【応募シナリオ】「あなたのさよなら、代行します」

応募シナリオのあらすじです。

以下のテーマを基に執筆しました。よろしくお願いいたします。



【タイトル】
『あなたのさよなら、代行します』


【登場人物】
渡会トオル……さよなら代行を営む男
門田カナ……カフェ・モンタナのオーナーの娘
相沢ミユキ……渡会の依頼者
相沢コハル……ミユキの一人娘
権藤……渡会にさよならを告げられる男


【本編】
*あらすじのみの応募です。長文ですが、よろしくお願いいたします。

○ファミレス
ファミレスで誰かを待つイカツイ男、権藤。彼の元に現れたのは、スーツを着こなす優男、渡会トオル。
渡会は“さよならメッセンジャー”と書かれた名刺を権藤に渡し、丁寧に自分のビジネスを説明し、権藤の恋人からの別れの言葉を代行で伝えに来たと言う。怒る権藤に対して粛々と進める渡会。
渡会「オプションで感情表現ありになっております。では伝えますね」
渡会、恋人からの手紙を一人芝居のように伝える。
渡会「以上です。では、さよならの受け取りのサインまたはハンコをお願いします」
権藤は怒って渡会に詰め寄る。渡会は、追加オプションで元恋人はもう一切連絡が取れないように手配してあり、引っ越しもすでに済ませてあることを権藤に伝える。権藤はサインを断る。
渡会「うーん、これは使いたくなかったんですけども……」
渡会はタブレットで、権藤が元恋人とドラッグを楽しむ現場写真を見せる。渋々サインする権藤。
渡会「お受け取り、ありがとうございました。もしあなたも誰かにさよならを伝えたいときには、こちらのQRコードまでどうぞ!」


タイトル「さよならメッセンジャー」


○総合病院の病棟
ベッドに横たわる相沢ミユキ、渡会にさよなら代行を依頼している。
診察を受けたときには末期ガンであり、余命わずのミユキ。元々シングルマザーであり、娘のコハルを育てていた。コハルが12才のとき、自分のネグレクトによりコハルを養育施設に預けることとなり、それ以来顔を合わせていないと言う。ミユキの依頼、コハルに謝罪とさよならを伝えたいというものだった。
渡会はふたつ返事で引き受ける。渡会は、ミユキの右腕にある大きな火傷の痕を目にする。

○アパート
コハルは現在20才。友人と同居しているアパートを訪ねるが、不在。数日通い詰めるが、誰かが住んでいる気配はない。

○カフェ・モンタナ
スタッフの門田カナが渡会にコーヒーを差し出す。
カナ「見つからないの?」
渡会「バイト先も当たったんだけど、3ヶ月前に突然来なくなったんだって」
カナ「人探しまでやらなきゃいけないのかー」
渡会「人探しオプションももらってるから」
ものすごく苦い顔でコーヒーを飲む渡会。
カナ「……その顔なんとかならない?」
渡会「ならないんだよう。苦いけど美味しいよう」
カナ「あっそ……ありがと」
店内のテレビではニュースが流れている。
ニュース「……鈴木コハル被告の初公判は5月20日に開廷の予定です」
渡会、テレビを見る。

 ×     ×      ×

渡会がスマホでニュースを漁ると、コハルは飲料水の配送トラックを運転する仕事の最中、居眠り運転し、児童が乗降中のスクールバスに突っ込んでしまい、6人の死傷者を出していた。

○拘置所
面会室に渡会が待っている。現れたのは、勾留中の相沢コハル。
コハル「誰? 何の用?」
渡会「私はこういうものでして」
名刺を差し出す渡会。
コハル「意味わかんない。何?」
渡会がミユキの名前を出した途端、コハルは立ち上がってその場を去っていく。
渡会は引き止めようとするが、取りつく島もない。
渡会はミユキの首筋から肩に、大きな火傷の痕があることに気づく。

○総合病院の病棟
渡会はこれまでの経緯を報告する。コハルの現状を知ったミユキは動揺し、自分の不甲斐なさを嘆く。
ミユキは貧しさから脱するために働きすぎたそいで、大事な時期にコハルと放置しすぎたことを悔やんでおり、決定的な亀裂になったのがこの火傷だと語る。
自分が疲れて帰宅し、レトルトカレーを茹でたままキッチンで居眠りしてしまった。疲れた母親のためにカレーを取ろうとした幼いコハルが鍋をひっくり返してしまい、ミユキは咄嗟に手を出したが間に合わず、コハルに熱湯がかかってしまったのだった。
ミユキ「少しでも楽をさせたくてがんばったのに、どうしてあんなことになってしまったのか、いまだにわからないんです」
ミユキは、次に会うときはコハルに渡してほしいものがあると、渡会に小さな紙袋を手渡す。

○拘置所
渡会はコハルと面会している。
渡会「会ってくれてありがとう」
コハル「……」
渡会は紙袋を渡す。中には、古びた小さいパンダのぬいぐるみが入っていた。
コハルはじっとぬいぐるみを見つめる。
渡会「コハルさんが5才の時におねだりしたパンダちゃん、ミユキさんは今でも大切に持っていたそうです」
コハルは渡会の話を聞くと言う。
渡会はミユキからの手紙を読み上げる。
コハルは泣き崩れ、いままでミユキを避けて生きてきたことを悔やむ。
コハル「がんばって働いて、きちんとしたら、いつか会いに行けると思ってた。がんばって、がんばって……そしたら、こんなことになっちゃって……私、どうしたらよかったんだろう」
渡会は何も言えない。
コハルは、渡会に新たな依頼を出す。お金のないコハルは、一番安い料金で渡会に依頼する。

○総合病院の病棟
ミユキはかなり弱っている。渡会が現れ、無事にさよならを伝えたことを報告するとともに、コハルからの代行を届けに来たと伝える。
渡会「本当は、さよならしか受け付けないんですが、今回は特別オプションということで。コハルさんからです、『おかあさん、育ててくれてありがとう』」
ミユキ、息も絶え絶えに、うっすら笑顔を見せる。

○カフェ・モンタナ
渡会がカナと話している。
カナ「そっかあ……」
渡会「何か言ってあげたかったけど、何も言えなかったなあ」
カナ「いいんじゃない? 何か言うほうが嘘くさいし。はい、コーヒー」
渡会、コーヒーを飲んで渋い顔。
渡会「苦い……」

(終)



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