルイーナ取締役。」
取締役プルイーナは、高層階の、椅子や、机が、自動移動出来る、カンファレンスルーム、smart room®︎に、ヴァニタスを、案内する。沢山の、人物の、大理石の、彫刻が、置いてある。まるで、石の、楽園だ。「どうも有難う」と、前置きして、ヴァニタスが、プルイーナに、質問する。
「他の、役員は、呼ばなくてもいいの?」
プルイーナが「ええ」と、口を開く。
「2人で、話がしたいわ。元カードの女王。」
ヴァニタスが、『絵柄』の組織の、No.2、カードの女王だった事を、知る者は、『絵柄』の組織の、構成員と、公正取引委員会の、審議官以外いない。ヴァニタスが、怪訝に思い「何者?」と、問いかける。
プルイーナが「そうね。貴方には、教えてもらいいかしら」と答え、告げる。
「私はgame社の、社外取締役。そして、新カードの女王。貴方が、罷免されて、私が、新しく『絵柄』の組織に、スカウトされたのよ。このゲーム会社、game社の、社員は、我が組織、『絵柄』の、経営への関与に、抵抗した。だから、私が、社外取締役として、就任し、real fantasy®︎の、ダウンロードコンテンツを、主導した。本来、貴方が、行うべき事だったのよ。元カードの女王、ヴァニタス。知りたい事は、知れたかしら?」
ヴァニタスが「まだ、話は終わっていないわ」と続けて、質問する。
「ダウンロードコンテンツの、オマージュ元である、一神教クルクス教の、聖書によると、大量虐殺の後、聖人が、降臨する。聖人は、何処にいる?」
プルイーナが、提案する。
「ギャンブルで、私に、勝てたら、教えてあげましょう。私の、このカンファレンスルームには、私の為の、特注品の、ルーレット台が、ある。ルーレットにしましょう。」
ルーレットのルールは、次の通りだ。
カジノディーラーが、ルーレットのウィール(盤)を回し、ボールを投入する。
プレイヤーは、ボールの落ちる番号を予測し、賭け金(チップ)をテーブル上の数字などの、賭け枠に置く。
ボールが入った番号が、当選番号となり、外れたチップは回収され、当たったチップに、順次配当が付けられる。配当の倍率は、賭け方によって異なる。
第1ゲームが、始まる。
ヴァニタスが、賭ける。
「3rd 12(25〜36のどれかの数字が出る方に賭ける)で。」
Dozen Bet (ダズンベッド)で1st 12(1~12の数字)、2nd 12(13~24の数字)、3rd 12(25~36の数字)のグループごとに賭ける方法で、3rd 12(25~36の数字)に、30,000モネータ賭ける。配当金は3倍。勝率は33.3%。
プルイーナは、宣言する。
「赤の、16に、所持金、100,000モネータ、全て、賭けるわ。」
プルイーナはStraight Up (ストレートアップ)で、1つの数字に絞って、賭ける。配当金は36倍。勝率は1/36だ。凄い博打だ。普通は当たらない。
プルイーナが、スピンする。
8...17...35...19...21と転がり、ルーレットは、回り続ける。
25...14...4...15ルーレットが、少しずつ減速し、止まる。
《石化》
赤の、16。
プルイーナの、勝ち。
ヴァニタスには、ルーレットが、固まった様に、見えた。不可解に思った、ヴァニタスが、ルーレットの、針を、触る。表面が、鉱石の様に、ザラザラになっている。
ヴァニタスが、気付く。これは...ナノマシン!!
プルイーナは、ナノマシンを、注射していた。この時代、一部の、人間は、ナノマシン注射で、固有の、特殊能力を、発揮できる。プルイーナの、特殊能力は、おそらく、触れたものを、石化させる力だ。ナノマシンとは、0.1-100nmの極小の、機械装置だ。
第2ゲームが、始まる。
ヴァニタスが、告げる。
「今度は、私が、スピナーをするわ。」
プルイーナが「様子見ね」と、消極的に、賭ける。
「Even(偶数の目が出る方に賭ける)。」
プルイーナはOdd(オッド)・Even(イーブン)で、Even(偶数)の目が出る方に、30,000モネータ賭ける。勝率は50%、配当は2倍だ。
《透過》
ヴァニタスも、ナノマシンを、注射している。ヴァニタスの、固有能力は、自身が透明になるだけではなく、触ったものを、透明にする事が出来る。ヴァニタスは、ルーレットの針を、透明にし、スピンする。プルイーナが「これが貴方のナノマシンパワーね。曲芸対決かしら」と呟く。ヴァニタスは、透明にしたものも、目視する事が出来るのだ。
18...32...6...14...2とルーレットが、回る。ルーレットの針が、止まる、直前まで、ヴァニタスは、賭けない。
13...34....8と、針が、遅くなる。ヴァニタスが、針が止まるのを、確認して、賭ける。
「黒の、17に、所持金110,000モネータ全て賭けるわ。」
透過解除。ルーレットが、姿を現す。
黒の、17。
ヴァニタスの、勝ち。
「イカサマしたわね?貴方、透明にしても、見えているでしょう?ルーレットが止まってから、賭けたわね。」
「イカサマは、お互い様ね。このままでは、勝負は、つかないわ。ノーサイドゲームよ。さぁ、私の、知りたい事を、教えて貰おうかしら。」
プルイーナが、返す。
「ギャンブルでは、キリがないわね。いいでしょう。教えてあげましょう。ご承知の通り、我が組織、『絵柄』は、宗教を、利用して居る。カルト宗教だけではなく、一神教クルクス教が、権力の、源泉。マレ・インスラ・ウェルテックスは、神に捧げる、生贄よ。ヒエムス・インスラ・ウェルテックスは、父親として、娘を救う為に、物語を、書き換えたけど、ダウンロードコンテンツで、更に、我々が、物語を、追加した。これで、予定調和。聖人、サンクトゥス。彼は、ヒストリアに、居る。」
◇
去ろうとする、ヴァニタスに、プルイーナが、「あら失礼」と、告げる。
「貴方を、此処から出さない。貴方は、此処で、私のコレクションの、石の、彫刻の、1つになるのよ。このカンファレンスルームにある、石の、彫刻たちは、私が、石にして来た、歴戦の猛者たちよ。貴方で、30体目だわ。」
「化け物め」と呟き、ヴァニタスがサイレンサー付きスマート弾拳銃、smart handgun®︎を、取り出す。
《石化》
ヴァニタスの動きが、止まる。両足が、石の様に、重い。足先から、徐々に石化している。いつの間に、触れられていたのだろうか?ヴァニタスは、これは...もしかしてと考え、窓ガラスに、片手で、照準を、合わせた。
プルイーナが、答える。
「話しましょう。貴方に、残された、選択肢は、1つだけ。対話する事よ。」
ヴァニタスが、プルイーナに、質問する。ヴァニタスは、膝より下が、完全に、石化している。
「これが、クルクス教の善行?」
プルイーナが、ヴァニタスに、回答する。
「そうよ。善行とは、正しい行いを、する事。人助けを、する事。公の、精神・共感能力を、発揮する事。私は、貴方に、聖人の、居場所を、教えてあげた。」
神聖古代帝国より、続く国、ヒストリアにて、修道院にいる聖人、サンクトゥスに、『絵柄』の組織の、彼の、部下が、問いかける。
「お話ししても、宜しいですか?」
聖人、サンクトゥスが「どうぞ。話しましょう。」と返す。
ある者が、聖人、サンクトゥスに問う。
「善行とは?」
聖人、サンクトゥスが、質問者に、回答する。
「善行とは、クルクス教の、指示を、遂行する事。クルクス教の、指示に、疑問を、抱かない事。クルスク教を、広め、布教させる事。クルクス教の、敵を、社会的・経済的・精神的・物理的に、殺す事。」
ヴァニタスが、プルイーナに、重ねて、質問する。ヴァニタスの、石化が、股下まで、進行して来ている。
「では、悪事とは?」
プルイーナが、返答する。
「悪事とは、法を破り、犯罪・テロリズムを行う事。貴方が、いきなり、私に、発砲するのは、法に触れているわ。正当防衛なら、過剰防衛に、ならない様にしないと。せめて、私が、銃を出してから、smart handgun®︎を、向けるべきだったわね。」
別の者が、聖人、サンクトゥスに、問いかける。
「悪事とは?」
聖人、サンクトゥスが「それは...」と前置きして、答える。
「悪事とは、クルクス教の、指示を、遂行しない事。クルクス教の、指示に、疑問を抱く事。クルスク教を、広め、布教しない事。クルクス教の、敵を、社会的・経済的・精神的・物理的に、殺さない事。」
ヴァニタスが、更に、質問する。ヴァニタスは、腹部まで、下が、完全に、石化してしまった。
「では、天国とは?貴方は、天国行きかしら?」
プルイーナが、返す。
「天国とは、善行をした者が、行く所。私は、無数の敵を、葬って来た。天国に行けるかは、分からない。」
他の者が、聖人、サンクトゥスに、問う。
「天国とは?」
聖人、サンクトゥスが、返答する。
「天国とは、クルクス教の、指示を、遂行し、疑問を抱かず、広め、布教させ、敵を、社会的・経済的・精神的・物理的に殺す人が、行く所。」
ヴァニタスが、最後の、質問をする。ヴァニタスは、首より下が、石化してしまっていた。
「では、神とは?」
プルイーナが、告げる。
「人智を、超えた存在。主は、私達の事を、見ている。」
聖人、サンクトゥスに、別の者が、更に、教えを請う。
「神とは?」
聖人、サンクトゥスが、どす黒い笑顔で、宣言する。
「神は、存在し無い。」
窓ガラスに、片手で、smart handgun®︎を、向けた姿勢で、顔以外石化した、ヴァニタスが、話し出す。
「良く、わかった。貴方は、対象に、触らなくとも、目視しただけで、ターゲットを、石化できるのね。おそらく、相手は、空気中の、貴方の、ナノマシンを、吸引する事で、石化する。それが、この石化の、トリックね。貴方が、私と、ルーレットで、ギャンブルがしたいと、提案したのも、お喋りを、だらだらとしていたのも、真の、目的は、1つ。徐々に、私を、石化させる為、だったのね。貴方にとっては、時間が、必要だった。貴方にとっては、ギャンブルの、勝敗も、対話の、結論も、どうでも良かった。おそらく、貴方は、今までも、無数の、対戦相手を、相手が、気付かぬ間に、石にして来た。時に、ギャンブルをしながら。時に、話しながら。それが、この部屋の、悪趣味な、石の、彫刻の、コレクションの、作り方ね。」
プルイーナが「ふぅん」という風に、宣言する。
「種がわかったから、何だって言うの。聖人の話をしたのも、貴方が、もう、2度と、此処から、出られないからよ。貴方には、もう、どうする事も、出来ない。貴方は、その射撃姿勢のまま、永遠に、固まるわ。最後の、望みが、あるならば、聞くわよ。元カードの女王。」
《透過》
ヴァニタスが、姿を消す。ヴァニタスが、何とか、人差し指を、動かし、窓ガラスを、打ち抜く。新鮮な、外気が、入り、部屋が、換気される。ヴァニタスは、深呼吸を、繰り返し、吸入した、体内の、プルイーナの、体を、石化する、ナノマシンを、体の外に、排出する。換気と、呼吸の結果、ヴァニタスの、石化が、徐々に、解除され、再び、動けるようになる。サイレンサー付きsmart handgun®︎を、プルイーナに、連射する。
《石盾》
「ちぃ」と舌を打ち、プルイーナが、左手で、石の盾を、作り出し、スマート弾を、弾き告げる。
「貴方を、甘く見過ぎたわね。貴方が、頭部以外、固まっている時に、額を、撃ち抜くべきだった。」
プルイーナが、通常の銃を、取り出す。
ヴァニタスは「まだ甘い」と囁くと、プルイーナの、背後に周り、プルイーナの、腕と、手を、掴み、プルイーナの、持つ銃を、彼女の、頭に、向ける。これでは、プルイーナが、引き金を引けば、自分の額を、撃ち抜く事になってしまう。プルイーナは、どうする事も出来ない。ヴァニタスが、宣言する。
「私は帰るわ。異論は、ないわね?石の女」
プルイーナが、唸る。
「舐めてたわ。カメレオン女。」
ヴァニタスは、姿を消したまま、去る。
オーケアヌスの、審議院仮庁舎で、ヴァニタスは、審判長と、カジノ・賭博分野審議官たちに、報告する。
「『絵柄』の組織が、カルト宗教や、一神教、クルクス教を、利用しており、新カードの女王を、名乗る女と、対峙しました。ヒストリアに、聖人と、呼ばれる男が、います。」
審判長が、ヴァニタスに、質問する。
「聖人を、どうする?」
ヴァニタスが、即答する。
「私が、対処します。ヒストリアに、行き、ダウンロードコンテンツの、黙示録の、計画を、阻止します。」
50代の、短髪ダンディーな、男性の、カジノ・賭博分野審議官、パッシオが答える。
「real fantasy®︎が、マルチメディア展開した。ソル国内の、カルト宗教信者を、使い、ブームを、演出するだろう。アニメ・映画で、人気が出る、可能性が有る。」
80代の、男性の、カジノ・賭博分野審議官、クレーメンスは、答える。
「時間は、余り無い。」
ヴァニタスが、頷く。
ヴァニタスは、首都空港ウェントゥス近くの港で、2030年代に、開始した、高速旅客船、marine speed®︎に、乗船する。ヴァニタスは、出航の、ウェルカム・パーティーや、船内カジノに、参加せず、客室で、過ごす。コンシェルジュが、ワインを、持って来る。ヴァニタスは、元居た『絵柄』の組織の、晩餐会を、思い出し、複雑な、気持ちになる。主な、寄港地は、芸術国家、アルス、そしてヒストリアだ。
アルスを、過ぎる迄、運航は、順調だった。サンクトゥスは、ヒストリアの、首都、アレーナの、2020年代に、始まった、半自動カフェ、smart cafe®︎の、屋外で、自動開閉昇降式パラソル、smart parasol®︎の下で、コーヒーを、飲んでいた。
「元カードの女王が、船で、来るか。手厚い、歓迎を。」
ヒストリア近海で、暗雲が、立ち込め、marine speed®︎の、デッキにいた、乗客近くに、雷が、落ちる。marine speed®︎の、船長が、船内アナウンスをする。
「落雷多発の為、お客様・職員は、至急、船内へ、退避して下さい。」
ヴァニタスは、1人で、カード遊びの、カウンティングをして居た。
「1枚目が、J、2枚目が、Q、3枚目が、K。」
サンクトゥスは、smart cafe®︎のテーブルに、カードを、並べる。
「J。」
「Q。」
「K。」
ヴァニタスが、呟く。
「その次は、A。」
サンクトゥスが、呟く。
「A。」
「我は、新カードの騎士、この世界の、救世主なり。」
◇
ヒストリアの、首都、アレーナで、聖人、サンクトゥスが、信奉者に、語り出す。サンクトゥスには、幾つかの、逸話があった。まず、特定先端技術疾患の、治療。特定先端技術疾患とは、0.1-100nmの極小機械、ナノマシンの、注射が、稀に引き起こす、免疫疾患や、各種病状を、統合した病気の、総称だ。サンクトゥスが、患者に、触ると、光の奇跡が、起こり、特定先端技術疾患の、患者が、治ったと言う。更に、彼の、頭頂部に、光の、冠が、あり、背後に、十字架の光が、見える事。そして、談話すると、必ず、雷が、修道院に、落ちる事。数々の、伝説を、有していた。
「黙示録は、止まらない。神の、殺戮の後、救済が、訪れ、1,000年王国が、築かれる。」
ヴァニタスは、ヒストリアへ、到着する。2030年代に、登場した、高速鉄道、land speed®︎で、首都アレーナへ、向かう。
land speed®︎列車内で、裏社会風の、男が、ヴァニタスに、近付き、smart knife®︎を、取り出す。ヴァニタスが、飛び出し、回避し、告げる。
「♣︎5、"無頼漢"ペッカートゥムか。」
ヴァニタスは、車両移動し、貫通扉を、閉め、時間稼ぎをする。屈強な、男性の、ペッカートゥムに、力負けし、扉は、徐々に、開いて行く。ヴァニタスが、腰の位置で、貫通扉ガラス部分から、サイレンサー付き、smart handgun®︎を、早撃ちする。ガラス部分を、貫通し、ペッカートゥムは、倒れる。アレーナ駅で、ヒストリア警察が、land speed®︎に、立ち入る。
「お怪我は、ありますか?」
ヴァニタスは、返事する。
「擦り傷よ。」
ヒストリア警察が、問いかける。
「デジタルパスポートは、お持ちですか?」
ヴァニタスが、返す。
「ソルの審議官、ヴァニタス・ミセリア・マエスティティアよ。」
ヒストリア警察が、paper phone®︎のカメラで、照会後、返答する。
「ヴァニタス審議官、お探しの、聖人、サンクトゥスは、首都アレーナの、ルーメン大聖堂に、居ます。」
ヴァニタスが、回答する。
「ご協力、感謝する。」
ヴァニタスは、アレーナ駅を出て、2030年代に、始まった、smart taxi®︎で、ルーメン大聖堂に、向かう。ルーメン大聖堂に、入場した、ヴァニタスを、待って居たのは、スーツを着た、スマート弾マシンガン、smart machine gun®︎を持つ、『絵柄』の組織の、男たちだった。神の子を、模した、髪型・服装の、30代位の、男が、出て来て、嘲笑う。頭頂部に、光の、冠が、浮かんでいる。
「ヒストリア当局とは、知り合いだ。大聖堂は、安全だと思ったか?」
ヴァニタスが、問う。
「貴方が聖人、サンクトゥスね?」
サンクトゥスが、自慢げに、答える。
「俺は聖人。そして、もう1つの顔は、新カードの騎士、サンクトゥス。君は、此処に、死にに来た。地獄へ、堕ちたまえ、元カードの女王。」
《透過》
ヴァニタスは、姿を消し、逃走する。
新カードの騎士、サンクトゥスが、罵る。
「逃げるか?元カードの女王。」
ヴァニタスは、市街地に、出る。スーツ姿の、男たちが、路上・室内・屋上・車内で、smart machine gun®︎を構え、待機して居た。ヴァニタスは、1人の、smart machine gun®︎を、強奪し、路上の、人工合成樹、hybrid tree®︎の、陰から、乱射する。街が、戦場に変わる。
ヒストリア機動隊が、展開し、スーツ姿の男たちに問う。
「どんな女だ?」
スーツ姿の、男たちが、返答する。
「姿を、消している。」
親衛隊で、囲んだ、サンクトゥスは、スマート高級車、smart luxury car®︎に、退避する。ヴァニタスが、裏社会風の、smart luxury car®︎を、手当たり次第、強襲して、サンクトゥスを探す。数台目の、smart luxury car®︎内部に、サンクトゥスを、発見する。サンクトゥスは、両手に、smart machine gun®︎を携え、下車し、答える。
「援軍が、来る。お前は、袋の鼠だ。」
ヴァニタスが、宣言する。
「時間が、無いわね。」
ヴァニタスが、背後を取り、しがみ付く。サンクトゥスが、嘲笑する。
「無理だな。力が無い。」
ヴァニタスが、右足首携帯の、smart knife®︎で、サンクトゥスの、背中を、刺す。
《自動電膜》
smart knife®︎が、体表で、止まる。ヴァニタスが思う...これは、ナノマシンだ。サンクトゥスは、ナノマシンを、注射し、特殊能力を有している。この手の、痺れは...電気か?
ヴァニタスは、マレの、smart bracelet®︎を、借りて、隠し持って居た。マレの、smart bracelet®︎には、波動と言う、電磁パルスを発し、ナノマシンや、凡ゆる電子機器を、無効にする、マレの父親、ヒエムスの、血液が、搭載されていた。ヴァニタスが、smart bracelet®︎を、起動する。
《極小域電磁パルス》
ヴァニタスが、姿を現し、サンクトゥスの、体を覆う、自動防御の、電膜、自動電膜が、解除される。サンクトゥスの、右の、外耳道を、smart tactical pen®︎で刺す。サンクトゥスが、悶え、転がる。
《電雷》
暗雲が、空を覆う。サンクトゥスが、顔を、歪めながら、宣言する。
「俺の、ナノマシンパワーは、光。俺の、頭頂部に、光の、冠があるのも、俺の、背後に、光の十字架が、浮かぶのも、このナノマシンパワーの、お陰だ。光子信号で、ナノマシンの不調を、治す事も出来て、特定先端技術疾患の、治療も出来る。人工衛星の、光子レーザーを、誘導すれば、狙った場所に、雷を落とす事も、出来る。これから、お前に、人工衛星の、光子レーザー誘導で、電を、落とす。」
ヴァニタスは、考える。雷を、落とす場所を、指定している、光子レーザーの、設定は、おそらく、サンクトゥスの、目視だ。ならば、姿を、消せば良い。
《透過》
ヴァニタスの、付近に、落雷する。ヴァニタスは、近くの、smart cafe®︎に、身を隠す。サンクトゥスが、大声で、告げる。
「隠れても無駄だ。」
《広域電雷》
アレーナに、落雷が、多発する。サンクトゥスが、宣言する。
「10数える間に、出て来なければ、世界を、雷で、焼き尽くす。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。」
《超広域電雷》
世界中に、異常落雷が、起こる。ヴァニタスが、路上に出て、皮肉を言う。
「これが、貴方の作り出す、天国か。地獄、だわ。」
《超広域光射》
世界中の、空に、十字架のホログラムが、浮かぶ。サンクトゥスが、宣言する。
「信じる者は、救われる。不届者は、地獄に堕ちる。この世界と、共に、雷に撃たれろ、元カードの女王。貴様の役目は、終わったのだ。見ろ、世界を、覆い尽くす、落雷を。キラキラ、輝き、美しい。轟音と、共に、裁きを下す、神の審判だ。俺は、もはや、人ではない。」
ヴァニタスが、冷めた眼差しで、返す。
「神と、聖人の名を、語る、唯の大量虐殺よ。正しいクルクス教の道にも、反しているわ。真っ当に、必死に、クルクス教を信じている、10億人の、人々に対する、背任行為よ。絶対に、間違っているわ。本来、宗教は、命を救う為にある。貴方の、している事は、命を殺める行為、正反対の事よ。」
ヴァニタスが、サンクトゥスに、再び、しがみ付く。この男を、止めなければ、世界中が、大変な事になる。サンクトゥスが、口を開く。
「聖人は、自己犠牲だ。俺ごと、お前に、落雷させる。ブラフだと、思うか?」
《自動電膜》
サンクトゥスは、自らに、落雷しても、大丈夫な様に、自動の、電膜で、電気の、逃げ道を、用意する。
《極小域電磁パルス》
《電雷》
ヴァニタスは、ヒエムスの、血液搭載smart bracelet®︎を、起動する。電磁パルスが、放たれ、サンクトゥスの、自動電膜が、停止する。ヴァニタスは、直前に、サンクトゥスから、飛び離れ、雷が、サンクトゥスに、直撃する。焦げた、サンクトゥスの、ナノマシンが、コントロールが、乱れ、暴走する。ヴァニタスが、自身の、スマート弾の、コレクションを、スーツの内の、ポケットで、確認する。瞬間高温弾、スマートヒート弾、瞬間冷凍弾、スマートアイス弾など、ヴァニタスは、スマート弾を、複数集めている。その中から、ヴァニタスは、超電動磁力弾、スマートマグネット弾を、6発、smart handgun®︎に、装填し、全弾、サンクトゥスに、発射する。
《電膜》
サンクトゥスの、光の膜で、全弾、サンクトゥスの、体表で、スマート弾が、停止する。
サンクトゥスが、口から、煙を出し、告げる。
「何をしても、無駄だ。神の、裁きを、喰らえ。」
ヴァニタスが、答える。
「止めた方が、良い。」
《電雷連射》
サンクトゥスが、無数の、雷を、放つ。ヴァニタスの、放った、サンクトゥスの、体表の、超伝導磁力弾、スマートマグネット弾で、サンクトゥスは、動く避雷針に、なっていた。雷が、全て、サンクトゥスに、引き寄せられ、落雷する。
世界中の、雷が止まる。曇天が、晴れ、晴天が、世界を、覆う。ヴァニタスが、吐き捨てる。
「地獄行きね。」
ヴァニタスは、高速旅客機、air speed®︎で、ソルに、帰国する。
オーケアヌスの、審議院で、報告する。
「ヒストリアで、新カードの騎士、聖人、サンクトゥスと、交戦し、鎮圧しました。」
審判長が、称賛する。
「良くやった。君が、阻止しなければ、被害は、拡大して居た。世界中、復興で、忙しい。」
パッシオが、安堵の声を、口にする。
「無事で、何よりだ。」
ウィースが、心境を、吐露する。
「心配したぜ。」
クレーメンスが、喜びを、表す。
「再会を、喜ぼう。」
ウェヌスタが、讃える。
「貴方を、誇りに思う。」
ヴァニタスは、口を開く。
「初めて、本当の仲間に、なれた気がする。」
パッシオ、ウィース、クレーメンス、ウェヌスタは、微笑む。
ヴァニタスは、微笑む。ヴァニタスは、初めて、心からの、笑顔を、皆に、見せた。