見出し画像

委任するステーク・プールの選び方と選ぶ時に気を付けること

こんにちは!これからステーキングを始めてみようという方向けに、委任先プールの選び方で、私が委任者として、オペレータとして見ているところ、気を付けているところなどをまとめていければと思います。「こんな見方があるんだ」と思っていただけたり、リスク回避のお役に立てれば幸いです。

データは主にPoolToolを元に考察していきたいと思いますので、ぜひご覧になりながら読んでいただければと思います。

関連情報

比較的中立的な情報としてのご参考

更新履歴

2022年7月:「取引所のプールがブロック生成を停止」について追記

委任おさらい

PoS(プルーフ・オブ・ステーク)によって、ADAをステークプールへ委任することで報酬をもらえます。
「ADAをステークプールへ委任」といっても実際にADAを送金するわけではないので、委任中に別のプールへ委任変更することも、委任中のADAで売買することも可能です。その額に応じて報酬が減るだけです。資産を増やして返すとうたい、ADAを「委任」ではなく「送金」するように指示する人がいたらそれはおかしいのでくれぐれもご注意ください。

ADAを持つということは、ネットワークに参加してブロックを生成する権利と義務があるということになります。ホルダーはADAをステークプールへ委任することで、義務も委任できます。そうすることでプールはより高い確率で義務を果たせるようになり、ブロック生成による対価を得ることができるようになります。

ブロック生成に関しては、Ouroboros Praos consensus algorithmというランダム要素に大きく左右されます。エポック中に生成できるブロック数がランダムに変わり、結果報酬もランダムに上下します。同じ設定のプールを見比べてもROSとエポックブロックが違います。また、プール同士でのブロック生成がかち合ったときの、スロットバトル、ハイトバトルといった要素もあります。そのため、毎エポック決まった数のブロック生成ができるわけではなく、報酬額もいつも違います。

委任から報酬分配までの流れ

エポックと報酬支払い

※ 1エポック=5日

委任者視点で、簡単に図を説明すると、下記のような流れになります。

  1. 委任をする。

  2. 2エポック経つと、ステークが有効になる。

  3. 有効になったステークに対して、報酬が計算される。

  4. 報酬が支払われる。

そのため、委任をしてから実際に報酬が発生するまで15~20日ほど待機時間があります。上図を各エポックで繰り返し、以降、委任を解除、または移動しない限りは委任しているプールでの報酬は続きます。全てシステムが計算するため、オペレータはリワード計算、支払いに関与しません。

報酬分配までの計算

PoolTool上のプール情報

PoolToolに関わらず、Daedalusウォレット、Yoroiウォレット、プール関連サイト上では、プールの様々な統計情報が表示されています。

この中でリワードに影響のある、委任手数料 (Variable Fee) 、固定手数料(Epoch Fee)などを確認していきます。

エポックごとに、下記のような計算がなされ、報酬が決まります。

  1. 固定手数料が差し引かれプール・オペレータへ払われる。

  2. 委任手数料が差し引かれプール・オペレータへ払われる。

  3. 残りのADAがステーク量に応じて委任者とプール・オペレータに分配される。

例:プールの報酬が1000 ADA、固定手数料340 ADA、委任手数料3%の場合、エポックの最後に、

  1. 340 ADAをプールの固定手数料として引かれる。

  2. 残りの660 ADAの3%、19,8 ADAがプールに支払われる。

  3. 残りの640.2ADAがステーク量に応じて委任者とプール・オペレータに分配される。

そのため、当たり前ですが手数料等が委任者のリワードへ影響します。
もう少し詳細に踏み込んだ内容はこちらへまとめております。

どのくらいの報酬を期待できる?

まずは、公式のStaking calculatorがあるので、時間の経過とともに報酬がどれくらいになるものなのかシミュレーションしてみると良いかと思います。Daedalus、Yoroiウォレットから見込み報酬の確認も可能になります。

下記は委任量(ステーク数)に応じた、1エポック、月間、年間での報酬目安です。(変動手数料 0%、固定手数料340ADAの場合)

2022年時点での参考値

注意点としては、報酬はビットコインの半減期の様に、時間とともに(ADAの場合は徐々に)減っていくものになります。同じ条件でも1年後では違った報酬になります。そのためあくまでご参考値としてご理解ください。

たくさんのユーザがCardanoネットワークへ参加することでトランザクションが増え、送金手数料の支払いが活発になることで報酬へ良い影響があります。

パラメータがたくさんありますが、どれを参考にすれば良いでしょうか?

手数料の確認

まず、誰もがチェックするであろう手数料について触れます。リワードを効率よく得るためには、「報酬分配までの計算」で触れた通り、固定費用と委任手数料がダイレクトに関わってくる値になりますので、まずはこれらに注目してみます。

下記は、ご参考までに、委任手数料の変更による委任者のリワードへの影響をシミュレーションした表になります。

  • 100K ADAを委任したと仮定

  • 手数料が0~5%の間で変動した時の、それぞれの報酬シミュレーション(ADA)

  • エポック286の時のデータを使用(Luck/もしくはパフォーマンス: 80%)

  • プール手数料は固定費(340 ADA)を含む

これはエポック286の時に当プールへ100Kを委任していた場合のエポック(5日)ごとの報酬シミュレーションです。10K の方は1/10、1Mの方は10倍で考えていただければと思います。他のプールでも、同じような設定の同じようなステーク量、ブロック生成成績の場合は、同じような結果となります。

劇的な変化は見られないですが、手数料が高くなるほど報酬は少しずつ低くなります。

個人的には委任手数料が2%を越えるあたりでもらえるリワード額の変化が気になり始めました。

皆さんはどのラインが気になりましたでしょうか?

また、5%になると、0%の手数料と比べて、プールの利益が倍近く違うことが分かります。

ここでは報酬の観点でのみ書いてしまっておりますが、手数料が低いプールを推奨する意図ではありません。プールの活動内容や、Cardanoへの貢献度なども委任先選択の大事な考慮点として加えていただければと思います。

継続的な報酬分配ができているかの確認

次に、プールが継続して報酬分配できているかどうかを確認します。例えば、手数料が低くく設定されていても、サーバの稼働面で障害が多かったり、アップデート含めメンテナンスが行き届いていないと、ブロック生成を逃し、結果として報酬が減ってしまいます。

固定手数料、委任手数料が低いと、その分報酬分配のためのADAが多く残ります。しかし、ステーク・プール・オペレータの観点からみると、手数料は長期における信頼性を高く保ち、持続的にアップグレードをする、情報収集をするなど、運用をしっかりするための資本ともとらえられます。信頼性が高く安定して稼働することで、ブロック生成の機会を確実に得て、長期的には高い報酬になります。サーバ代だけではなく人件費も含め、事実に即した手数料を設定することが推奨されています。

そのため、ブロックが継続的に生成できていることの確認はとても重要です。

PoolToolの場合は、下記を確認します。

  • エポックブロックが継続的に増えているか

  • 総ROSが4-5%近くか?(プールが継続的にリワードを分配しているか)

下記は、ステーク量(委任量)で表されるプールの大きさと総ROSの相関を表しています。ステークが大きくなるにつれてROSは5%近くで落ち着いていくことが読み取れます。このことからも、2021年時点では5%前後が一つの目安となりそうです。また、短期的には、ステークが小さいプール(左)は高/低ROSになることがありますが、継続的に運用をしていくと平均化されていきます。

  • ROSはPoolToolにおいてどれだけ報酬によるリターンがあるかを示す指標ですが、長期で委任を続けているとプールの大小関わらず、約5%へ収束するといわれています。

  • もらえる報酬は日々少量ずつ減っているため、将来目安となる水平のラインが下がっていくことが予想されます。

章のまとめ

もう一つ、オペレータの出資金も報酬額に影響があるため、高いに越したことはないですが、影響力は巨大ではないようです(2021年4月現在)。プールの大小に関わらず、しっかり運用が続けられているプールであれば、長期としては似た値の報酬が得られるといわれています。

体感でもそうですが、運による要素が大きく、同じADA数を委任した状態でもエポックごとに報酬が多かったり少なかったりと、振れ幅があります。短期では報酬に幅が出るが、長期的にはならされていくといわれています。

極端に手数料が違わない限り、「どのプールでも報酬は大きくは変わらないため、どこへ委任しても同じ」なのかもしれません。そこで次に大事になってくるのは、この後に述べる通り安心感だと考えております。

当ステークプールとしては、安定稼働はもちろんのこと、Cardanoネットワークに対して健全なプールを目指しております。その上で、ブログでの運用報告や、Twitterなどでの情報発信を通し、より安心してご委任いただけるよう心がけてまいります。

避けるプールを見つける

オペレータの出資

プール選択とは反対の考え方として、長期的にみて避けるべきプールをみつけるということも重要だと言えます。委任は長期的なもので、常に監視していることは難しいからです。画面越しに悪意を持った行為者を探し当てることは不可能でしょう。

まず、簡単にわかるところとしてはプール・オペレータの出資額が誓約した額に届いていない場合は報酬がもらえません。PoolTool上では、「宣言済み誓約(₳)」にバツがついています。

飽和したプール

次に、最新ステーク(Live Stake)が赤いフォントのプールは飽和してしまっているため、報酬が減衰します。飽和度をモニターし続けられれば良いです。しかし、これからステーキングを始めようとしているのであれば、飽和に近いプールは避けておくのが無難です。飽和レベルは65 mほど(2021年10月現在)になります。飽和してしまったプールへ委任すると、検証では20〜30%報酬が下がったことがあります。これは、1 プール全体で獲得できる報酬には上限があり、それに対して、委任者(ステーク量)が増えれば増えるほど1委任者の報酬が減っていきます。こうすることで委任の分散を促進するような仕組みになっています。

手数料100%近いプール

悪質なところでは、委任者が安心しきったところ急に高い委任手数料(99.9%など)に変更するプールが出たことがあります。上で見た、「報酬分配までの計算」項の「2:委任手数料が差し引かれプール・オペレータへ払われる。」の部分に当たりますが、委任手数料が100%だと、委任者が気づくまで、ブロック生成に協力しているのに報酬は全てプールへ入る状態となり、委任者への報酬はほぼなくなります。そのようなトラブルを避けるため、委任先プールのチェックは定期的にしましょう。運用情報提供など、透明性のあるプールを探すことも大事だと思います。

飽和と報酬の検証

ちなみに、飽和したプールが報酬に対してどれくらいの影響があるかをみてみたことがあります。現在(2020年12月23日時点)、飽和レベルは約64Mですが、委任量が150Mのプールをみてみました。

K=500になったエポック234以降では

Delegator Rewards: 92.4k → 39.8k (本来もらえていた報酬の約43%減)
ROS%: 4.59% → 1.95%

となり、半分以下の報酬となっています。上記はプールにおける委任者全体への支払い総額をみております。

別途、誓約2M、委任手数料0%、固定手数料340 ADAのパフォーマンスがとてもよさそうなプールへ委任してみました。飽和してしまっていたため報酬結果は下記でした。

Stake Rewards: 毎エポック約33 ADA → 23.5 ADA (他のパフォーマンス比較では劣るあるプールでもらえていた報酬と比べて約70%)
ROS%: 毎エポックだいたい5% → 3.91%

プールによって、プールの設定(委任手数料、誓約)、飽和度、ブロック生成数もそれぞれ違いますし、委任量が日々変わっているのでケースにより比較が難しいところと思います。高い割合で報酬を得る機会を失っていることが分かりました。
なのでプールのモニターと、Kパラメータの動向は委任をするにあたり定期的にチェックすることが大切となります。

中央集権的なネットワークに起こりえること

取引所のプールがブロック生成を停止

2022年6月、オペレーションの問題で、取引所の大規模プールが一斉にブロック生成を停止したという事象がありました。一時期ブロック密度が4.2%(5%前後が正常値)まで下がり、その大規模プールに割り当てられていた全てのブロック生成が停まり、インターバルごとのブロック生成率が希薄になったという結果です。Cardano Blockchain Insights でも確認するとブロックミスの割合が増えています。

大規模プールは担当するブロック数も多いため、1個人(組織)の1ミスが与える影響も大きくなり得るといえます。この点において、改善のためには多数の小規模プールがそれぞれ継続的にブロック生成できている状況が望ましいです。

まとめ

委任するプールを探すにあたり、報酬を重視する場合、「報酬を継続的に得ることで、長期的に一定割合のROSを目指すこと」が大事と言えます。
そのための確認観点をもう一度まとめます。

  1. プールの手数料が妥当と思えるか

  2. 総ROSが5%前後を推移しているか

  3. ブロック生成が安定しているか

  4. プール運営上、飽和、誓約に問題ないか

数値ばかりではなく、他にプールの活動内容、安心して長期的な委任が可能かも大事な観点だと思います。
報酬の機会損失を避けるためにも、PoolToolBot登録をしておくことでプール情報が自動で通知されるように設定しておくのもお勧めです。こちらの手順もご活用ください。

最後に、コミュニティ、Twitter、プールのウェブサイトなどを覗いてみて、ご自身にあったプール・オペレータさんをみつけ、応援の意味で委任をしてみるなども、Cardanoの掲げるプール分散化への貢献にもつながり大事な観点だと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

この記事が役に立ったなどありましたら、SUGARステークプールへの委任のご検討、ご協力をよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?