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今後の「けも好き」~pictSQUAREサークル参加費を考える~

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ご報告

 今年の8月と9月、pictSQUAREイベント「あなたは、けものがお好きですか?」を開催しました。
 pictSQUAREの認知が広がる前の第0回、この時点で実に17件ものサークルの方にご参加いただき、これから上手くやっていけると確かな手ごたえを感じていました。
 そして、先日開催した第1回では、より一層安全安心なイベントを作るために、参加条件やチェックを徹底しました。このことでいくつかの懸念はあったのですが、参加者の皆様のご協力もあり、無事にイベント当日を迎えました。
 参加サークル42件、総来場者数376件、オンリーとしては十分な規模のイベントを成功させることが出来ました。また、アバターや電子書籍ゲームなど、デジタルならではの強みを持った表現も多く、「リアル即売会とはまた違った楽しみ」を創出し、満喫できるイベントとして確立したと思います。

 pictSQUAREを見つけたばかりの、まだイベント総数も少ない頃から、どうにか「リアル同人イベントに匹敵する規模に拡大できないか」と研究・施策を続けたこともあり、それを一つの結果に繋げることが出来たことに、非常に大きな達成感を感じています。
 ですが、コロナ禍による新しい生活様式が求められ続ける昨今、リモート即売会はまだその意義を失うことはないと思います。それまでの間は、けも好きも求められる役割を全うできればと考えております。

身も蓋もない本題

 つきましては、今後のけも好きの開催なのですが、pictSQUAREが正式サービスを開始したことに合わせて、けも好きの参加が有料になります。
 それに合わせてサークル参加の金額設定を考えているのですが、pictSQUAREにおける手数料最低金額の「550円」ではなく、「1000円」での開催を検討しております。

 「おまっ…、金取るんかい!!」というツッコミもあるかと思います。
 参加者にとって費用は安いに越したことはないとも思いますし、版権タイトルの即売会を有償で行うことに逡巡もあります。ですが「取ります」

 一方で、一般参加の方は、今後pictSQUAREの機能追加で有料化が可能になっても「取らない」で方針で進めています。
 今回の記事は、みんな気になるお金回り、このあたりの方向性を決めた経緯を、赤裸々に話していきたいと思います。
 この辺は、出来ればこれからpictSQUAREでイベントの主催をする方にも読んで頂ければと思います。

サークル参加有料化の理由

 これは第一にpictSQUAREのサークル参加手数料の有料化があります。まず、今後はどうやっても最低550円はかかってしまうので、この点はどうしようもありません。pictSQUARE運営も、仕事でやっているサービスであり、霞を食べて生きているわけではありません。
 では、それに足された1000-550=450円はどういうことなのか。その根拠は以下の通りです。

(1)主催の人件費(というか保障)

 これです。
 ぶっちゃけ、主催は「場」を作るのに相当がんばる必要があります。今回で言うと、やったことは以下の通り。

■要項の調整とイベントの作成、各種スケジュール決定とその告知
■ジャンルごとの配置と配置マップ画像の作成
■イベントに向けた主催提供アバターの配布(けもフレに最適化した改変量産向けのCaras式規格の策定)
■pictSQUAREの説明用画像・動画の作成
■ジャンル内のファン向けニュースサイトへのプレスリリースの送付
■参加サークルのお品書きをRTやTogetterで拡散
■公式と権利衝突を起こしかねない作品や、原作の品位を貶める目的を明言したヘイト創作の排除
■アダルト作品の局部修正ガイドラインの策定・チェックとリテイク依頼
■参加者交流用のdiscordの管理・招待
■サークル参加者のpictSQUAREへの疑問に解答
■当日のTwitter実況やアナウンス、記念撮影の取り仕切りなど
■迷惑参加者の対応

 ……これ全部やると、期間長めに取らないと新刊が作れません(絶望) 
 
そして、当日もめっちゃ忙しいです(朝から夜までの長丁場)

 pictSQUAREは「イベントを作っただけで自動で良い感じにしてくれるシステム」です。しかし、そのイベントが盛り上がるかどうかは、当日までの積み重ねと、当日の立ち回りが大きく影響します。
 そして、次回開催に際しても「イベント自体が飽きられてしまわないだろうか…」という不安とのエンドレスバトル。
 開催する以上は盛り上がって欲しいのが、主催の心情ですしね。

 ……そして、ひそかに毎回楽しみにしているスケベ二次創作は、イベントの安全安心な運営のために、主催だけ先にネタバレを喰らうことに。もちろん、主催は修正に対する厳しめの指摘をする立場なので、エッチな気分で読んではいけません(それじゃチェックにならない)
 そして、常日頃から「いらねーっ!!111」と嘆いている【消し修正】とかいう当邦の悪しき風習を、お世話になっている(下品)スケベ作家の皆様と、火花を散らしながら、安全な方向にすり合わせなければならない……!!

 ……うーん、地獄!!
 とはいえ、スケベのコンプライアンスは昔から同人界隈の弁慶の泣き所で、刑事事件になるとイベント運営の継続性に直結するので、イベント企画者の皆さん絶対やっておいた方がいいと思います。
 そして、スケベジャンル参加者の皆さん、どうかイベント主催の方にはに優しくしてあげてください。主催も、本心では絶対に、修正とか要らねぇと思ってます。

 ……だいぶ脱線してしまいましたが、色々めっちゃ大変で、主催はサークルとして新刊を作るのが難しい状況でした。ぶっちゃけ中小規模のイベントでは、1サークル450円とっても「生活なんて不可能なレベルの黒字にしかならない」ので、どうか許してあげてください。
 ちなみに私は、収益を主催イベントでの新刊購入費用にあてると思います。地産地消。

(2)価格破壊のブレーキ

 これも実は切実な話で。pictSQUAREでの価格破壊については以前も記事を書いています。

 ピクスクの運営アカウントによると「主催がかけた工数には報酬があるべき」というのがサービスの思想で、手数料に上乗せする料金設定を自由としているようなのですが、いくつか正式サービス後の有料イベントを見た限り「ほとんどが550円」でした。……必要経費が無いから、みんな儲け叩きを恐れて無料にしちゃうんですね。
 これについてはストレートに「イベント参加費-550円*サークル数(円)」で、収益が容易に計算できてしまうからで、人件費等の概念的な経費以外が存在しないと、どうしても「儲けている」印象が勝ってしまうもので……。

 正直、550円(無料)は「お試し」はともかく、継続的に開催するイベントは「モチベの持久走」になると思います。
 ピクスクの主催には二次創作趣味が高じて主催してみたという方も多いと思います。自ジャンルにより一層盛り上がって欲しい。そういった動機の主催が多数派であることでしょう。
 しかし、企画を始めたばかりの時は「自分以外の人が興味を持ってくれずに、参加者が居なくなる不安」との戦いで、急かされるように広報の施策などを考えるようになります。また、頒布物もヘイトアダルトの修正などの対策をしなければ、同好の士が離れたり、最悪の場合は刑事事件になってしまうかもしれない……。

 不安から心身ともに休まるところがなく、同じファンとして平等の立場のはずが、主催業務に忙殺され、自分は「推し表現」とは遠ざかっていく現実……。
 それの行き着く先はどこか……包み隠さず言えば「みんなばっかり新刊が出せてズルい…」という……ズバリ【二次創作者としての嫉妬心】です。これが限界を超えて表に出てしまえば、せっかく作ろうとした「楽しい場」は崩れ去ってしまうことでしょう。
 なにより、良心から始めた二次創作の主催者が、暗黒面に落ちてしまうのは、誰も望む結末ではないでしょう……。

 だから私は声を大にして言います。「同人誌を出すのと同じように、ボランティアじゃなく、一定のお金を取りましょう」と。
 版権の無断利用でお金を取ること全般が汚い、許されないというのなら、二次創作サークルも同人誌即売会も印刷所も壊滅します。二次創作とは、汚いのは承知の上で行う、公式と利己的なファンの共存共栄の道です。
 そりゃ、権利者である公式から「汚い真似はやめろ」と言われたら即刻辞めるべきですが、二次創作者と即売会主催は、お互い金銭面ではダーティーな立場の、言うなれば共犯関係であり、相互補完的な立ち位置です。

 前提として、お互いの対等な関係のためにも自分の働き分のお金は出してもらいましょう。そして、主催に疲れて落ち込んだら、徴収した参加費でうまいもの食べに行ったり、推しのグッズを買いましょう。フラットになってみれば「参加費は払うので、次のイベントもあなたに開いて欲しい」という方は、きっといるはずです。

 ……それでも、どうしようもなく辞めたくなった時は、イベントを丸ごと誰かに譲ってしまいましょう。志を引き継いでくれる後継希望者も現れるかもしれませんし、主催業務が「際限のない無償奉仕」じゃなければ、主催を押し付ける事への遠慮も多少軽減されるでしょう。
 そして、全てを託したあなたは、サークル参加者としてスペース費を払い、今度は一介の二次創作としてファン活動を満喫する……そんな逃げ場を与えてくれるかもしれません。

 そんなわけで、他の多くの主催の方が無利益でイベントを主催している中ですが、当方は「お金は取るべきだ」というスタンスで、イベントを運営していきますし、できれば他のイベント主催も、同人誌を売るのと同じぐらいには有償イベントを作りやすいように、状況を変えられればと思っています。

 お金で買えない推し活がある。
 推せない中では、お金をもらいましょう。

(3)サークル参加に対する一定の「圧」

 これは、主催というかサークル参加視点の話なのですが、同人イベントは「外圧による駆動」があります。
 最もわかりやすいのは「締め切り」です。完全に諦めるまでは、この締め切りという存在が、進捗を生み出す最も重要な要素と言っても過言ではないでしょう。
 そして、私の考えですが、リアル同人イベントの参加権は「それなりの買い物」です。オンリーイベントでは、半机およそ3000~4000円。コミケは9000円程度。ゲームや漫画、フィギュアが買えますし、飲みにだって行けます。サウナなら2回以上整えます
 経済的な外圧は「もったいない」という気持ちを生み、それが新刊の進捗や広報への”本気”を生み出します。「絶対に元を取ってやる」と。

 ……もちろん、それは外圧でケツに火をつける自分の性分という所もありますが、「払いたくないほど高からず、捨てられるほど安からず」として、pictSQUAREの参加価格としての反感を買いにくいラインが1000円になるのではないか、というのが私の価格設定の判断です。
 ここでいきなり2000円とったら「取り過ぎじゃね?」とはなるでしょうし(しっかり運営するなら、決して取り過ぎではないと思いますが、一般的な相場が無料ベースの550円なので……)
 要修正チェックのアダルト方面の参加が3・4倍に増えたら、参加費値上げするかも……(恐怖)

 あと、ヘイトやイヤガラセを目的として参加しようとするサークルは、立場の明示&サークル参加に金銭を要求した段階で「相手を利したくない」と去っていくでしょう。
 飲食店においても言われますが、客のマナーはコストによってフィルタリングされるので、「無償奉仕を当然として、場の運営者にどんな要求をしても良い」と考えるクレーマーや厄介客の事前対処にもつながります。
 それでも納得いただけない場合は「同じお金を払ってくれてる他の参加者のことも考えて下さい」で行きましょう。
 10サークルいれば、4050:450で優先度は自ずと決まるでしょう。主催は450円分としては過ぎた要求に惑わされず、4050円分の働きをするべき立場なのです。

(4)今後の広報施策の資金

 ここまで読んで「収益は私的用途で使うだけかい!」とツッコまれるかもしれないので(人件費ってそういうもんですが)、イベントの経費についても。
 現状検討しているものとして、同人書店リアイベ参加サークルの方にけも好きのチラシを配布してもらうなどで、ジャンル内の認知を上げられないものかと、薄ぼんやりと考えたりしています。
 これに関しては、現状のイベント規模だと印刷費配送料だけでデカめの赤字になるので、「多少の足しにできれば実現の芽もあるかも」程度の認識です。
 収益規模の大きいイベントなら、フライヤーのイラストを有名同人絵師の方に依頼して、良い感じのチラシを作ったり、ヘッダーに使ったりとかもあるかもしれません。アバターを外注して拡充するのもいいでしょう。ですが、その場合は絵師への報酬には数万出さなきゃ失礼でしょう。
 営利企業のリアルイベント参加費は、机・椅子・スタッフの人件費に目が行きがちではありますが、この辺も含めた金額になるのかと思うと、同等の動員規模にしたいと思うなら、お金も入用になると思います。
 何より、サークル参加者はみんな「一般参加者がたくさん来るイベント」にこそ、価値を見出すのですから……。

一般参加者無料の理由

 とまあ、前項から続く話なのですが、同人イベントにおいて一般参加者は「沢山来て頂かなくてはならない」存在であり、そのハードルを下げることは主催サークル参加者共通の願いです。
 サークル参加者は「一般参加者がたくさん来るイベント」金を払ってでも参加する、または場を円滑に回すために必要な運転資金を支払うものです。
 そして、主催は「サークル参加者に参加してもらわないとイベント自体が成立しない」ので、サークルにとってより魅力的な場になるように、一般参加者を呼びこむことに腐心します。
 そのため、お互いの利益を考えると「一般参加者から入場料でお金を集める」ことは、現時点では利が無いという判断です。
 入場料を取れば、短期的に「主催の懐」は潤うかもしれませんが、それで一般参加が減るサークル参加のうま味がなくなり、イベントに閑古鳥が鳴くという、こち亀の両さん失敗オチみたいになることでしょう。

 ……もちろん、先のサークル参加の話と同様、金銭で協力的姿勢を持つ来客者のフィルタリングする効果はあるのでしょうが、これに関しては「迷惑な一般参加者をブロックする」でも対応可能ですし(電話番号と紐づいてるので半永久的なブロックになります)、下手に有料化することで返金回りでゴネられて炎上に繋がるよりは、無料で間口を広げて個別対応する方が賢明かなと思います。

 「一般参加無料の方針は今後も絶対変わらない」とは断言しかねますが、少なくとも現時点では、無料にした方がイベント全体にメリットがあるだろうと考えています。

三方ヨシ!!

 あと、これは私の二次創作者としての思想であり理想論ですが、同人活動は得てして「公式の利益になるから」黙認されたり奨励されるものであり、その大きな意義は「広報」にあると思っています。
 故に、同人活動とは「公式コンテンツへの参加の導線」の意義があるものであり、すなわち「最初からコンテンツに興味を持っている人以外でも気軽に参加できる」場であることが、同人誌即売会の一つの前提条件ではないかと思っています。
 同人誌即売会は、マーケットであると同時に、サークル参加者が鎬を削る推し布教大会です。冷やかしで入ったまっさらな一般参加者を、立派なオオウミガラサー”教育”してオオウミガラス公式グッズ化の機運を高めていくのが、私の同人活動の本懐であり、推し活です(最近は箱推しに傾倒していますが…)

 こうした考え方からも、私の主催イベントでは一般参加者からの参加費の徴収は、現時点では考えていない状況です。
 一介のファン創作者としては、まっさらな人にこそ、けもフレの楽しさを知って欲しいですし、良識的な振舞いをできる方なら、気軽に入れる、敷居の低いイベントにしたいです。

 ……何より、一般参加者は参加費なんかより本を買う方にお金いっぱい使いたいでしょうし。そして、サークル参加者の方には、いっぱい参加者が入るイベントで本を売って、いっぱい黒字を出してもらい、いっぱい主催に参加費を払ってもらえるような…、ひいては、いっぱいジャンル入りするファンも増えて公式も大満足みたいな、そんな感じの三方win-winなイベントを目指したいです。
 品性と実利は、同人活動の両輪です。止まることなく前に進んでいきましょう。

天下の回り物である

 「金」で、天下を回しましょう。


おまけ(09/29追記)

 「サークル参加が基本有料化して、新規参入の難易度が上がった今、イベント主催はどういった方針でイベントを拡大すればいいか」を考える上で、ひとつのヒントになるかもと思い、けも好きがイベント拡大のために行った諸々の施策を、一事例としてまとめました。よろしければご一読を。

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