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いらっしゃいませ、スナックカプセル(退去まであと2日)100日後に退去する中銀カプセルタワーマンシオン

不思議としか思えないのですが、カプセル住民とは、カプセルとまったく違う場所で、すでに接点があることが少なくありません。

10年以上前の勤務地でお世話になった方を通して付き合いが生まれた映画プロデューサーさんが、実はA棟の住民だったり。
何度かお仕事をお願いしたことがあるライターさんとエレベーターで鉢合わせたり。
そのどれもが、建築というある意味〝ベタな〟接点ではないのが、カプセルらしいのです。

だから、ゆるやかな交流が続いているし、保存活動も肩肘張らず、場合によっては〝取り壊し派〟の心情をおもんぱかるようなことさえ起きるのでしょう。

建物という、文字どおり不動産を接点に生まれた縁ですが、願わくば、不動産が動産となり、記憶になった時も、ゆるやかにつながりを保ち続けていたいと思ってしまいます。

最近、カプセル住民で盛り上がったのは「スナックカプセル構想」です。
住民や関係者が集うカプセルを模したスナックを新橋あたりに作ってしまおうというものです。
この多士済々のカプセル住民なら、日替わりで店長が変わるたび、まったく別の雰囲気が生まれるでしょう。
でも、あくまで「スナックカプセル」という共通点はどこかに保っている。
それはまさに現在の築約半世紀を、様々なリフォーム術と、オーナーチェンジを繰り返しながら生きながらえてきたカプセルそのもののような場所です。
そんなことを話しながら、自分だったらどんな店長ができるのか、ちょっと真剣に考えてしまう時間がありました。

これをメタボリズムと呼ぶのか、いよいよわからなくなってくるのですが、丹下健三氏のメタボリズムと、弟子でありライバルであった黒川紀章氏のメタボリズムもずいぶんと違うものではあるので、「スナックカプセル」だって文句は言われないはずです。
構造物の寿命を超えて、その構造物が形にしてきたことが別の場所で花開くというのは、ある意味、最強のメタボリズムではないでしょうか。

※写真は、下から見上げたカプセル。どれか一つくらいスナックになってもおかしくない多様性が育まれている

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